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俺と緋乃さんの魔法部隊  作者: 空乃そら
第2章 イレギュラー
20/49

20.


 「速度のこととは別に少し疑問に思っていたことがありました。それは、なぜあなたは攻撃した後に追撃をしなかったのか、ということです。最初は反撃を警戒していると思いました。しかし、私が息を整えている間も一向いっこうに何もしてこなかった。おかしいと思いませんか?」



 「おかしくなんてないだろ。ナイフを持っている相手を警戒するのは当然じゃないか」



 「でもあなたには魔法があります。わざわざ接近する必要はありません」



 「それは……」



 ここでついに少年は沈黙した。顔からも不敵な笑みは消え去り、どことなく焦りににじんでいるような気さえする。



 「そういえば私を魔法で攻撃したときも変でした。あなたは走って向かってきたのになぜか魔法で攻撃しました。近くに来て、危険を冒す必要はないはずなのに、です」



 「あれは油断させるためだ! 近付いたら魔法を使われるなんて思わないだろ⁉」



 「なるほどです。じゃあ最後に聞きたいのですが、なぜあなたは今も攻撃しないのですか? 私は明らかに大怪我を負っていますし、その気になれば簡単に決着をつけられると思うのですが……」



 「…………」



 再び沈黙。私はそれを見て、自分の予測がきっと間違えていないであろうことを確信した。そして続ける。



 「ここからは私の予測なのですが。あなたの魔法は一度発動すると、次の発動までにインターバルを必要とするのではないですか? 一番最初の魔法発動から次の発動まではそこまで時間差はないですから、何とも言えませんが……。しかし今もこうして攻撃されていないところを見ると、インターバルが短いとは思えません」



 「面白い考え方だけど、自分でも一番最初と次の時間差はそこまでないって言ってるじゃないか!」


 「はい、確かに矛盾してます。しかし、最初と次の魔法を発動したときで決定的に違うものがあるんです」



 「なんだよ、それは? 勿体もったいつけないで、さっさと言え!」



 どうやらつい説明口調になりすぎていたようだ。この会話は少年の心を揺さぶる目的もあるので少しわざとらしく説明していたが、それで相手が痺れを切らしても仕方ないので結論を伝えることにした。



 「つまり距離です。先ほどあなたの魔法は規模を決めることが出来るといいましたが、それは少し間違いで、正確には大規模か小規模かの二つしか選択することが出来ないんです。そしてその二つにそれぞれ別にインターバルがある……」



 「それと距離に何の関係が……」



 「その二つの規模に距離が関係してくるんです。小規模の場合は上昇させたい場所の近くに、大規模の場合は遠くに行かなければならない……違いますか?」




 正直なところ、この予測は本当に予測に過ぎなかった。何より情報が少なかったから核心が持てなかったし、本当かどうかわからないことを信じて戦うことは躊躇ためらわれた。しかしこの予測ならば、今まで私が疑問に思っていたことの辻褄つじつまを全て埋めてくれる。そのため、あえて私は少年に自分の考えを説明したのだ。これは戦っているときに思ったのだが、どうにも夢のなかとはいえ、少年には年相応の幼さがあるように感じた。だからこそ私の話を聞いてくれると思ったし、もしかしたら素直な反応が返ってくると考えた。多少賭けだったところはあるが、もし私の予測通りなら黙っていてもそのうちインターバルが終わってしまうかもしれないし、インターバルが存在しないなら傷を負った時点で既に勝負はついている。そして少年の反応は私が思っていた以上のものだった。




 「その予測は間違いだ! インターバルなんてあるわけないだろ!」



 先ほどのような小生意気な笑みはもはやない。必死に否定するその姿はもはや肯定しているようなもので、見ていて少し可哀想でさえあった。



 しばらく魔法が使えない。それは私にとって最大のチャンスを意味している。逆に言えば少年が魔法を使えるようになるまえにこの状況を何とかしなければ、私の勝機は完全になくなると言っても過言ではないだろう。そしてそのためには。



 少年を殺す。



 それが最適の方法だろう。直接攻撃しないでずっと魔法で戦闘してきたことを考えると、少年自身の能力はたいしたことないはずだ。たぶん年相応の力しかないのだろう。そして、それならば武器を持っているうえにMCPで訓練してきた私が負けることはありえない。わき腹の傷もあり、どちらにせよ長引かせるのは不利だ。



 そう結論が出た瞬間、私は全力で地を蹴った。一瞬わき腹に鋭い痛みが走ったが、ぐっとこらえる。少年と私の距離は目算で3メートル。思い切り走ればあっという間に接近できるだろう。



 ――時には甘えを捨てることが必要になる。そういうときは無心になるんだ。何も考えるな。そしてやるべきことをやれ。



 MCPで先輩に教えられた言葉が脳裏によみがえる。自分のちょっとした罪悪感を乗り越えられず、組織を窮地きゅうちに追い込んでしまったメンバーを私は何人も見てきた。やらなければやられるのは、こちらなのだ。



 「くそっ!」



 やはり魔法は使えないようで、接近してきた私に少年は思いっきり拳を突き出してきた。

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