17.
確かに私はこのあとMCPに入隊し、他の同年代の子ども達と同じような生活はできなくなった。簡単に遊びに行くこともできなくなった私にとってこの遊園地は思い出深い場所だ。
しかし、それにしても。そういった場所を夢で見せるのはやはり趣味が悪いとしかいえない。
『じゃあ緋乃にも喜んでもらえたところで、さっそく始めましょうか。鬼はこの遊園地のどこかにいますから頑張ってくださいねー』
少女の声はそう言うと、何も喋らなくなった。気配も完全に消え、それを確認すると私はあたりを見渡し始めた。こういうときに一番大事なことは情報を少しでも多く手に入れることだ。どこに逃げ込んでしまうと行き止まりになるだとか、逃げやすい場所はどこかなど知っていればそれだけで有利になることは多い。そして逆に何も知らなければ、それだけ不利になる可能性があるのだ。私はMCPに入隊してから情報がどれだけ大切かを知った。だから、まず知るべきことはこの遊園地の地形だ。
「ここに来たときのことをちゃんと覚えていればよかったですね」
しかしそれは仕方のないことだ。なにせ遊園地に来たのは小さいころの話。少しはどこに何のアトラクションがあるのか覚えているが、全て把握するのはいくらなんでも無理だ。もしくは魔法が使えれば少しは違ったのかも知れないが、あいにく夢のなかでは魔法を発動することが出来ないのは実証済みだ。そして声もなくなり、周辺も見えるようになったのでひとり言を再開。何も知らない人から見たらただの変人だが、私はひとり言をしながら考えごとをすると昔からよく考えがまとまるので良しとする。
「ジェットコースター……。確か、あれは広場にあったはずです」
辺りを見渡しているうちにジェットコースターが南西のほうに見えた。確か記憶が正しければ広場があの辺りにあるはずだ。隠れたりする場所がなく見晴らしがいいところだが、広くて鬼に見つかっても逃げ場がたくさんあるので何とかなるだろう。どちらにしてもずっとここにいるわけにも行かないので、自分の記憶を信じてみるのもいいかもしれない。
「問題は相手の情報がわからないことですか」
そう――、それが大きな問題のひとつだった。鬼の足は速いのか、遅いのか。鬼は一体何人いるのか。何もわからない。ここにはどうやら私と鬼しかいないようなので私以外は鬼という解釈で問題ないのだろうが、逆に考えるとそれしか情報がない。
「広場に行って、鬼の足が速かったら詰みですね……」
基本的に夢のなかで私は現実世界と同じ身体能力しかない。足は速いほうだが、それでも鬼が車や電車と同じくらいの速さだったら手も足も出ない。もし私の魔法がそういった乗り物を必要としない力――自分を加速させたり、ワープできる能力――だったら良かったと一瞬考えたが、夢では魔法が使えないことを思い出し考え直した。




