14.
まあ、そうなるよなあ。さすがに理由がわからないのに食べ物に釣られて了承するような真似はしないか。
「ちょっとトラブルに巻き込まれてさ、未来に行かなきゃならないんだ。……ん?」
俺がそう言うと、隣で座っていた緋乃さんが俺の服を引っ張ってきた。電話してるから遠慮してるんだろうが、「トラブルってなんですか!」とか言いたそうな顔をしている。ていうか、本当に言いそうだなあ……。
仕方なく俺は携帯を首と肩の間に挟み、両手を合わせて謝罪の意を表しておく。相変わらずふくれっ面だが一応は納得してくれたのか、服から手を放してくれた。
『トラブル?』
そして再びつくもの声が電話越しに聞こえる。
「詳しくは説明できないんだけど。何とかしなきゃいけないんだ」
『いきなりそんなこと言われても困ります』
まあ普通そうだよあ……。勝手なこと言ってるのは百も承知だし。でも緋乃さんのために、なんとか未来のことを話さずに協力してもらわなければなるまい。
『それに私的な目的でタイムリープを使うのは犯罪です』
「それはわかってるんだけど……。実は友達の命が危ないかもしれないんだ」
しかしこのままでは埒が明かないので、緋乃さんのことを出来るだけ隠しながら今の状況を簡単に伝える。俺の友達――緋乃さんが呪いのせいで死んでしまうかもしれない。それがわかれば、いくらつくもだって協力してくれるはずだ。問題はつくもが信じてくれるかどうかだが……。
『そんなこと急に言われても信じられませんよ。お兄様に友達いないはずですし』
やっぱりそう簡単にはいかないか。というか、ちょっと待て。なんでみんな友達いないって言うんだよ……。一応学校に話せるやつ二桁はいるんだぞ。主に先生とか。
『すみませんが、話聞く限りじゃお兄様が私に犯罪の片棒を担がせようとしてるようにしか聞こえません』
「そうか……」
さてどうしたものか。いっそのこと緋乃さんに確認を取ってつくもにも事情を話してしまうのもひとつの手だろう。しかし沙紀のときのように言い訳できない状況ならともかく、自ら緋乃さんを危険に晒していいものだろうか。それにいくら人助けとはいえ、確かにつくもに犯罪の片棒を担がせようとしているのだ。緋乃さんを助けることで頭がいっぱいで、言われるまでそこまで考えてなかったが、俺は幼馴染と妹を犯罪者にしようとしている。それも緋乃さんを助けるという俺の自己満足のために。
『話はそれだけですか? 私も暇じゃないですし、もう用がないなら切らせてもらいます。あともうこんな用事でかけてこないで下さい。では』
俺が何と言うべきか悩んでいると、つくもは早口にそう言うとそのまま電話を切ってしまった。
「その様子だとつくもちゃん、やっぱりダメだったみたいだね」
「ああ。もうかけてこないで、だってさ」
「あははー、やっぱりかあ」
「仕方ないですね。シローさん、沙紀さん、わざわざありがとうございまし た」
俺は屈託なく笑う沙紀と律儀に頭を下げる緋乃さんを見ながら、出来る限りひとりで緋乃さんのことを何とかして解決しようと心に決めたのだった。




