十五歳の俺と訪問者 後編
家に着いた俺達は庭先でティータイムと洒落こむ。
何故庭先でかと言うと、家に連れて来たディーセルを庭に放り投げ放置している為起きるまで待つついでだ!
師匠とティスカは紅茶を俺はコーヒーを飲みながら待つこと二十分、ようやくディーセルが起きる。
「うっ、此処は? 私はいったい?」
「ようやく起きたかいディーセル。」
「はっ、貴女様は龍王様。お探し致しておりました。」
「さっきの傲慢な態度はどうしたんだ。」
「貴様は先程の人族! 何故龍王様と一緒にいる!?」
「さあな、お前の知ったことじゃねーよ。」
「なんだと貴様、今すぐ龍王様から離れろ! 貴様の様な下賎な人族が近づいていいお方ではないぞ!」
「はいはい、一人でやってろ! 下賎な人族にやられた龍人族様~。」
「なんだと貴様ー!」
「ディーセル負けた側が偉そうにしてんじゃないよ。あんたは私の弟子に負けたんだ! これ以上吠えるんじゃないよみっともない!」
「りゅ、龍王様。わ、私はまだ負けておりません。それにこの人族が弟子ですと。」
「生殺与奪の権利を相手に与えたんだあんたの負けさね。それとも、今の龍人族は闘いの流儀もわからないのかい。」
「ぐっ、しかし!」
「なんなら今からもう一度殺るか?今度は止めまできっちりとさしてやるぜ!」
「どうするだい、もう一度私の弟子と殺りあうのかい? まあ、殺りあえば間違いなくディーセルあんたが負けるよ! 少なくとも、私に手傷を負わせるくらい力をつけてないとね。私の弟子を甘く見るんじゃないよ!」
「くっ、わかりました。龍王様の弟子と言うならばそこの人族の事は見逃しましょう。」
「はぁ、ホントプライドばっかで中身のねー奴だな。もういいよお前みたいなガキを相手するのもばからしいし。さっさと用件済ませて帰れ。」
「そうだったね、ディーセルあんた何しにきたんだい?」
「はっ!龍王様、先代龍王リディウム様が危篤です。一度ご尊顔をお見せにお戻りください。」
「・・・帰りな。私は国に戻る気はないよ。」
「なっ何故ですか。考え直しください。リディウム様は貴女の育ての親ではないですか。」
「お断りだね。私が国に戻ればまた祭り上げられるだけさね。それじゃあ以前と同じで他国を侵略しようとする。」
「何故ですか、龍王様! それだけの力が有りながら他国を何故制圧しないのです。大陸統一は建国からの悲願ではないですか!」
「統一してどうなるってんだい! 力でねじ伏せた者は力にやぶれる! 個の力ではなく、集団としての力に必ずまける。それじゃあ平和どころか終わらない血濡れの侵略戦争さね。だから、私は帰らない。帰れない。」
「リレーユ様!」
「帰りな。もう話すことはないよ。」
そう言うと、師匠は不機嫌ですといわんばかりにディーセルへと圧力を伴った重い沈黙をぶつける。
「師匠、あんた国に帰ってやりな!」
「なんだって、もう一度言ってみな。」
「だから、育ての親に顔を見せてきてやりなって言ってんの。」
「私が国に帰れば、どうなるかさっき話したはずだよ。」
「ああ、聞いたよ。だけどな死んじまった相手にはもう何も伝えてやることは出来ねーんだぜ! 今までの感謝も恨み事も何一つ相手に伝えてやる事は出来ねー! それが育ての親なら尚更会わねーと後悔するぜ。しかも会わねー理由が回りが煩わしいからなんて理由じゃあ必ず後悔する!」
「・・・・」
「第一、普段の師匠ならそんな煩わしい連中なんか力でねじ伏せるだろ。それなのに帰らないって言うのは只育ての親の死に目を見るのが怖いだけだろ!」
「あんた死ぬ覚悟は出来てるだろうね。」
師匠が憤怒の表情で龍気を開放する。
「お、お師匠様落ち着いてください。」
「リ、リレーユ様!」
「師匠さあ、今のあんたはダセーよ! いつもの傲岸不遜なあんたは何処にいったんだよ!」
「お前に何がわかるっていうのかい。」
「わかるさ同じだからな。師匠の育ての親がリディウムって奴なら、俺の育ての親はリレーユあんだよ! だからわかる。」
「・・・・」
「リレーユがもし死にそうになっていたなら、俺は何を置いても真っ先にリレーユの元に向かう! 自分の泣き顔一つで、リレーユの死に目に会えるならば何度でも泣き顔なんか見せてやるさ! だからリレーユあんたは帰るべきだ! 育ての親の元に!」
「・・・・あんた達はどうするんだい。」
「どうとでもなるさ、それは鍛えたリレーユが一番わかってるだろ! まあ、いずれ龍王国に行くつもりだから待っていてくれよ! それに、話そうと思えば何時でも念話で話せるしな。」
しばらくの間、師匠と目線を合わせ続けていると師匠が目を閉じ言葉を発する。
「・・・・はぁ~、今回は私の負けさね。ディーセル帰ってやるさね!」
「リレーユ様!」
「しかし、初めて母親扱いしてくれたね。ふふふ、」
「うっ、うるせーよ!」
「じゃあ私は少し準備をするとしようかね。」
そう言うと師匠は自分の部屋へと入っていった。
俺はというと、自分の顔が赤くなって行くのを感じながらしばし立ち尽くす。そんな俺にティスカが「私も同じ気持ちです!」といい俺に寄り添ってくる。
しばらくすると、師匠が荷物を持って出てきた。
「じゃあ行くとするかね。あんた達家は好きにしな! 次に会うときはもっと強くなっておきなよ! それじゃあね!」
「ああ、またな!」
「お師匠様お気をつけて、龍王国でまた会いましょう!」
こうして師匠は業魔の森から龍王国へと向かい俺達は師匠と一旦別れた。