十六歳の俺と生存者
オーガキングを倒した俺は一旦ティスカと合流した。
「お疲れティスカ。物量で押しきったのは良い判断だったぜ。」
「お疲れ様ですキョーヤさん。ありがとうございます。ですが、やはりパワー系の技は苦手ですね。」
「まぁ、ティスカは速さを活かした戦いの方が向いてるからな。苦手分野でもそれが有効かどうか直ぐに判断して戦術に組み込めているから今はそれで十分さ、とりあえず反省は後にしてオーガ達の売れる素材を回収しておこう。」
「はい、キョーヤさん。」
オーガの集落を殲滅した俺達は、倒したオーガ達の素材をアイテムボックスに収納した後、集落の中に攫われた人がいないか確認しておくことにした。
「ティスカ、とりあえず二人で手分けして生存者がいないか確認しておこう。」
「わかりました、キョーヤさん。」
しばらく集落の建物の中を探してみたが、攫われた人は見当たらず残すはオーガキングとオーガクイーンがいた建物だけとなった。
「後は、ここだけだな。」
「無事な生存者がいればいいのですけど。」
建物の中に入ると直ぐに血の匂いを感じ、更に奥へと進むと地下に降りる階段が現れた。地下から生物の気配を感じたので一応武器を構え地下へと降りる。
地下へ降りると辺には光が届いておらず真っ暗で真っ直ぐにのびる通路だけがあった。
その暗い通路を進むとそこには開けた空間があった。その空間と通路の間には鉄格子があり、まるで地下の空間がまるまる牢屋の様である。
「これは監禁部屋だな。」
「はい、奥に気配を感じます。」
俺とティスカが鉄格子の前で会話をしていると監禁部屋の中から声がする。
「だ、誰かいるの!?」
「こ、声が聞こえたわ!」
「た、助けが来たのか?」
中からは複数の声が聞こえてくる。
「中に誰かいるのか? 居るなら鉄格子から離れろ! 今から30秒後に破壊する。」
俺が声を掛けると中からは慌てた様な物音が聞こえ、気配が鉄格子から遠ざかるのを感じた。
「キョーヤさん、30秒経ちました。」
「わかった。おい! 今から破壊するぞ!」
再度一言声を掛け鉄格子へと黒鬼と夜叉を振るう。
「はっ、『双刀術/瞬閃四方連斬』」
カラン、カン、カラン!
一瞬の内に細切れになる鉄格子、斬られた鉄格子が地面へと落下し金属音が地下に鳴り響く。
「辺りを照らしておいた方がいいな『精霊魔法・光/微光球流星』」
暗い地下を、星空の様に光る精霊魔法が辺りを仄かに照らす。なぜ微光球流星にして星空の様にしたかと言うと、いきなり強い光を長時間暗闇に居た者達に見せると失明の恐れがあった為と、とりあえず光に慣れてもらう必要があったからである。
「鉄格子はもう無いからいつでも出れるぞ。」
「ケガをしている方が居れば言ってください。」
鉄格子の中に捕まっていた人達へと声を掛けると、ゆっくりとした足取りで此方へと向かってくる。
近づいて来た人達を見ると全てが女性で人数は6人、種族は人族、獣人族、妖精族などバラバラであった。
着ている衣服はどれもボロボロで半裸の状態だった。
「ティスカ、この人達に身体を隠すものをあげてくれ。」
「わかりましたキョーヤさん。」
するとティスカは、自分の服をアイテムボックスから出し、サイズが合う人には自分の服を渡して合わない人には身体を隠せる布を手渡していく。早速女性達は自分の身体を隠す。
当然俺は、背中を向けて視線を外す。
ティスカから手渡された服に着替えた女性達と布を羽織った女性達は、今だ暗い表情をしたままだ。
「あ、あのオーガ達はどうしたのですか?」
捕まっていた獣人族の女性の一人が尋ねてくる。
「集落にいたオーガ達は全部殲滅した。」
「ぜ、全部ですか!?」
「ああ、オーガキングを含め全部で大体1000体程を殲滅した。」
「キョーヤさんの言う通り、外のオーガ達は倒しましたので大丈夫ですよ。」
「では、私達は自由になれるのですね。」
「もちろんだ。ただし、此処は街道から外れた林の中だから危険がある為、近くの街に着いてから開放になるがな。」
「ありがとうございます。」
「やった、帰れる。」
「家族に会えるのね。」
危険が無くなった事を確認し、ようやく安堵の表情を見せる女性達。
「ティスカ、とりあえず捕まっていた人達の経緯を聞いといてくれ。それと帰る場所があるのかも頼む。俺は、一旦外に出てテーニとルースそれと見学させている3人に状況を説明してくる。」
「わかりましたキョーヤさん。任せてください。」
「頼んだぞ。」
ティスカと別れた俺は、地上へと戻り建物の外に出る。すると外には既にテーニとルース、それにラディス、ケティス、ドイルが集落の中に入って来ていた。