十六歳の俺と集落発見
「グガァアアアア!」
オーガエンペラーが雄叫びを上げると、四体のオーガがこちらへと向かってくる。
「ティスカ・アベル参ります。精霊魔法・土/アースジャベリン!」
地面から飛び出した土槍に貫かれる四体のオーガ。間髪入れずに、オーガエンペラーへと精霊魔法を放つティスカ。
「風の精霊よ、我が呼び声に応えよ。全てをのみ込む暴風、切り裂くは大気の刃贖うことを許さず、眼前の敵をその風刃をもって斬れ」
『ストリーム・エッジ』」
ティスカの詠唱が終わると、オーガエンペラーを中心に激しい竜巻が発生し辺り一帯に風が吹き荒れる。
「ガァアアアア!」
オーガエンペラーの雄叫びが絶え間なく聞え、しばらく雄叫びを上げ続けた後最後に一声吠え、やがて竜巻が消失するとそこには体全体を斬り刻まれたオーガエンペラーが絶命していた。
「すっ、スゲー。」
「オーガエンペラーをあんな簡単に倒すなんて信じられません。」
「凄まじい魔法だな。」
ティスカの攻撃に唖然とする三人。
「まぁ、あんなものだな。というかやはりティスカも加減が必要だな。辺り一帯の木々がなぎ倒されてやがる。」
「キョーヤさん、終わりました。でも朝キョーヤさんが言っていた手加減をし損ねました。」
「まあ、徐々に慣れるしかないさ。それより倒したオーガ達の回収をしねーとな。」
「そうですね、回収してきます。あっ、ルースが戻ってきましたよ。」
「うわっ、デッカイ魔物が!」
「きゃっ、犬型の魔物ですね。」
「先程の従魔とこの従魔どちらも高ランクの魔物だな!」
突然現われたルースに驚き武器を構えるラディスとケティス。
ドイルは感心した様にルースをみている。
「主殿お待たせしました。集落を発見しましたがかなりの大きさになっておりました。」
「おう、おつかれ様。で、どのくらいの規模なんだ?」
「はっ、見える範囲でおおよそオーガ800体、オーガジェネラル100体、オーガエンペラー20体、オーガクイーン、オーガキングそれぞれ1体です。」
「なっ、嘘だろ。」
「そ、そんな」
「これは急いで領主にお伝えして討伐隊を組まなければ、それに、冒険者ギルドにも領主名で緊急クエストを発令しなければマズイな。」
ルースからの報告を聞くと、ラディスとケティスは顔を青褪めさせドイルはこの事態の対応作を考えはじめた。
「へぇー、結構な規模だな。よーし、いっちょやるかな、丁度いい訓練にもなるな。という訳でティスカやるぞ。」
「はい、今度は手加減はいらないですか?」
「ああ、遠慮無く全開でやりな。」
「はい!」
ルースにオーガの場所を聞き向かおうとするとドイルから呼び止められる。
「もしかして、二人で今から向かう気なのか? いくら何でもそれは無茶だ! これだけの規模の魔物が相手の際は、個人で対応するのではなく国が対応をする事態だぞ!」
「そうだぜ、これは俺達だけで対処するのは無理だ! 街に戻って対応した方がいいって!」
「今向かっても皆死んでしまいます。」
どうやら俺達の力をかなり下に見ているみたいだな。
まあ、今さっき会ったばかりの俺達の力を把握するのは流石に無理だよな。
「大丈夫だって、お前らは俺達の力を知らないからそう思うかも知れねーけど、この程度なら、俺とティスカの二人で十分対処可能だ。なぁティスカ。」
「はい、問題ありません。」
「まあ、お前らは逃げていいぞ! 一応俺達は、ディナントのキルドマスターからの指名依頼受けてるから、先行して戦っても問題にはならないから、後の事は気にせずに戻ってかまわないぞ!」
「指名依頼だと!?」
「ああ、オーガの集落調査と場合によっては殲滅が依頼だ。
そういう訳だから俺達は行くからな気を付けて帰れよ。」
「気を付けて帰ってくださいね。それでは失礼します。」
この場を後にし、ルースに案内を頼もうとすると、今度はラディスが待ったをかける。
「ちょっと待ってくれよ! 俺も付いていくよ。」
「お、お兄ちゃん! 帰ろうよ。」
「ラディス様、おやめください。」
慌ててラディスを止めるケティスとドイル。
「何でだよ! 今回は俺が考え無しに無茶する訳じゃないんだからいいだろ。それに、あの人は二人で殲滅できるって言ったんだから大丈夫だろ。」
「で、でも怖いよ。」
「ラディス様、万が一と言う事もあります。」
「なぁ、兄ちゃん達なら俺達が着いて行っても大丈夫だよなぁ。」
「まあな。着いてくるのは構わないけど離れた所で大人しく見ておけよ!」
「わかった!」
「うぅ、もうお兄ちゃん。」
「仕方ないか、ラディス様! 絶対に大人しくしていて下さいよ。」
「じゃあ、ルース案内たのむ!」
「こちらです主殿。」
結局三人を連れて、オーガの集落へと向かうことにした俺達はルースの案内のもと森の中へと進む。




