第4話 改
チル兄様、お待たせしました!
「前に子猫をもらえる話になったんだが・・・・殺してしまわないか心配で」
「ヒーくん、そんなことならないように私がいるよ?」
不安そうなヒデくんの隣に並ぶみなもちゃん。
背伸びして頭を撫でようとしているのが見える。
「そういえばいろんな掛け持ちバイトしてたな。それで世話ができなくなると思ったわけか」
「なんども私がいるって言ってるんですけど」
納得するフジくん、みなもちゃんはどこか不満げにつぶやいている。
「そこまで迷惑かけれないからいい」
「そんな、迷惑だなんて思ってないですよ~」
呆れたようなヒデくんの声にみなもちゃんがますます落ち込んだ様子で指をつんつんしていた。
これが彼女のファンクラブの原因にもなってるんだろうな~。
だって、みなもちゃんはスタイルよいし、美人だから。
人あたりもよいというのもあるんだろうな。
「そうだぞ、みなもに頼めばいいんじゃないか?
一人で無理そうならさ」
「ああ、その方がいいんじゃねーか」
お兄ちゃんとフジくんがヒデくんを見てそう提案する。
「きちんと換気すればいいと思いますけど」
話を聞いていた小雪ちゃんもヒデくんを見上げて言った。
彼が猫を安心して飼えるようにという配慮なのだろう。
「それはそうなんだけどな」
「ヒーくんは一人で頑張るからみんな、心配なんだよ?」
頬をかくヒデくんは苦笑いを浮かべており、みなもちゃんは不服そうな表情を見せている。
「怒られてやんの」
「こら、そんなこと言ったらダメだよ」
と、そこへ聞きなれた声が響いた。
振り向くとそこには腰までかかる栗毛色の髪をもつ女性と背中まで伸ばされた茶色の髪を持つ女性にも見える男性が見えたの。
「おね、じゃなかった・・・時雨さんに結香さん」
「いい間違えてやんなよ、つぐみ?」
ついつい、言いそうになるのを慌てて変えるんだけど、時雨さんが落ち込んでいるのが見えたよ。
お兄ちゃんも苦笑していて、なんと声をかければいいのか迷うよ。
「まあ、時雨は間違えられてもおかしくねェからなァ」
そう言いながらけらけらと笑う結華さん。
実をいうと、この二人は夫婦なんです。
なんで、夫婦かというと随分まえに招待状が送られてきたからなんだよね。
時雨さんとは遠い親戚でもあったから、それで親同士が仲よかった記憶がある。
結華さんは、同じ学校になってからいろいろとしてきたことで注意して仲良くなったかな。
「結華?」
「あ、やべ」
あ、時雨さんが黒い笑を浮かべてるから、結華さんも顔が青く。
ま、また起こるのかなと思ってみたら、ね、熱烈なキスをしているではないですか。
はうはう・・・あたしには刺激が強すぎるよ~!
「ぷは・・・・・・じゃあ、つぐみちゃん達、私達は先にいってるね」
「しぎゅれ~♪」
と、笑を浮かべてすりすりと甘える結華さんを姫だきして歩いて行った。
あの一瞬で、デレデレになるのは時雨さんだけだろうな~。
「つぐみ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ!」
ぼんやりしていたらお兄ちゃんが声をかけてきたので見上げて笑顔で答えた。
それを聞いて安堵したお兄ちゃんはそのまま頭を撫でてくれる。
いつも思うんだけど、これで肌がつやつやになるのはなんでだろう?
お兄ちゃんからはマイナスイオンでも出てるのかな。
桜大通りと呼ばれているこの通りには、桜の木がみっしりと立ち並び、この季節になると歩道一面が桃色に包まれる。
そんな清々しい春の日の朝。
私はそんな初々しくて見ている方も心が踊る光景に笑みが浮かんでいた。
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