第13話 タイムセールに行かなくちゃ! 改
「ヒデ、公衆の面前でいちゃくなよな」
「それ、雷には言われたくない気がするんだけど」
呆れる雷兄にヒデくんはじと目で見ながら告げる。
なぜなら私は彼の膝の上に乗っているからだ。
うん、私もヒデくんと同意見だよ。だって、これじゃ食べにくいと思うしね。
「ユウ、わ、私たちも!」
「いや、なんでそこでやる気をだすんだ?」
右隣にいる無自覚の2人のユウくんとヒメちゃんは、弁当を手にとりながら会話している。
この二人はいつになったら付き合うんだろうか。
「あ、あれができるのはあの二人くらいだよな」
「うんうん……私らには無理だよ」
透くんと実乃里ちゃんは私達の光景を見て疎外感でもあるかのような会話をしていた。
いやいや、二人もこちらとほぼ変わらないよ?
「いや~、青春やな~♪」
「なんか弁当の味がしないんだが……」
にこにこ笑顔の深紅ちゃんの隣で光一くんは困惑していた。
まあ、それは無理もないかもしれないね。
「はい、結華。 あ~ん」
「あ~ん♪ はむはむ、うめ~♪」
なぜなら結華ちゃんと時雨さんが絶賛甘い空気をかもしだしているから。
さ、砂糖が口からでてきそうだよ。
「アキくん、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。 まさか缶コーヒがここで役立つとは……」
つばめちゃんは秋斗くんを心配そうに見つめて声をかけているね。
秋くんが笑みを見せてから答えて缶コーヒを飲み出す。
「瑠美、苦いのないか?」
「いやいや、こんな甘い空気の中で長続きするのなんてないから!?」
直貴くんと瑠美ちゃんもあまりの甘い空気に缶コーヒがほしいみたいだね。
そうだよね、私ですらきついもの。
「トシくん、ウチら場違いだよね」
「言うなよ、俺もそう感じているんだからさ」
俊哉くんと薫ちゃんはどこか苦笑いを浮かべて弁当をつついている。
うんうん、みんな同じ気持ちなんだね。
そんなやりとりをして昼食を食べ終えた私達は立ち上がると、教室へと戻ることにした。
あ、そうそう! 雷くんが同じクラスの女子に『おねえちゃん』と呼んであげたらと帰り際にいわれたんだ。
なんでか聞いたら内緒だと言われてしまったの。
気になることだけど、あんまり無理強いするのはよくないから諦めようかな。
~~~☆~~
普通通りに授業をうけて、放課後になったのでみんなはそれぞれ帰りの準備をしている。
私も鞄に教科書と弁当をつめると、立ち上がる。
「つぐみ、これから特売セールか?」
「そうだよ、フジくん! これは急がないと入手ができないからね!」
私の気配に気づいたフジくんは苦笑いしながら問いかけてきたので笑顔で言うと。
溜息をついたフジくん。 どうしてそこで溜息なんだろう?
「秋くん、急いで急いで!」
「ちょ、つばめ! 危ないよ!」
つばめちゃんが秋くんの手をひいて鞄をもって走り出す姿が見えた。
私も急がなくちゃ!
「じゃあ、また、後でね!」
私はそういうと鞄をもって教室から出ていく。
「おっと、危ないぞ、つぐみ」
「わわ、ごめんね。 雷くん!」
するとちょうど雷くんと鉢合わせになり、ぶつかりそうになっていたので抱きとめてもらった。
話を聞くにはどうやら特売セールなんで同じように急いでいたみたい。
そのまま私達は学校の玄関に向かうんだけど、私は運動苦手だから疾駆からよろよろの歩きになってしまった。
それに気づいた雷くんはわたしに謝ってから姫だきして、走ってくれたんだ。
うん、なんというかすんごく恥ずかしかったよ!!




