■外伝1「キング:神代昴」
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人は、生まれた時から平等ではない。
それは環境の差ではない。
努力の差でもない。
“理解できるかどうか”の差だ。
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神代昴は、幼い頃から“分かっていた”。
人の行動。
会話の意図。
場の流れ。
すべてが、繋がって見えていた。
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教室。
小学校の頃。
教師が問題を出す。
「この問題、分かる人?」
手を挙げる子供たち。
昴は挙げない。
理由は単純だった。
答えを知っているからではない。
“この後どうなるか”を知っているからだ。
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誰が指されるか。
誰が間違えるか。
教師がどうフォローするか。
クラスがどう反応するか。
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すべて、決まっている。
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昴は、それを見ていた。
ただ、静かに。
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「神代、分かるか?」
教師が言う。
予定通り。
昴は立ち上がる。
答える。
正解。
拍手。
そして。
少しだけ浮く。
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その流れも、知っていた。
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中学。
高校。
大学。
すべて同じだった。
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人は、同じように動く。
似たような理由で選び。
似たような結果に落ち着く。
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「つまらないな」
初めて口にしたのは、高校の頃だった。
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友人はいなかった。
必要なかった。
会話も、関係も、すべて予測できる。
そこに、驚きはない。
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ある日。
昴は、初めて“外れ”を見た。
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雨の日。
駅前。
傘を忘れたサラリーマン。
走れば間に合う距離。
だが、男は走らない。
立ち止まる。
空を見る。
そして。
笑った。
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「まあ、いいか」
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その一言。
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昴の思考が止まった。
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理由がない。
合理的ではない。
損をしている。
だが。
その選択は、確かに存在していた。
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「……なんだそれ」
小さく呟く。
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初めてだった。
理解できない選択。
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そして。
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興味が生まれた。
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大学に進んでから、昴は変わった。
人を観察する。
行動を分析する。
予測する。
だが。
“外れ”を探す。
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なぜ人は、合理を捨てるのか。
なぜ人は、意味のない選択をするのか。
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その答えを探していた。
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そして。
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出会う。
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雨宮澪だった。
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カフェ。
騒がしい店内。
人の流れ。
会話。
すべてが、いつも通り。
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だが。
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彼女だけが違った。
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スマートフォンを見ながら、笑っている。
投稿する。
意味のない言葉。
拡散する。
止まる。
また別の投稿。
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流れが、読めない。
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「……なんだそれ」
思わず口に出る。
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澪が顔を上げる。
「なにが?」
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昴は言う。
「その動き」
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澪は少し考えて、笑う。
「別に?」
「なんとなく?」
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その答え。
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昴は、確信する。
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これだ。
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探していたもの。
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理解できない選択。
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「名前は?」
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「雨宮澪」
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「そうか」
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昴は、静かに言った。
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「俺と来るか?」
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澪は目を丸くする。
「は?」
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「面白いことをする」
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その言葉。
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意味は分からない。
だが。
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「いいよ」
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即答だった。
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理由はない。
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だが。
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それでいい。
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神代昴は、初めて理解する。
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人は、選ぶ。
理由がなくても。
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そして。
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その選択こそが。
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最も予測できないものだった。
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それが。
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オラクルの、始まりだった。




