表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外伝  作者: vastum


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/6

■外伝1「キング:神代昴」


 人は、生まれた時から平等ではない。


 それは環境の差ではない。

 努力の差でもない。


 “理解できるかどうか”の差だ。



 神代昴は、幼い頃から“分かっていた”。


 人の行動。


 会話の意図。


 場の流れ。


 すべてが、繋がって見えていた。



 教室。


 小学校の頃。


 教師が問題を出す。


「この問題、分かる人?」


 手を挙げる子供たち。


 昴は挙げない。


 理由は単純だった。


 答えを知っているからではない。


 “この後どうなるか”を知っているからだ。



 誰が指されるか。


 誰が間違えるか。


 教師がどうフォローするか。


 クラスがどう反応するか。



 すべて、決まっている。



 昴は、それを見ていた。


 ただ、静かに。



「神代、分かるか?」


 教師が言う。


 予定通り。


 昴は立ち上がる。


 答える。


 正解。


 拍手。


 そして。


 少しだけ浮く。



 その流れも、知っていた。



 中学。


 高校。


 大学。


 すべて同じだった。



 人は、同じように動く。


 似たような理由で選び。


 似たような結果に落ち着く。



「つまらないな」


 初めて口にしたのは、高校の頃だった。



 友人はいなかった。


 必要なかった。


 会話も、関係も、すべて予測できる。


 そこに、驚きはない。



 ある日。


 昴は、初めて“外れ”を見た。



 雨の日。


 駅前。


 傘を忘れたサラリーマン。


 走れば間に合う距離。


 だが、男は走らない。


 立ち止まる。


 空を見る。


 そして。


 笑った。



「まあ、いいか」



 その一言。



 昴の思考が止まった。



 理由がない。


 合理的ではない。


 損をしている。


 だが。


 その選択は、確かに存在していた。



「……なんだそれ」


 小さく呟く。



 初めてだった。


 理解できない選択。



 そして。



 興味が生まれた。



 大学に進んでから、昴は変わった。


 人を観察する。


 行動を分析する。


 予測する。


 だが。


 “外れ”を探す。



 なぜ人は、合理を捨てるのか。


 なぜ人は、意味のない選択をするのか。



 その答えを探していた。



 そして。



 出会う。



 雨宮澪だった。



 カフェ。


 騒がしい店内。


 人の流れ。


 会話。


 すべてが、いつも通り。



 だが。



 彼女だけが違った。



 スマートフォンを見ながら、笑っている。


 投稿する。


 意味のない言葉。


 拡散する。


 止まる。


 また別の投稿。



 流れが、読めない。



「……なんだそれ」


 思わず口に出る。



 澪が顔を上げる。


「なにが?」



 昴は言う。


「その動き」



 澪は少し考えて、笑う。


「別に?」


「なんとなく?」



 その答え。



 昴は、確信する。



 これだ。



 探していたもの。



 理解できない選択。



「名前は?」



「雨宮澪」



「そうか」



 昴は、静かに言った。



「俺と来るか?」



 澪は目を丸くする。


「は?」



「面白いことをする」



 その言葉。



 意味は分からない。


 だが。



「いいよ」



 即答だった。



 理由はない。



 だが。



 それでいい。



 神代昴は、初めて理解する。



 人は、選ぶ。


 理由がなくても。



 そして。



 その選択こそが。



 最も予測できないものだった。



 それが。



 オラクルの、始まりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ