表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑の声  作者: Tom
3/7

第三章 解読

発見から一週間。美咲と高橋は、植物ホルモンの「言語」の解読に没頭していた。

彼らが最初に気づいたのは、オーキシンの濃度変化が「成長」や「探索」といった行動を示すシグナルだということだった。根が新しい水源を探すとき、オーキシンのパルスは短く、頻繁になる。

逆に、アブシシン酸は「警告」や「防御」のシグナルだった。乾燥や低温などのストレスを感じると、植物はアブシシン酸を増やし、気孔を閉じて水分を保とうとする。

そして、これらのホルモンが組み合わさることで、より複雑な「文」が形成されることも分かってきた。

「先生、これを見てください」

高橋が指さしたのは、三つのホルモンが同時に変化しているグラフだった。

「オーキシン、エチレン、ジベレリンが、まるで協調しているみたいです」

「これは…『成長を止めて、実を熟させよ』というメッセージかもしれない」

美咲は興奮を抑えきれなかった。植物は、複数のホルモンを組み合わせることで、状況に応じた適切な指示を自分自身に、そして周囲の植物に送っていたのだ。

「ということは、植物同士もコミュニケーションを取っているんでしょうか」

「そうよ。例えば、ある植物が虫に食べられたとき、エチレンを放出して周囲の植物に警告する。それを受け取った植物は、防御物質を作り始める。私たちは、それをただの化学反応だと思っていたけど、実際には『危険だ、備えよ』というメッセージだったんだわ」

二人は、まるで暗号を解読するように、データと格闘し続けた。

そして、ある晩。

「先生…これ…」

高橋の声が震えていた。

「どうした?」

「九百九十日目のデータです。すべてのホルモンが、同時に、非常に複雑なパターンで変化しています。これは…」

美咲は画面を見た。そして、息を呑んだ。

そこには、これまで見たことのない、美しいまでに複雑なパターンがあった。まるで、交響曲のように。

「これは…何かを『表現』しようとしている」

美咲の目に涙が浮かんだ。

母が言っていたこと。植物に心があるのか、という問い。その答えが、今、目の前にあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ