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【完結】聖女の恋は始まらない  作者: 竹間単
■第三章 世界を変える力

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33/44

●第33話


「失礼いたします……ジェイミー様?」


 執務室に入ったエディットは、私が執務室にいることに驚いていた。

 私は今日この時間、王宮騎士団と訓練をしている予定だったからだろう。

 エディットはきっと今の今まで、訓練終わりの私のために熱いお風呂を用意していたはずだ。

 しかし王宮騎士団との訓練に参加する予定は、急遽取り止めになった。

 昨日、組織の内通者が動いたから。


「待っていましたよ、エディット」


「ジェイミーの専属侍女のエディットで間違いはないね? さあ、そちらに掛けて」


「は、はい。ですが、ただの侍女であるわたくしがソファに掛けるのは……」


「王子の命令に背きたいということかな?」


「いっ、いいえ! 座らさせていただきます!」


 ルーベンに促されたエディットは、恐る恐る執務室のソファに座った。

 エディットが立ったままでは会話がしづらいというのもそうだけれど、ルーベンがエディットに座るように促したのは、ソファに座らせることでエディットが瞬時に逃げることが出来ないようにする意図もある。

 そう、エディットはこれから逃げたくなるような話をされるのだ。


「ここに呼ばれた理由は分かっているかな?」


 ルーベンに問われたエディットは、ビクリと肩を跳ねさせた後、私のことを見つめた。

 この場に私がいることで、エディットが専属侍女として粗相をしたと私がルーベンに告げ口をしたとでも思ったのかもしれない。


「もしかしてわたくしはジェイミー様に……」


「今日の呼び出しは、私への対応とは関係ありません」


 私がピシャリと告げると、エディットはルーベンと私を交互に見てから、震えた声を出した。


「……申し訳ございません。わたくしはどのような過ちを犯してしまったのでしょうか。わたくしは何故、ルーベン殿下に呼ばれたのでしょう? 自覚が無くて恥ずかしい限りですが」


「自覚が無い? 違うよね。自覚はあるが、過ちを隠したいのだろう?」


「!?!?」


「口で説明するよりも、記録映像を見せた方が早いかな。ジェイミー、お願いします」


 ルーベンに声をかけられた私は、ルーベンの机の上に置いていた水晶玉を、ソファの前まで持ってきた。

 そして水晶玉の説明を始める。


「これは監視魔法に映ったものを見ることの出来る水晶です。いわゆる受信機ですね。通常なら今現在の様子しか見ることは出来ませんけれど、私はこの水晶に記録魔法も掛けていました」


 エディットの目が大きく見開かれた。

 ここでようやく昨日の自分が失態を犯したことに気付いたのだろう。

 見る見るうちにエディットの顔色が悪くなっていく。


「顔を蒼くしたということは、気付いたようですね。そうです。エディットが組織の者にメモを渡すところがしっかりと記録されています」


 私は記録されていた映像を水晶玉に映し出した。

 映像にはエディットが町を歩く様子と、一人の男とすれ違う瞬間に握っていたメモを手渡すところが映っていた。

 エディットが男にメモを渡し、エディットも男からメモを受け取っている。


「反論はありますか?」


 俯いていたエディットが、がばっと立ち上がった。

 攻撃をしてくるのかと警戒したものの、そういったことはなく、エディットは目に涙を溜めた状態で身振り手振りを交えながら懸命に自分の無実を訴え始めた。


「これは、捏造です! わたくしはこんなことはしていません! きっとこの映像は魔法で作られたものです!」


「往生際が悪いですね。この魔法を使ったのは私だと説明したでしょう? 私が捏造をしたとでも?」


「ルーベン殿下! 長年王城に仕えてきたわたくしと、つい最近やってきたジェイミー様の、どちらの話を信じるのですか!?」


 あろうことかエディットは、私がこの映像を捏造したのだとルーベンに訴え始めた。

 一世一代の大舞台だ。

 ……そんな演技が通用するわけがないのだけれど。


「勇気がありますね、エディット。この私が捏造をしたと、ルーベンに訴えかけるなんて」


「だってわたくしは、こんなことはしていません! わたくしがしていないのですから、捏造に決まっています! 魔法なら捏造も可能ですよね!?」


「可能か不可能かで言うなら、理論上は可能ではありますね。ものすごく複雑な術式を用いなければならないため、やろうと考える人はいないでしょうけれど」


「一般の魔法使いがやらなかったとしても、ジェイミー様は別のはずです。ジェイミー様は王宮騎士団を全敗させる実力をお持ちなのですから!」


 あー。今さらだけれど、王宮騎士団を全敗させてしまったのは良くなかったかもしれない。

 エディットを通じて、その事実が組織の耳に入ってしまったようだから。

 どうにも私は、隙が多くてうっかりしていて詰めが甘い性格のようだ。


 こうなったら仕方がない。

 王宮騎士団が弱いと知った組織が乗り込んでくる前に、王宮騎士団を鍛え上げなくては。

 その前にこちらから組織に乗り込むことになりそうだけれど、とにかく鍛えなければ。

 すでに地獄の責め苦の方がマシだと思うような鍛え方はしているけれど、地獄の責め苦が飴だと思えるレベルまで訓練の内容を厳しくしよう。

 ……私の迂闊な行動のせいで申し訳ない、王宮騎士団。


「魔法が得意なジェイミー様なら、記録魔法の捏造くらい簡単なはずです!」


「実力があるからと言って、無駄なことに魔力を使う理由にはなりません。エディットが組織の内通者である証拠を捏造する理由が、私にはないのです」


「それは……きっとわたくしのことが気に入らないからでしょう!? だからジェイミー様はわたくしを専属侍女から外すために……!」


「もしそうだとしたら、こんな面倒くさいことはせずに、侍女を変えてくれと口で言います。それだけで話は終わるのですから」


 侍女を外すためだけに監視魔法と記録魔法を使うなんて、あまりにも馬鹿げている。

 エディットも苦し紛れに言っただけだろうけれど。




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