●第20話
【side ジェイミー】
再び執務室に戻った私たちは、先程の話の続きを始めた。
ルーベンにチーズケーキをがっつくみっともない姿を見せてしまった分、そのマイナスを取り返すために真面目なところを見せよう。
私はキリッと目に力を込めると、真剣な声で言葉を紡いだ。
「これはあくまで私の推察ですけれど……一回目の人生で隣国が襲ってきたのも、組織が関与しているのではないかと思うのです」
「ジェイミー、先程のデザートは美味しかったですか?」
「はい、とても!」
「では料理長に、これからもああいったデザートを用意するように指示を出しておきますね」
「ぜひお願いします!!」
満面の笑みで答えてから、ハッとして口元を押さえる。
真面目な部分を見せるはずだったのに、さっそく真面目な話から逸れてしまった。
そんな私を、ルーベンは小動物でも見るかのように微笑ましそうに眺めている。
「やめてください、ルーベン。デザートの話はもういいのです! 執務室に移動をしたということは、真面目な話の続きをするのでしょう!?」
「ふふっ、そうですね」
ルーベンはまだ微笑みながら私のことを見つめている。
私はそんなに何度もデザートの話を振りたくなるほど、デザートにがっついていただろうか。
……がっついていたかもしれない。
良いと言われたから、ルーベンの分のチーズケーキも食べてしまった。ルーベンがくれると言うから……。
だって王城で出されるチーズケーキだ。その辺で売っているケーキとは質が違う!
これまでスイーツを食べることを我慢していたのに、いきなり最高級のチーズケーキを目の前にお出しされて、それでも我慢が出来るだろうか。いや、出来るわけがない!
私はスイーツに飢えていたのだから!!
「考えなくてはならない事柄のうち残りは、隣国をどう対処するか、魔物をどうするか、疫病をどうするか、ですね」
今さらチーズケーキにがっついた事実を消すことは出来ないため、私は努めて冷静な声を絞り出した。
今度こそ挽回をしなくては。
「聖女が現れた事実を秘密にしておくことで、隣国対策は十分ではありませんか?」
「いいえ、永遠に隠しておくことは無理だと思います。聖女がいることでこの国は豊穣ですから。それともまた私を地下牢に監禁でもしますか?」
私にそう言及されたルーベンは、バツの悪そうな顔になった。
今目の前にいるルーベンは何もしていないけれど、別の世界線のルーベンの仕出かしたことに、思うところはあるのだろう。
「その節は、別の俺がすみませんでした」
「いえ、あなたは何もしていないのでお気遣いなく。あなたにはその世界線で生きた記憶は無いのでしょう?」
「それはまあ」
「でしたらこの話はここで終わりです。記憶に無い行為を責められるのは嫌でしょうからね。私もこれ以上、ルーベンを責めるつもりはありません。今ここにいるあなたは何もやっていないのですから」
それよりも今は、もっと他に考えるべきことがある。たくさんある。
「ルーベン。一度目の人生で、隣国が襲ってきた理由を考えましょう? 私はあれに組織が関与していると思うのです」
「そう思う理由は?」
「三度目の人生で私が強い聖女としてバリバリ動いていたときには、隣国が攻めてこなかったからです。組織は兵士が束になって挑んでも私は負けないだろうと思い、隣国ではなく疫病を国の壊滅に使うことにしたのでしょう」
「確かに聖女が現れたのに、襲ってくる回と襲ってこない回があるのは、何かしらの外的原因がありそうですね。例えば王が絶対に聖女が欲しいという気持ちだけで動いたのなら、聖女が強くても襲ってきそうですからね」
そう、隣国が王の一存で動いていたのなら、三度目の人生でも隣国が襲ってきたはずだ。
それなのに、そうはならなかった。
この事実が指し示すのは、隣国に何かを吹き込んだ者が存在しただろうことだ。
そしてその者は、聖女である私の強さを踏まえて、隣国を動かすか、別の方法を取るかを決めたのだ。
「襲ってきた回では、組織が隣国に働きかけたのだと思います。聖女がいるだけでその国は豊穣になりますから。戦争をしてでも奪う価値があると吹き込んだのでしょう」
「証拠が無いのであくまでも推測の域を出ませんが……その可能性は高そうですね」
「やはり組織をどうにかするしかないようですね」




