●第16話
「捕縛した者たちが知っていたのは、俺が暗殺されかけつつも生還したこと。そして聖女が現れた可能性があること。この二点のみです」
「……! もしかして組織は王城内に聖女がいると思ったから、ルーベンの暗殺を弟さんにけしかけたのではありませんか。ルーベンが『聖女の慕情』を得ていると思ったから……」
もしそうなら、ルーベンの暗殺未遂事件はやはり聖女である私が原因ということになる。
そう思って私が顔を蒼くしていると、ルーベンが優しい声を出した。
「それはあり得ません。弟が組織と繋がっていないことは、暗殺未遂事件の後に確認をしていますので。弟は単に自分が国王になりたいがために、俺の暗殺を目論んだようです。我が弟ながら恥ずかしい限りです」
そう、なのか。
良かった……と言うべき内容ではないけれど、少し安心をした。
「先程の話に戻りますが。俺の傷の状態を見れば、すぐに聖力で治療されたものではないと分かるはずです。しっかりと傷痕が残っていますから。それなのに組織は、俺の傷が聖力で治療されたと思っているのです」
組織が聖女の存在をルーベンの治療によって疑ったというのはあくまでも私たちの予想だけれど、でも森に張られた結界だけでは聖女の存在を疑う材料としては弱い。
きっとルーベンの生還も、聖女の存在を疑う一因になっている。
いや、待って。
ルーベンの傷に関しては、傷痕を見ないと聖力で治したものか治癒魔法で治したものか分からないけれど、それなら結界は?
王宮魔法使いが国中の結界を張っている状況で、どうして森の結界を張ったのが聖女だと思ったの?
「言われてみるとおかしいですね。森の結界だって王宮魔法使いたちが張ったものかもしれないのに、聖女の出現を疑うなんて」
「それが導き出す答えは一つでしょう」
「もしかして……王城内に組織の内通者がいる!?」
言ってもいいものかと気にしながらも口にすると、ルーベンは難しい顔で唸った。
「そう考えるのが妥当でしょうね」
「内通者はルーベンの傷の状態を見ることの出来る人物ではないから治療に聖力が使われたと勘違いをして、けれど暗殺未遂事件のことや王宮魔法使いたちが森へ結界を張りに行っていないことは知っている……内通者が王城に勤めている人物なら筋は通りそうですね」
王城に勤めているなら、どのような立場であっても、ルーベンの暗殺未遂事件のことは知っていたはずだ。そのような醜聞が、王城内でうわさにならないはずがないのだから。
それに組織の内通者は組織のために、王城で働く王宮魔法使いたちの動向もこっそりチェックしていたのだろう。
しかし王城勤めでも、王族の素肌を見ることが出来る人物は限られている。内通者にはそれが不可能だった。
そのためルーベンの傷を見ることの出来た人物だけは、内通者ではないとして除外できる。例えばルーベンの専属侍女や王宮医師などだ。
一方で王城で働く使用人や執務官なら、ルーベン暗殺未遂事件や王宮魔法使いの動向は分かっても、ルーベンの傷の具合を知らないという条件に当てはまる。
そういった人物をチェックしていけば、王城内に潜む組織の内通者が判明する気がする。
「ルーベンの傷の様子を見る機会は無く、しかし大勢の王宮魔法使いが森へ行ってはいないことを知っている人物が、組織の内通者ということですね!」
「王城で働く、俺の傷を見られない人物……掃いて捨てるほどいますね」
「ですよねー……」
王城に勤めている人間は、十人や二十人ではない。
それを全員チェックするとなると、いつ組織の内通者が判明するのか見当もつかない。
それにそのような大人数に対するチェックを行なったら、内通者は自分が探されている事実に気付いて、証拠を隠滅したり逃げてしまうかもしれない。
「しかし困りましたね。内通者が王城内にいるということは、大勢の王宮魔法使いが森へ行っていないことはほぼ確実に知られてしまっているのですよね」
「うーむ……」
唸りながら考えこんでいたルーベンが、がばっと顔を上げた。
「そうだ! ジェイミーです!」
「へっ?」




