EP 3
T-SWAT、始動
女神ルチアナがガチャ石を求めて天界へ帰還した後。
俺は直ちに、リーザの5000万タローで購入した「神具級SWAT装備」の分配と、拠点の整備に取り掛かった。
「ユニークスキル【建築】、起動」
俺が倉庫の床に手を触れると、廃墟同然だったボロ倉庫が脈動を始めた。
錆びついたトタン壁は、ミスリルを織り交ぜた漆黒の強化装甲壁へ。
カビ臭い床は、配線が張り巡らされたシステムフロアへ。
そして、部屋の中央には巨大なメインモニターと、オペレーター席がせり上がってくる。
「す、すげぇ……! 秘密基地だ!」
イグニスが少年のように目を輝かせる。
さらに俺は、部屋の奥に二つの重要な施設を作り出した。
一つは、鉄格子で仕切られた『留置所』。
もう一つは、無機質な机とパイプ椅子、そしてなぜか「カツ丼」のサンプルが置かれた『取調室』だ。
「完璧だ。これで形は整った」
俺は満足げに頷き、整列したメンバーを見渡した。
全員、ルチアナから買った黒い特殊部隊装備を身に着けている。
「これより、タロー国特殊部隊『T-SWAT』の編成を発表する」
俺は指示棒でホワイトボードを叩いた。
「まず、突入班。イグニス、キャルル。お前らは最前線で敵の防御を粉砕し、制圧しろ」
「了解だぜ兄貴! 暴れていいんだな!?」
「はいっ! 竜さんのために頑張ります!」
一番火力の高い二人が先陣。単純だが最強だ。
「次に、情報班。ルナ。お前は植物や精霊と対話し、敵の位置や逃走ルートを特定しろ」
「は~い。お花さんたちとお喋りですね~」
「そして、広報・拡散班。キュララ。お前は現場の状況をドローンで撮影し、リアルタイムで配信しろ」
「えっ、配信していいの!?」
「ああ。犯人の顔、悪事、無様な逃走劇……全てを全世界に晒し上げろ。『デジタルタトゥー』で社会的に抹殺するんだ」
「りょーかいっ☆ えぐいね竜さん! そういうの大好き!」
キュララが邪悪な笑みを浮かべる。
「法務班。リベラ。逮捕した犯人を法的に詰めろ。言い逃れを許すな」
「お任せください。六法全書(物理)で黙らせますわ」
「最後に、支援・雑用班。リーザ、ルルシア。お前らは……まあ、現場の封鎖とか、逃げた犯人の確保とかをやれ」
「雑用ですかぁ!? 5000万も出資した私がぁ!?」
「パイセン、元気出してください。制服、似合ってますよ?」
不満げなリーザと、意外とノリノリなルルシア。
凸凹だが、戦力だけは過剰なチームが出来上がった。
ウゥゥゥゥゥゥ――ッ!!
その時、本部に設置された赤色灯が回転し、サイレンが鳴り響いた。
メインモニターに『緊急通報』の文字が表示される。
「早速来たか。……状況確認!」
俺がキーボードを叩くと、地図情報が表示された。
「現場は貴族街、エクレア男爵邸。強盗団が押し入り、屋敷を占拠中とのことだ。……一般の衛兵では歯が立たないらしい」
「強盗……! 許せませんわ!」
元貴族のルルシアが憤る。
「よし、T-SWAT出動! 総員、乗り込め!」
俺たちは、倉庫のガレージに用意していた特注車両――漆黒の塗装に『T-SWAT』の白文字が入った装甲輸送車(馬車ではなく魔道エンジン駆動)に乗り込んだ。
***
現場のエクレア男爵邸前。
既に数台のパトカー(馬車)が取り囲んでいるが、強盗団の強力な魔法攻撃に阻まれ、近づけずにいた。
「くそっ、結界が硬すぎる! 突入できない!」
衛兵隊長が歯噛みしているところに、轟音と共に黒い車体が滑り込んできた。
キキィィィッ!!
T-SWATの到着だ。
後部ドアが開き、フル装備の俺たちが降り立つ。
「け、警察だ! 応援か!?」
「いいや。……害虫駆除業者だ」
俺は短い指示を出した。
「イグニス、キャルル。突入だ。……正面玄関は結界で封鎖されている。どうする?」
イグニスはニヤリと笑い、背中の大剣を構えた。
さらに、腰に装着した『聖なる防弾チョッキ』が、敵の放った火球魔法を「パァン!」と軽い音で弾き返す。
「玄関? 関係ねぇな」
イグニスは屋敷の壁――分厚いレンガ造りの外壁に向かって走り出した。
「ドアがねぇなら、作ればいいんだよォォォッ!!」
ドガァァァァァァンッ!!!!
爆音。
そして粉塵。
イグニスの暴力的な一撃が、屋敷の壁を直径3メートルほど綺麗に吹き飛ばした。
強盗団が必死に張っていた玄関の結界など、何の意味もなかった。
「な、なんだぁぁっ!?」
「壁が!? 壁がなくなったぞ!?」
屋敷の中から、犯人たちの狼狽する声が聞こえる。
粉塵の中から、黒い装備に身を包んだ悪魔が、赤い目を光らせて現れた。
「ヒャッハー! お待たせしましたぁ! T-SWATのデリバリーだぜぇ! ……動く奴はミンチにするから覚悟しな!」
「つ、続けぇぇっ!」
キャルルも巨大なハンマーを振り回して突撃する。
「……あの、竜さん? これ、人質救出じゃなくて、破壊活動に見えるんですけど?」
リーザが引きつった顔で呟く。
「気にするな。……修理費は男爵に請求する」
俺は冷静に指揮棒を振った。
「第二班、展開! 逃げるネズミを一匹残らず狩り尽くせ!」




