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ホームセンター店員、過労死して異世界へ。聖剣もフォークリフトも俺にはただの「道具」ですが?【ウェポンズマスター】のDIY無双  作者: 月神世一


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EP 2

女神ルチアナ(課金中毒)

 ボロボロの倉庫――もとい、T-SWAT本部予定地。

 カビと錆の匂いが充満するその場所で、リーザはホウキを手に、怨念のこもった独り言を呟きながら床を掃いていた。

「……私の5000万……老後の資金……私の夢のタワマン生活……」

「いつまで腐ってるんだ、リーザ。掃除の手が止まってるぞ」

 俺は木箱(机代わり)の上に腰掛け、スマホで時間を確認した。

 そろそろ約束の時間だ。

「腐りもしますよぉ! こんな廃墟で……しかも装備はどうするんですか!? 私、竹槍とかでテロリストと戦うのは御免ですからね!?」

「安心しろ。最強の『武器商人』を呼んでおいた」

 俺は床にチョークで描いた魔法陣を指差した。

「武器商人? ドワーフか何かですか?」

 イグニスが興味深そうに覗き込む。

「いや、もっと性質タチの悪い……だが品揃えだけは神懸かった奴だ」

 俺が魔法陣に魔力を流し込むと、黄金の光が倉庫内を照らした。

 神々しい賛美歌のBGM(どこから鳴っているのか不明)と共に、光の中から一人の女性が姿を現した。

「……あー、ダルい。メンテ延長とかマジふざけんなよ運営……」

 現れたのは、あぐらをかいてスマホをポチポチしている美女だった。

 輝くような金髪に、透き通る白い肌。

 背中には神々しい光の輪が浮いている。

 ――しかし、その服装は『緑色のジャージ(芋ジャージ)』に、足元は『便所サンダル』。

 片手にはコンビニで売っているような『ワンカップ酒』が握られていた。

「……め、女神様……!?」

 ルルシアがその場にひれ伏した。

 彼女にはわかるらしい。このダラしない格好の女から溢れ出る、隠しきれない神気が。

「えっ? 女神? これが?」

 キュララがドン引きしている。

「よう、久しぶりだなルチアナ。元気にしてたか?」

 俺が声をかけると、ジャージの女神――ルチアナは、面倒くさそうに顔を上げた。

「あ~、竜ちゃん? 久しぶり~。……てか今、イベント周回中で忙しいんやけど。スタミナ漏れるやん」

 彼女はスマホ画面から目を離さない。

 画面には美少女キャラクターがパズルで戦っている様子が映っている。

「仕事の依頼だ。T-SWAT設立のための装備一式、頼みたいんだが」

「あー、無理無理。今月ピンチやねん。石(課金アイテム)買う金もないから、仕入れとかやってる場合ちゃうわ」

 ルチアナはワンカップを煽り、ゲプッと品のないゲップをした。

「……そうか。じゃあ、この話はナシだ」

 俺は懐から、一枚のキャッシュカードを取り出した。

 リベラから預かった、フェスの売上金口座のカードだ。

「ここにある5000万タロー……他の商人に持っていくとするか」

 ピタリ。

 ルチアナの指が止まった。

 彼女がゆっくりと顔を上げる。その瞳が、スマホのブルーライトを反射して怪しく光った。

「……ご、5000万?」

「ああ。全額即金で払える。……だが、お前が忙しいなら仕方ない」

「待たんかいワレェェェッ!!」

 シュバッ!

 ルチアナは神速の土下座(ジャンピング土下座)で俺の足元に滑り込んだ。

「すんません! 調子乗りました! 売ります! 何でも売ります! 天界の倉庫にあるモン全部持ってきますぅぅッ!」

 彼女は俺の足を掴み、涙目で訴えた。

「5000万あったら……今やってる『限定水着ガチャ』、天井まで回せる……! 完凸(完全強化)できるんや……!」

「……相変わらずだな、駄女神」

 俺は呆れつつも、彼女にオーダー表を渡した。

「欲しいのは『対テロ用特殊装備』だ。……ただし、相手は魔法もスキルも使う犯罪者だ。普通の防弾チョッキじゃ役に立たん」

「任せとき! ちょうど天界の警備隊エンジェル・ポリスの横流し品……じゃなくて、余剰在庫があるんや!」

 ルチアナが指を鳴らすと、虚空から真新しい木箱がドサドサと降り注いだ。

 中には、黒光りする装備品が詰まっている。

「まずはこれ! 『聖なる防弾チョッキ(ホーリー・ケブラー)』! 物理攻撃無効に加え、下級魔法なら100%反射する『神の加護オート・リフレク』付きや!」

「おおっ! すげぇ!」

 イグニスが手に取って感動している。

「次はこれ! 『天罰閃光弾ディバイン・フラッシュバン』! 炸裂すると『天地創造の光』が溢れて、悪意のある奴だけ網膜を焼くで!」

「えげつないですね……」

 ルナが感心する。

「トドメはこれや! 『ミスリル特殊警棒エクスカリバー・トンファー』! 殴った相手のHPとMPを同時に削り、ついでに過去の悪事の記憶をフラッシュバックさせる精神攻撃付き!」

 ルチアナは次々と危険なアイテムを並べていく。

 どれもこれも、現代兵器の形をしているが、付与されているエンチャントが神話級オーバースペックだ。

「どうや竜ちゃん! これだけ揃えて5000万ポッキリ! お買い得やろ!?」

「……悪くない」

 俺は頷き、キャッシュカードを渡した。

「毎度ありぃぃぃッ!!」

 ルチアナはカードをひったくると、その場でスマホを取り出し、課金画面を開いた。

 彼女の指が、目にも止まらぬ速さで『購入』ボタンを連打する。

「ひゃっはー! 石が増える! 石が増えるでぇぇ! 回すぞ! ガチャの時間は今やァァッ!」

 黄金の光に包まれながら、狂ったようにガチャを回す女神。

 その横で、リーザが膝から崩れ落ちていた。

「あ……ああ……」

 彼女は見ていた。

 自分の血と汗と涙の結晶である5000万タローが、一瞬にして電子の海(ソシャゲのガチャ石)へと消えていく様を。

「私の……私の老後が……水着の絵に変わっていく……」

「リーザ、喜べ。これで最強の武装が手に入ったぞ」

「嬉しくないぃぃぃッ! 返して! その金で温泉旅行行きたかったのにぃぃッ!」

 リーザの絶叫が倉庫に響く。

 だが、装備は本物だ。

 こうして、T-SWATは女神のガチャ欲のおかげで、世界最強レベルの武装を手に入れたのだった。

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