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ホームセンター店員、過労死して異世界へ。聖剣もフォークリフトも俺にはただの「道具」ですが?【ウェポンズマスター】のDIY無双  作者: 月神世一


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EP 8

アクシデント(断線)

 罰ゲーム(コーラの買い出し)を終えた俺は、白い息を吐きながらリビングに戻ってきた。

 手にはキンキンに冷えた『タロー・コーラ』の瓶が五本。

「ほらよ。戦利品だ」

「わぁい! 竜さんありがとう!」

「負け犬の持ってきたコーラは美味いぜぇ~!」

 コタツの魔力に守られた勝者たちは、ぬくぬくとした顔でコーラを受け取り、栓を抜く。

 シュワッ、という音と共に、俺も再びコタツの中へと足を滑り込ませた。

「……ふぅ。生き返る」

 冷え切った体が再び温められていく。

 外は地獄キッチンだったが、ここは天国だ。

 俺たちは甘い炭酸を喉に流し込み、至福のひとときを噛み締めていた。

 その時だった。

「むにゃ……腹一杯だ……もう食えねぇ……」

 満腹と暖かさで限界を迎えたイグニスが、豪快な寝返りを打った。

 彼の太い尻尾と丸太のような足が、布団の中でゴロンと動く。

 その拍子に、何かに引っかかる感触があった。

 ――ブチッ。

 何かが外れる、乾いた音。

 そして、それまで微かに聞こえていた「ブォォォォン……」という魔導ユニットの駆動音が、フツリと途絶えた。

「ん……?」

 最初に異変に気づいたのは、聴覚の鋭いキャルルだった。

 彼女はピクピクと耳を動かし、恐る恐る布団をめくってスイッチボックスを確認した。

「……あ」

 彼女の顔から血の気が引いていく。

「ど、どうしたキャルル?」

「……消えてる」

「何がだ?」

「パイロットランプの……赤い光が……消えてるぅぅぅッ!!」

 その絶叫と共に、俺たちは戦慄した。

 俺も慌てて布団の中を覗き込む。

 熱源である魔石の輝きが失われ、ただの冷たい石に戻りつつあった。

 そして、視線を辿った先――。

 コタツから伸びるコードの先にあるプラグが、壁のコンセントから無残にも抜け落ち、床に転がっていたのだ。

「だ、断線(コンセント抜け)だああああッ!!」

 俺の悲鳴が響く。

 原因は明白。イグニスの足がコードを引っ掛け、引っこ抜いてしまったのだ。

「な、なんてことを……! イグニスさん! 起きてください! 貴方のせいで生命維持装置が停止しましたわよ!」

 リベラがイグニスを揺さぶるが、当の竜人は「グゥ……寒いの嫌い……」と冬眠モードに入っており、起きる気配がない。ただの巨大な重りだ。

 その間にも、コタツ内部の温度は急速に低下していく。

 忍び寄る冷気。

 天国が、急速に冷たい箱へと変わっていく恐怖。

「さ、寒いですぅ……! 足先が冷たくなってきましたぁ!」

 リーザがガタガタと震え出す。

「まずいぞ。このままじゃ全員、凍死(風邪)だ」

 俺は壁を見た。

 抜けたプラグと、コンセントの差し込み口。

 その距離、約2メートル。

 普段なら一歩で届く距離だ。

 だが、今の俺たちにとって、その2メートルは永遠にも等しい『極寒の荒野』だった。

 布団から出るということは、防護服なしで宇宙空間に出るのと同じ意味を持つ。

「……誰か」

 俺は乾いた唇を舐めた。

「誰か、行ってくれないか? プラグを差しに」

 沈黙。

 全員が視線を逸らす。

「俺はさっきコーラを取りに行った。ノルマは果たしたはずだ」

 俺は正論(言い訳)を並べた。

「わ、私は笑わせ合いバトルの勝者ですぅ! 免除される権利がありますぅ!」

 リーザが必死に主張する。

「わたくしはオーナーですわよ? 家賃をまけてあげた恩があるはずです」

 リベラが権力を振りかざす。

「私は……私は……うぅ、寒いの嫌ですぅ……」

 キャルルが涙目で丸まる。

 誰も行きたくない。

 だが、誰かが行かねば、この楽園は崩壊する。

 残された熱(余熱)が消えるまで、あと数分。

 俺は覚悟を決めた。

 個人の犠牲ではなく、チームワークで乗り切るしかない。

「……仕方ない。これより『チキチキ・コンセント・レース』を開催する」

 俺は真剣な眼差しで、仲間たちに告げた。

「布団からは出ない。このコタツに入ったまま、全員で移動してプラグを差すんだ。……いいな?」

 それは、人類(と亜人)の尊厳とぬくもりを賭けた、過酷なレースの始まりだった。

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