9-1. 一人の逃亡
基地を離脱してから数週間が経過した。リオは一人で辺境の地を逃げ続けている。
荒野は乾いた土と岩が広がり、草木はほとんど生えていない。地平線まで続く荒涼とした風景が、リオの視界を支配する。足を踏み出すたびに、土埃が舞い上がり、喉の奥に砂が入り込む。息をするたびに、乾いた空気が肺を刺し、胸が締め付けられる。
リオは薄い外套を体に巻きつけている。その布は、風を通し、寒さを防ぐには不十分だ。夜になると、気温が急激に下がる。リオは岩陰に身を寄せ、外套をさらに強く体に巻きつける。それでも、寒さは骨の奥まで染み込んでくる。体が震え、歯がガタガタと鳴る。
食料も水も乏しい。リオは野生の果実を探し、小さな小川から水を汲む。だが、その果実は酸っぱく、ほとんど栄養にならない。水も、泥が混じり、飲みにくい。それでも、リオは飲み続ける。生き延びるために。
追跡をかわすために、リオは人里を避け、荒野の奥深くへと逃げ込む。誰とも話すことができず、誰にも頼ることができない。一人で生きることの困難さを、リオは痛感している。
食料を探すこと、水を確保すること、安全な場所を見つけること。すべてを一人で行わなければならない。その重さが、リオの肩を押しつぶす。体は疲れ果て、足は重い。一歩踏み出すたびに、膝が震える。
リオは剣を抜くこともできない。力を使えば、追跡される。魔導探知機が、リオの力の痕跡を追跡する装置だ。リオが永劫縛鎖の力を使った場所を特定することができる。そのため、リオは自分の力を使わずに生き延びる方法を探るしかない。
手のひらには、常に微かな熱が宿っている。それは、呪詛の力の証だ。その熱が、まるで自分の心臓を握りしめているかのように感じられる。息を吸うたびに、その熱が強まり、リオの胸を締め付ける。力を使いたい。だが、使えば、追跡される。その矛盾が、リオの心を重くする。
リオは、シルヴァの手紙を取り出した。手紙は、何度も折りたたまれ、端が破れかかっている。その紙を開くと、シルヴァの文字が目に飛び込んでくる。
「あなたは人間よ。兵器じゃない。それを忘れないで」
その言葉が、リオの心に染み込む。少しだけ、心が落ち着く瞬間がある。
「もし何かおかしいと思ったら、すぐに逃げて。あなたは、逃げることも選択肢の一つよ」
その言葉が、リオの心を支える。だが、その手紙も、いつか読み返すことができなくなるかもしれない。手紙が破れたり、雨に濡れたりして、読めなくなる不安が、リオの胸を締め付ける。それでも、その紙の存在だけが、リオにとって唯一の支えだ。
リオは手紙を丁寧に折りたたみ、胸の内ポケットにしまった。その紙の感触が、指先に残る。
一人で逃げ続ける日々が、リオの心を深く傷つけていく。誰とも話すことができず、誰にも頼ることができない。孤独が、リオの心を蝕んでいく。絶望が、リオの心を重くする。
リオは岩陰に身を寄せ、目を閉じた。その瞬間、体の重さが全身に広がる。肩が凝り、背中が痛む。息を吸い込むたびに、重さが胸を押しつぶす。
「一人では限界がある」
リオは心の中で呟いた。声が出ない。喉が渇き、声がかすれる。誰かに助けを求めなければ。だが、誰を信頼すればいいのか分からない。王国軍に追われ、敵国連合にも追われる。誰を信頼すればいいのか、誰に助けを求めればいいのか、答えが見つからない。
その不安が、リオの胸を締め付ける。息を吸うたびに、その不安が強まり、リオの心臓を握りしめる。一人では限界がある。その事実が、リオの肩を押しつぶす。リオは、自分の選択の限界を痛感している。
リオは目を開けた。荒野が、目の前に広がっている。地平線まで続く荒涼とした風景が、リオの視界を支配する。その風景を見つめながら、リオは深く息を吸い込んだ。その呼吸が、体の奥まで届く。
「生き延びる。それだけだ」
リオは心の中で決意を固めた。だがその決意も、リオ一人ではすぐに限界が来て脆く崩れ去るだろう。誰かに助けを求めなければ。その答えが、リオの胸の奥で重くのしかかる。重さが、肩から背中へと広がる。
リオは立ち上がった。足が重い。一歩踏み出すたびに、膝が震える。それでも、リオは歩き続ける。荒野を、一人で。
この先、誰と出会うことになるか。その出会いが、リオの運命を変えることになることを、まだ誰も知らない。
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