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魔法が廃れた時代の死神  作者: モノカキ
第七章

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7-2. 浮遊都市への接近

リオは頷き、共鳴装置を取り付けた剣を握りしめた。剣の柄に取り付けられた装置は、微かに青白い光を放っている。その光は、リオの手のひらを照らし、手のひらに宿る微かな熱と重なり合う。呪詛の力と、浮遊鉱石の共鳴。二つの力が、リオの体の中で混ざり合う。


「僕は……人間だ。兵器じゃない」


リオは心の中で呟いた。だが、周りはリオを兵器として見なしている。英雄として称賛し、恐れている。それは、リオが望んだことではなかった。


リオは、外壁の下へと向かう。その足取りは、重い。地面は、石造りで、その表面には、古い戦争の傷跡が残っている。砲弾の痕、剣の切り傷、血の跡。すべてが、この地で繰り広げられた戦いの証だ。リオは、その傷跡を見つめながら、自分の手のひらを見る。手のひらには、常に微かな熱が宿っている。それは、呪詛の力の証だ。息をするたびに、その熱が強まり、リオの肋骨を内側から押しつぶすように重い。


空を見上げると、ホロウスパイアが浮かんでいた。


その威容は、圧倒的だった。


雲の上にそびえ立つ塔都市。下から見上げると、天に届くほど高い。浮遊鉱石が発する微かな光が、都市全体を包み込んでいる。その光は、青白く、月の光のように見えた。しかし、月の光よりも冷たく、どこか不気味な輝きを放っている。都市の外壁には、無数の浮遊鉱石が埋め込まれており、その一つ一つが、微かに脈動している。巨大な生物の心臓のように。


「あれが……ホロウスパイア」


リオは、その光景を見つめながら、息を呑んだ。共鳴装置を使っても、登るのに数時間かかるほどの高さ。もし、共鳴装置が故障すれば、確実に落下して死ぬ。その恐怖が、リオの胸を締め付ける。


包囲網が完成し、作戦が開始された。


東側からは、空挺部隊が接近している。背中に翼のような装置を背負った兵士たちが、空に浮かび、鳥のように見えた。その影が、地面に落ちている。影は、ゆっくりと動き、ホロウスパイアの周囲を囲んでいく。空挺部隊の兵士たちは、背中の装置が微かに光を放っており、その光が、夜空に星のように散らばっている。


西側からは、魔導滑空艇が接近している。巨大な船のような形をした滑空艇は、浮遊鉱石が埋め込まれた表面を光らせながら、空に浮かんでいる。その音は、低い唸り声のように響き、空に反響していた。滑空艇の窓からは、魔導灯の光が漏れ、その光が、雲を照らしている。


南側からは、主力部隊が接近している。重装備を身に着けた兵士たちの足音が、地面を震わせている。その足音は、地震のように響き、リオの足元まで伝わってくる。主力部隊の兵士たちは、剣を構え、魔刀を抜き、戦闘の準備を整えている。


三方向からの包囲網が、徐々に構築されていく。リオは、その光景を見つめながら、空を見上げた。空には、ホロウスパイアが浮かんでいた。その姿は、天に届く塔のように見えた。


「僕は……また、人を殺すことになる」


リオは心の中で自問した。だが、それでも進まなければならない。シルヴァからの手紙を思い出す。逃げることも選択肢の一つ――それは、リオが考えたことのない選択だった。だが、今はまだ逃げられない。国家のために力を貸すと約束した以上、進まなければならない。


リオは、外壁の下に立った。外壁の下は、広々とした平地だった。その地面は、石造りで、その表面には、古い戦争の傷跡が残っていた。リオは、その傷跡を見つめながら、共鳴装置を取り付けた剣を、外壁に当てた。


剣が外壁に触れた瞬間、浮遊鉱石の共鳴が、剣を通じてリオの体に伝わってきた。


その共鳴は、微かな振動として、リオの手のひらを震わせた。振動が、リオの体全体に伝わる。手のひらに宿る呪詛の熱と、浮遊鉱石の共鳴が、リオの体の中で混ざり合う。二つの力が、リオの血管を這い、骨を震わせ、心臓を打つ。


「これで……外壁を駆け上がることができる」


リオは、剣を外壁に押し当てながら、体を浮かせた。共鳴の力が、リオの体を上へと引き上げる。重力が逆転したかのように、リオは外壁を駆け上がっていく。その感覚は、リオにとって、初めての体験だった。空を飛んでいるような感覚が、リオの体を包み込んだ。


しかし、それは、快感ではなかった。


体が浮き上がる感覚は、不安と恐怖を呼び起こす。地面から離れる瞬間、リオの心臓が、激しく打った。もし、共鳴装置が故障すれば、確実に落下して死ぬ。その恐怖が、リオの胸を締め付ける。


リオは、外壁の表面を見つめながら、駆け上がっていった。外壁の表面には、浮遊鉱石が埋め込まれており、その鉱石は、微かに光を放っていた。その光は、リオの顔を照らし、リオの目を眩ませた。浮遊鉱石の一つ一つが、脈動している。巨大な生物の血管のように。


外壁を駆け上がるリオの体は、共鳴の力によって上へと引き上げられていく。高さは、数百メートルにも及ぶ。下を見下ろすと、地面は遥か遠くにあり、もし落下すれば、確実に死ぬ。その恐怖が、リオの胸を締め付ける。


風が、リオの顔を打つ。


その風は、冷たく、リオの顔を刺すように痛かった。高さが増すにつれて、風は強くなっていく。リオの髪が、風に揺られ、目に入る。リオは、目を細めながら、前を見据えた。高さに目が眩みそうになるが、リオは前を見据えた。下を見下ろすことは、もうできない。下を見下ろせば、恐怖に呑まれてしまう。


外壁を駆け上がるリオの前には、外壁の表面が続いている。浮遊鉱石が埋め込まれた壁面は、星空のように見えた。その一つ一つが、微かに光を放ち、リオの進路を照らしている。しかし、その光は、冷たく、どこか不気味な輝きを放っている。


リオは、外壁の表面を見つめながら、駆け上がっていった。共鳴の力が、リオの体を上へと引き上げる。重力が逆転したような感覚。しかし、それは、快感ではなかった。体が浮き上がる感覚は、不安と恐怖を呼び起こす。


時間が経つにつれて、リオの体は、疲れを感じ始めていた。共鳴の力が、リオの体を上へと引き上げるが、その力は、リオの体力を奪っていく。手のひらに宿る呪詛の熱が、共鳴の振動と混ざり合い、リオの体を震わせる。その震えは、リオの心を不安にさせる。


「僕は……人を殺したくない」


リオは心の中で呟いた。だが、それでも進まなければならない。衛兵を切り伏せ、議会を拘束する。それは、リオが望んだことではなかった。しかし、国家のために力を貸すと約束した以上、その約束を果たさなければならない。


リオは、その言葉を繰り返しながら、外壁を駆け上がっていった。


外壁を駆け上がるリオの前には、外壁の上端が見えてきた。あと少しで、外壁の上に到達する。リオは、その上端を見つめながら、最後の力を振り絞った。共鳴の力が、リオの体を上へと引き上げ、やがて、リオは外壁の上端に近づいていく。


外壁の上には、衛兵の姿が見える。


彼らは、リオの接近に気づいていない。まだ、包囲網の構築に気づいていないのだ。衛兵たちは、外壁の上を巡回しており、その姿は、小さく見えた。しかし、リオが近づくにつれて、その姿は、次第に大きくなっていく。


衛兵たちは、若い男たちだった。おそらく、まだ二十歳にも満たない。その目には、警戒の色が浮かんでいた。彼らは、外壁の上を巡回しながら、周囲を見回している。しかし、リオの接近には、まだ気づいていない。


リオは、その姿を見つめながら、外壁を駆け上がっていった。


共鳴の力が、リオの体を上へと引き上げ、やがて、リオは外壁の上端に到達した。


外壁の上には、衛兵の姿が見える。彼らは、リオの接近に気づいていない。まだ、包囲網の構築に気づいていないのだ。リオは、その姿を見つめながら、剣を握りしめた。手のひらに走る熱を感じながら。次の瞬間、リオは衛兵たちに近づいていく。

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