6-2. 陽動と侵入
「敵襲だ!」
「雷の魔刀使いがいる。迎撃せよ!」
敵兵たちの声が、谷の入り口に響き渡った。声は、リオの鼓膜を震わせる。敵兵たちが、テオの方向へと駆け出した。足音は、石を踏みしめる音だった。
その隙に、リオたちは霧に紛れて斜面を降下した。足元は滑りやすく、一歩間違えれば谷底に転落してしまう。リオは慎重に、一歩ずつ降下していく。
テオは、谷の入り口で雷の魔刀を振り続けていた。青白い電光が、闇を切り裂き、敵兵たちの注意を引きつけている。電光が、敵兵たちの顔を照らし、その表情には恐怖の色が浮かんでいた。
敵兵たちは、テオを包囲しようとしていたが、テオは巧みに動き回り敵の注意を引きつけ続けていた。テオの動きは機械的だった。だがその目にはわずかな興奮の色が浮かんでいた。感情抑制薬の影響下でも、戦闘時の興奮は完全には抑えられない。
「リオ、換気坑は前方だ。コレットが封鎖術式を解析する」
ゼロが小声で指示を出した。声は、霧に包まれ、かき消された。リオたちは、斜面を慎重に降下していく。足元は滑りやすく、一歩間違えれば谷底に転落してしまう。
コレットは氷の魔刀を抜き、換気坑の位置を確認している。換気坑は、崖の中腹に開いた小さな穴だった。直径は、せいぜい一メートルほど。その周りには、封鎖術式が張り巡らされている。術式は、青白い光を放っており、換気坑の周りを螺旋状に囲んでいる。
「結界の核は、左側の石柱だ。そこを凍らせれば、擬似的な欠陥が生まれる」
コレットが報告した。声は、冷静だった。だが、その時、コレットの眉がわずかに動いた。感情抑制薬の影響下でも、時折人間性の片鱗が見える。ゼロは頷き、コレットに指示を出した。
「了解した。凍結を開始する」
コレットは氷の魔刀を振り、石柱に霜を走らせた。霜が、石柱を覆い始めた。音は、静かだった。だが、リオの耳には、その音が大きく響いた。
結界は、氷の結晶で覆われ始めた。コレットは慎重に術式を解析し、結界の弱点を探っている。その目は、虚空を見つめているようだった。
「結界の構造は、三重の螺旋だ。外側から順に凍らせれば、内部の核に到達できる」
コレットが説明した。その声は、冷静だった。ゼロは頷き、コレットに続行を指示した。
コレットは、さらに氷を送り込んだ。結界に、微かな亀裂が入った。音は、静かだった。だが、リオの耳には、その音が大きく響いた。
コレットは慎重に、亀裂を広げていく。結界は、氷の結晶で覆われ、その強度が徐々に低下していく。術式の光は、徐々に弱くなっていく。
「結界に欠陥が生まれた。侵入可能だ」
コレットが報告した。その声は、冷静だった。ゼロは頷き、リオに指示を出した。
「リオ、先頭で進め。狭い坑道だ。気をつけろ」
ゼロの警告が、リオの耳に届いた。その声には、心配の色が浮かんでいた。リオは頷き、隊の先頭で狭い坑道を進んでいく。
坑道は、黒曜石を採掘するために掘られたものだった。壁は黒く、所々に鉱石が露出している。鉱石は、微かな光を放っており、坑道を薄暗く照らしている。
天井は低く、リオの身長では頭を打ちそうになるほど低い。高さは、せいぜい百七十センチほど。リオは身をかがめて進まなければならない。壁が黒曜石で、触れると冷たく、鉱石の粉が舞っている。空気は重く、鉱石の粉が舞っている。その粉が、リオの喉に絡みつく。
リオは、手のひらに走る熱を感じながら、慎重に進んでいく。前方に、何かが動いている気配を感じた。
「リオ、前方に敵の気配がある。警戒しろ」
ゼロが小声で警告した。声は、坑道の壁にぶつかり、かき消された。リオは頷き、剣を握りしめた。
前方に、明かりが見えた。敵兵の姿が見えた。一人の兵士が、坑道を警戒しながら歩いている。兵士は、ランタンを手に持ち、周囲を見回している。ランタンの光が、坑道を照らし、その光が、兵士の顔を照らしている。
兵士は、若い兵士だった。その目には、不安の色が浮かんでいた。兵士は、故郷に家族を残しており、戦争が終われば、家族の元に帰るつもりだった。
リオは息を殺し、壁に身を寄せた。兵士が通り過ぎるのを待つ。だが、兵士は立ち止まり、リオの方向を見た。
「誰だ?」
兵士が声をかけた。声は、坑道の壁にぶつかり、かき消された。リオは、もう隠れていられないと判断した。息を殺し、彼の背後に回り込んだ。
リオは心の中で謝罪の言葉を繰り返し、剣を抜いた。一瞬の隙を突いて、リオの剣が兵士の腕に触れた。兵士は、その瞬間に何かが起きたことに気づき、振り返った。
「何だ、お前は……」
兵士の声は、坑道の壁にぶつかり、かき消された。兵士の腕には、浅い切り傷がついていた。その傷は、リオの力によって治らぬものとなっている。
「この傷……治らない……」
兵士は、自分の腕を見て驚いた。傷口からは、血が滲み出ている。傷は、通常の赤色ではなく、少し黒ずんでいる。その傷は、治らない。
兵士は驚いて振り返ったが、リオは既に次の敵へと向かっていた。傷を負った兵士は、戦場を離脱しようとした。だが、その傷は治らない。後方で、治療不能の患者として扱われることになる。
「リオ、坑道内に敵がいる。慎重に進め」
ゼロが警告した。声には、心配の色が浮かんでいた。リオは頷き、さらに慎重に進んでいく。
坑道の奥には、何が待っているのか。リオは、手のひらに走る熱を感じながら、闇の中を進む。前方に、敵兵の気配がする。リオは、剣の柄を握り直した。その瞬間、指先に走る熱が強まる。
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