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魔法が廃れた時代の死神  作者: モノカキ
第五章

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5-3. 戦果と内部崩壊

サイレントブルーム作戦の成功により、王国軍は前線を押し上げた。魔力塔の崩壊で敵の補給線が寸断され、ネヴァラ公国は後退を余儀なくされた。


王都では、リオの戦果が大きく報じられた。新聞には「夜霧の死神、敵を切り裂く」という見出しが躍り、リオは英雄として称賛された。


王都の大広間で、戦果報告会が開かれた。広間は、豪華な装飾で彩られており、天井からは、巨大なシャンデリアが吊り下げられていた。天井の高さは八メートル以上あり、その高さがリオを小さく見せた。シャンデリアの光が、広間全体を照らしていた。その光が、リオの目を焼きつける。


会場には、多くの貴族や将軍が集まっていた。彼らは、リオを見る目が、熱狂的だった。リオは壇上に立ち、賞賛の言葉を浴びていた。


「リオ・アーデン、君の活躍は素晴らしい。王国の英雄だ」


レオナルド国王は、戦果報告会でリオを称賛した。表向きは平和主義者だが、裏では軍拡を推進する国王の言葉には、リオを「兵器」として利用する意図が透けて見えた。リオは、その言葉を聞いて、背筋を伸ばした。


国王の目には、リオを「兵器」として見る冷たさが浮かんでいた。だが、その表情は笑顔だった。リオは背筋を伸ばした。肩の力が抜け、視線が前に向く。それは、リオにとって、恐ろしいことだった。


「リオ・アーデンは、王国の希望だ。彼の力で、戦争に勝てる」


貴族の一人が、そう言った。その声が、リオの耳の奥に突き刺さる。


「夜霧の死神――素晴らしい異名だ」


別の貴族が、そう言った。その声が、リオの背筋を冷たく走る。


会場からは、拍手と称賛の声が響いていた。その音が、リオの耳の奥に突き刺さる。リオは無意識に肩をすくめた。胸が、押しつぶされそうになる。


リオは心の中で呟いた。だが、その言葉は、誰にも聞こえなかった。リオは手を握りしめた。指先に力が入り、手のひらに爪が食い込む。


「リオ・アーデン、君は、王国の英雄だ。その力を、これからも使ってほしい」


レオナルド国王は、そう言った。その言葉には、リオを「兵器」として使う意図が、はっきりと浮かんでいた。リオは、その言葉を聞いて、背筋を伸ばした。


「はい……分かりました」


リオは、深々と頭を下げた。だが、胸の奥で、違和感が渦を巻いている。それは、まだ形にならない不安だった。


英雄――それは、リオが望んだことではない。リオは人を殺している。それは、英雄と呼べる行為ではない。リオは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。その呼吸が、体の奥まで届かない。


戦果報告会が終わると、リオは前線基地へと戻った。馬車に乗りながら、リオは窓の外を見つめた。王都の街並みが、遠くに小さく見えていた。


エレナは、戦果報告会の後、研究室に戻った。記録用の魔導装置を机に置き、データを整理し始めた。ペンを走らせる手が、わずかに震えている。これは科学的発見だ。リオの力のデータは、科学史に残るものだ。だが、その代償がリオという一人の人間の苦しみだという事実が、胸の奥で重くのしかかる。エレナは目を閉じた。科学のため、国家のため。それでも、リオの目に映った恐怖が、頭から離れない。エレナは、この実験を続けるべきなのだろうか。


前線基地に戻ると、リオは仮設宿舎へと向かった。基地では、兵士たちがリオを見る目が変わっていた。以前は、リオを「落ちこぼれ」として見下していた。だが、今は違う。


「リオ・アーデンだ……夜霧の死神……」


兵士の一人が、そう呟いた。その声が、リオの耳の奥に突き刺さる。


「あいつに近づくな。呪われる」


別の兵士が、そう言った。その声が、リオの背筋を冷たく走る。


「同じテントには泊まれない」


別の兵士が、そう言った。その声が、リオの胸骨を内側から押す。


兵士たちは、リオを恐れていた。リオが近づくと、兵士たちは距離を取った。リオが同じテントに入ろうとすると、兵士たちは別のテントへと移動した。


「リオ、気にするな。時間が経てば、慣れる。それに、俺たちもいる」


ゼロがリオの肩を叩いた。その手の温かさが、指先から腕へと伝わる。リオは、少しだけ息を楽に吸えた。


その時、コレットが無意識にリオの肩を軽く叩いた。感情抑制薬の影響下でも、時折人間性の片鱗が見える。リオは、その一瞬の温かさに、少しだけ胸が軽くなった。


コレットの目には、わずかな感情の色が浮かんでいた。だが、それは、すぐに消えた。感情抑制薬の影響で、感情は、すぐに消えてしまうのだ。リオは、その一瞬の温かさを、手のひらに握りしめた。コレットは、無意識にリオを支えようとしていた。その一瞬の人間性が、リオにとって、小さな救いだった。


「でも、僕は……英雄なんかじゃない」

「そうだ。お前は英雄じゃない。お前は人間だ」


ゼロの言葉が、リオの頭蓋骨を震わせる。リオは、その言葉に、少しだけ胸が軽くなった。


「王都では……英雄として称賛、いえ、担ぎ上げられています」

「それは王都の話だ。ここは前線だ。お前はここでは恐れられている」

「恐れられている……はは、真逆ですね」

「お前の力は恐ろしい。治らない傷――それは、誰もが恐れるものだ。だがそうやって悩めるからこそ心があるとわかる。お前はまだ人間だ」


ゼロはリオの肩を叩いた。


ゼロの言葉が、リオの鼓膜を揺らす。リオは、その言葉に、少しだけ胸が軽くなった。リオは剣の柄を握り直した。その感触が、手のひらに染み込む。


リオはひどく孤独を感じていた。王都では英雄として称賛され、前線では恐れられている。それは、リオが望んだことではない。リオは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。その呼吸が、体の奥まで届かない。胸が、押しつぶされそうになる。


夜、仮設宿舎に戻ると、リオは一人でベッドに横たわった。他の兵士たちは、リオと同じテントに入ろうとしない。


テントの中は、静かだった。リオは、その静けさに、孤独を感じた。リオは手のひらを見つめた。その熱が、少しだけ和らいだ。でも、その温かさが、胸まで届かない。


翌朝、リオは訓練場へと向かった。訓練場では、兵士たちがリオを見る目が冷たかった。


「リオ、訓練を続けろ。気にするな」


ゼロがリオに声をかけた。その声には、心配の色が浮かんでいた。


「やっぱり僕は……みんなに恐れられているんですね」

「それは仕方ない。お前の力が、恐ろしいものだからだ」

「でも、僕は……人を殺したくないんです」


ゼロはリオの言葉に、何も言えなかった。だが、その目には、リオを支えたいという気持ちがはっきりと浮かんでいた。リオは、その目を見て、少しだけ胸が軽くなった。


訓練が終わると、リオは宿舎へと戻った。机の上には、シルヴァからの手紙が置かれていた。リオは封を切り、手紙を広げた。


「リオ、あなたが英雄として称賛されていることを聞いたわ。でも、リオ、あなたは英雄じゃない。あなたは人間よ。人を殺すことを苦しむ、普通の人間よ。


シルヴァより」


その手紙を読み終えた時、リオの目から涙が溢れた。涙が、頬を伝う。


「そうだ……僕は英雄なんかじゃない、人を殺したくなんてない」


リオは手紙を握りしめ、目を閉じた。王都では英雄として称賛され、前線では恐れられている。それは、リオが望んだことではない。リオは手のひらを見つめた。その熱が、少しだけ和らいだ。


夜、リオは目を閉じ、敵兵たちの顔を思い浮かべた。マルクスとグレゴリーの顔が、リオの頭に浮かんだ。彼らは、リオに何もしていない。ただ、敵国に生まれただけだ。


リオは手のひらを見つめた。熱を感じる。それは、呪詛の力だ。その力は、リオの体に、深く刻まれていた。その熱が、息をするたびに強まり、胸を締め付ける。


「でも、僕は……人間だ。兵器じゃない」


リオは心の中で呟いた。だが、周りはリオを兵器として見ている。英雄として称賛し、恐れている。それは、リオが望んだことではない。


リオは目を閉じ、シルヴァの手紙を思い出した。シルヴァの言葉が、指先から腕へと伝わる。リオは、少しだけ息を楽に吸えた。


眠りにつこうとしたが、眠れなかった。遠く離れた敵が、自分の傷で死に続けている。それは、リオのせいだ。リオは目を閉じ、敵兵たちの顔を思い浮かべた。マルクスとグレゴリーの顔が、頭に浮かぶ。彼らは、まだ生きている。でも、いつか死ぬ。


リオは手のひらを見つめた。その熱が、少しだけ和らいだ。でも、その温かさが、胸の奥まで届かない。リオは、この力を使い続ければ、どれだけの人が死ぬのだろう。その答えは、まだ見つからない。だが、一つだけ分かることがある。この力を使い続ければ、リオ自身も、いずれ人間ではなくなる。その時、ゼロは本当に止めてくれるのだろうか。

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