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魔法が廃れた時代の死神  作者: モノカキ
第三章

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3-4. 無視された警告

暗殺未遂から数日後、敵国連合の司令部では緊急会議が開かれていた。ノワール・デス将軍は長い机の前に立ち、壁に貼られた地図を指し示している。


「暗殺計画は失敗した。だが、リオ・アーデンは依然として脅威だ。彼を放置すれば、戦線が崩壊する」

「では、どうすればいいのか?」

「王国に警告を送る。彼らに真実を伝え、リオ・アーデンの使用を止めさせる」


その言葉に、会議室がざわめいた。敵国に警告を送る――それは、降伏に等しい行為だ。だが、ノワールは動じない。


「これは戦争の問題ではない。世界の存続に関わる問題だ。だから、警告を送る」


会議は長く続き、やがて全員が同意した。ノワールは書記官に命じ、マグノリア王国への警告文を作成させた。


「異常な呪詛魔法の使い手がいる。これは旧文明の魔術だ。使い続ければ、世界が滅びる。リオ・アーデンの使用を止めよ。さもなければ、我々は全力で彼を殺す」


その警告文は、使節団に託された。使節団は白旗を掲げ、国境を越えてマグノリア王国へ向かった。


一方、マグノリア王国の王都では、レオナルド国王が王座に座り、使節団からの警告文を読んでいた。ヴィクトル総司令が横に立ち、エレナ・ブライトが資料を広げている。


「敵国連合からの警告……『異常な呪詛魔法の使い手がいる。これは旧文明の魔術だ』……ふん、デマだ」


レオナルドは警告文を机に投げ捨て、冷笑を浮かべた。


「敵はリオ・アーデンの力を恐れている。だから、デマを流して使用を止めさせようとしている。これは情報戦だ」

「でも、陛下。リオ・アーデンの力は確かに異常です。治癒魔法が効かない傷――それは、魔刀の体系には存在しません」


エレナが資料を差し出し、レオナルドに見せた。資料には、治らぬ傷の詳細な記録が記されている。


「これは旧文明の魔術の可能性があります。もし本当なら、使い続けることで何かが起きるかもしれません」

「だから何だ? リオ・アーデンは王国の希望だ。彼の力で、戦争に勝てる。それで十分だ」


レオナルドは資料を無視し、ヴィクトルに目を向けた。


「ヴィクトル、使節団を追い返せ。警告は無視する。リオ・アーデンの使用は続ける」

「了解しました、陛下」


ヴィクトルは深々と頭を下げ、使節団を追い返すよう指示を出した。エレナは資料を握りしめ、何か言おうとしたが、言葉を飲み込んだ。


「エレナ、リオ・アーデンの研究を続けろ。彼の力を最大限に引き出す方法を見つけろ」

「でも、陛下……」

「いいか、エレナ。これは戦争だ。勝つことがすべてだ。リオ・アーデンの力で勝てるなら、それでいい。世界が滅びるだの、呪詛だの、そんなことは関係ない」


レオナルドの言葉は冷たく、エレナの胸に突き刺さる。彼女は資料を折り、深々と頭を下げた。


「了解しました、陛下」


使節団は追い返され、警告は無視された。だが、ノワールは諦めなかった。彼は新たな計画を立て、リオ・アーデンの暗殺を決意した。


「王国は警告を無視した。ならば、我々が直接行動する。リオ・アーデンを殺す。それが、世界を救う唯一の方法だ」


一方、王国軍の前線基地では、リオ・アーデンが訓練を続けていた。彼は警告のことを知らない。王国は警告を無視し、彼に真実を伝えていない。


「リオ、調子はどうだ?」


ゼロが訓練場に現れ、リオの肩を叩いた。


「ええ、でも……何か変です。最近、敵の動きがおかしい」

「敵はなぜかお前を恐れている。だから、変な動きをする。しかし、それは好都合じゃないか。生き残る可能性が上がる」


ゼロの言葉は優しく、リオの不安を和らげようとしている。だが、リオは何かがおかしいと感じている。敵の動きは、単なる恐怖ではない。何か、もっと深刻な理由がある。


「ゼロ、僕の力って……本当に大丈夫なんですか?」

「何でも言うが、まずは戦場で生き残ることがすべてだ。特に今は狙われている。力のことより、命を心配しろ」


ゼロの言葉は優しく、リオの胸に染み込む。だが、それでも不安は消えない。リオは剣を握りしめ、それでも訓練を続けた。


王国は警告を無視した。それは、リオの力が戦争に必要だからだ。だが、リオには見えていない。自分の力が、どれほど恐ろしいものなのか。そして、その力が、やがて自分を「兵器」として使われる存在へと変えていくこと。


訓練を終え、リオは宿舎に戻った。ゼロの言葉が頭の中で響く。「お前は人間だ。それで十分だ」。その言葉を頼りに、リオは剣を鞘に収めた。真実は見えていないが、何かがおかしいという感覚だけは確かにある。


窓の外では、夜が深まっていく。星が雲に隠れ、闇が基地を包み込む。その静けさの中で、リオはシルヴァからの手紙を再び読み返した。彼女の文字が、暗闇の中で微かに光っているように感じられた。その光を胸に、リオは明日を迎える準備をした。

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