3-3. リオへの襲撃
暗殺計画が立てられてから数日後、僕は前線の補給基地で任務を続けていた。その日も、物資の運搬や負傷兵の後送を手伝っていた。
「リオ、外に出ろ。補給物資の確認を手伝ってくれ」
ゼロが声をかけてきた。僕は頷き、天幕を出た。外は冷たく、吐息が白く見える。補給物資の山が並び、兵士たちが忙しなく動き回っている。
そのとき、僕は何か違和感を感じた。周囲の空気が、急に冷たくなった。そして、遠くの森から、黒い人影が見えた。
「リオ、気をつけろ」
ゼロが警告を発した。だが、そのとき既に遅かった。
森の影から、黒い人影が飛び出してきた。彼らは仮面を被り、鎖を手にしている。鎖の先には刃が光り、僕を目がけて襲いかかる。
「リオ、後ろに下がれ!」
ゼロが僕を突き飛ばし、剣を抜いた。だが、鎖は彼を弾き飛ばし、僕へ向かってくる。僕は剣を抜き、鎖を弾こうとした。だが、鎖は柔軟に動き、僕の剣を絡め取る。
「なぜ僕を?」
「お前は死神因子だ。呪詛の使い手だ。だから、殺す」
その言葉に、僕は混乱した。死神因子? 呪詛の使い手? 僕は何もしていない。ただ、補助部隊として任務を続けていただけだ。
「僕は何もしていません!」
「嘘だ。お前が切った兵士が、すべて治らぬ傷で死んでいる。お前の力は呪詛だ」
その言葉に、体が凍りつく。僕が切った兵士が、すべて治らぬ傷で死んでいる? それは、本当なのか。僕は剣を握りしめ、それでも戦おうとした。だが、鎖は増え続け、やがて僕を包み込む。
「リオ、逃げろ!」
ゼロが叫ぶ。だが、僕は動けない。鎖に絡め取られ、体が重くなる。そのとき、遠くから王国軍の援軍が駆けつけてきた。兵士たちが武器を構え、仮面を被った敵を包囲する。
「リオ、大丈夫か?」
「ええ、でも……なぜ僕を狙うんですか?」
「お前は脅威だ。敵にとって、最大の脅威だ。だから、殺そうとする」
ゼロの言葉は重く、胸に響く。僕は剣を握りしめ、それでも戦おうとした。だが、仮面を被った敵は既に森の中へ消えている。彼らは目的を果たせなかったが、警告は残した。
「次は、もっと強力な手段を使う。覚悟しろ」
その言葉が、風に乗って聞こえてくる。僕は剣を鞘に収め、基地へ戻った。だが、胸の重さは消えない。
「ゼロ、僕は本当に何もしていません。ただ、補助部隊として任務を続けていただけです」
「分かっている。お前は悪くない」
「でも、敵は僕を殺そうとしています。なぜですか?」
ゼロは少し考えてから、言った。
「お前は何かおかしいと感じていないか?」
「おかしい?」
「ああ。最近、敵兵が治らない傷で死んでいるという噂を聞いただろう。もしかしたら、それと関係があるかもしれない」
その言葉に、僕は少し不安になった。確かに、最近、敵兵が治らない傷で死んでいるという噂を聞いた。そして、あの敵兵も同じ症状だった。もしかしたら、何か関係があるかもしれない。
だが、僕には分からない。僕はただ、補助部隊としての任務を続けていただけだ。特別な力など、持っていない。そう信じようとした。
「何かおかしい……」
僕はそう呟いた。ゼロは僕の肩を叩き、優しく言った。
「大丈夫だ。お前は人間だ。それで十分だ」
その言葉に、少しだけ安心した。だが、それでも不安は消えない。敵は僕を殺そうとしている。それは、戦争のためだけではない。何か、もっと深刻な理由がある。
僕は「何かおかしい」と感じ始めていた。だが、まだ真実は分からない。




