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タイトル未定2025/11/16 11:51

「おい、かめ。勝負しようぜ!」


平日の昼下がり、ファミレスのドリンクバー前。

転職活動中の白井翔太(28)は、学生時代の同級生・亀田浩平(28)に突然そう言い放った。


白井は元営業マン。スーツはブランド物、時計もピカピカ。だが、最近会社を辞めた。理由は「俺はもっと自由に生きるタイプだから」。

一方の亀田は市役所勤務。地味だが安定。昼はいつも手作り弁当、趣味は図書館で読書。SNSもやらず、毎晩きっちり11時就寝。


「勝負って何の話だよ」

「人生だよ、人生!半年で俺が年収600万超えたら、俺の勝ち!」

「またそういう無茶を……」

「俺は才能があるんだ。お前みたいにコツコツやってる奴には負けねぇ」


翔太はドヤ顔で言い放った。

だが、現実はそう甘くなかった。

求人サイトを開くたび、条件の良い仕事には応募者殺到。

オンライン面接では「即戦力が欲しいんです」と断られ、気づけば家で昼ビールを飲む日々。


一方の亀田は、いつも通り淡々と過ごしていた。

朝はパンとコーヒー。

昼は弁当。卵焼き、ブロッコリー、そして冷凍シュウマイ。

夜はニュースを見ながら家計簿をつけ、週末はジョギング。

変わらない日常。でも、それが崩れない強さになっていた。


――三ヶ月後。


「おい、かめ。久しぶりだな!」

翔太は髪を無理にセットし、カフェで笑った。

「俺、今フリーランスだ。自由に生きてる」

「へぇ。何やってるの?」

「動画編集とか、デザインとか……いろいろだよ」

(実際はクラウドワークスで数件受注しただけだった)


「でも最近、金欠でさ。親の車借りてUberやってる」

「……うん、立派な労働だよ」

「なにその言い方!」


翔太はむきになった。

「いいか、俺は爆発力があるんだよ。うさぎなんだ!」

「うん。でもうさぎって、途中で昼寝して負けたろ」

「それ昔話の話だろ!」


その夜、翔太は珍しく本気を出した。

履歴書を10社分書き、深夜まで求人を漁った。

しかし翌朝、寝不足で二度寝。

昼過ぎに目を覚まし、スマホを見ると、亀田からのLINEが届いていた。


《今日も走ってきた。5キロ完走。汗が気持ちいい!》


「……マジかよ」

翔太は布団の中で呟いた。

「なんでこいつ、いつも元気なんだ」


――半年後。


公園で二人は再会した。

翔太はついに就職を決めた。物流系の中小企業だ。

「時給じゃねぇ。社員だぞ、社員!」

「おめでとう。続けられるといいな」

「お前さぁ、なんか上からじゃね?」

「そんなつもりないよ。ただ……焦らないほうが、意外とうまくいくもんだ」


翔太は鼻を鳴らした。

「俺はうさぎだ。走るのが性分なんだ」

「でも、走るのをやめたら負けだよ」

「……うるせぇ。今度マラソンでも出て勝負しようぜ」


数週間後、二人は市民マラソンにエントリーした。

翔太はスタート直後に猛ダッシュ。

沿道から拍手が起こる。

「見ろよ!俺が本気出せばこんなもん――」


五キロ地点。翔太は息が切れ、足が重くなった。

給水所の横で立ち止まる。

そこへ、ゆっくり、一定のリズムで走る亀田の姿が現れた。


「おい、かめぇ……!」

「焦るなよ、うさぎ。ゴールは逃げない」


翔太は苦笑いした。

「……やっぱお前、地味に強ぇな」

「地味でいいさ。地味は裏切らない」


亀田はそう言って、穏やかにゴールへ向かった。

翔太はその背中を見つめながら、思わず笑った。


「次は昼寝なしで勝負だ」


――現代のうさぎとかめ。

スピードよりも、継続のほうが勝つ。

そんな単純な真実を、翔太は少しだけ理解した気がした。

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