第15話 〝三度目の正直〟
意図せず「はあ……」と溜め息をついてしまう。
「俺、呪われてるかもしれない」
「……急にどうしたんですか、ナギサさん」
冒険者ギルドにて。
眼鏡をかけた青年――カルフ・ガリアルが、俺にそんなことを聞いてくる。
「だってさ、二連続で依頼中に異常事態が起きたんだぞ? 絶対何か憑いてるよな……」
クシェラと一緒に受けた依頼では変な闖入者が現れるし、その次に受けた依頼では依頼人に石像にされかけるし、本当に運が悪い。
ちなみに、エルヴィスは憲兵に引き渡した。冒険者ギルドにも報告をした。感謝されたのはいいが、依頼が無効になってしまったため、お金がない。生きていけない。頼むから、普通の依頼を受けさせてくれ。
「お憑かれ様っス、兄貴ー」
「追い討ちかけてないか、お前」
他意があるのかわからないのが、マルコスの怖いところだ。
「とりあえず今日受ける依頼に関しては、俺の意見を聞かないでくれ」
「しょうがない人ですね……団長、アンバー、依頼書を見に行きましょう」
カルフの言に、マルコスたちは同意すると、掲示板の方へと歩いていった。
§
今回俺たちが引き受けたのは、魔犬アオワーンの群れを討伐する依頼だ。なんでも最近ナジュラム村で、家畜や住民が魔犬に襲われる事件が頻発しているらしい。
俺たちは依頼人である村長の話を聞くと、アオワーンの巣穴を探すために近くの森へと足を踏み入れた。
「長丁場になりそうですね……」
「そうですか? 土手の斜面や崖などを重点的に探せば、すぐに見つかると思いますけど」
「ナギサさん……全く関係ないですけど、俺にだけ敬語使うのやめてくれませんか……。それ、地味に傷つくやつランキング第一位ですよ……」
「そ、そうか。悪かった、アンバー」
「わかってくれたなら、いいです……」
アンバーとそんな会話をしていると、前方の茂みから二匹のアオワーンが現れた。
「巣穴に案内してもらえないですかね……」
「無理ですよ」
「無理だろ」
「無理だな」
アオーンと遠吠えをする魔犬。
どうやら、仲間を呼んだようだ。
剣の柄に手を添える。
前にいるマルコスが背中に手を伸ばし、戦斧の柄を握り締める。
刹那、二匹の魔犬がマルコスに飛びかかった。たどり着く前に、一匹は風の刃で体を切断される。もう一匹は、戦斧で脳天をかち割られた。
両方とも、即死といったところだろうか。紫色の液体が草地を染めていく。それに比例するかのように、森の音がざわざわと騒がしくなっていった。
「……来ますね」
「ああ」
カルフの言葉に同意しながら、俺は剣を鞘から引き抜く。直後、俺たちを囲むように八匹もの魔犬が現れた。
「一人、二匹ずつだな」
「森の中で火魔術は使えないので、ナギサさん護ってください……」
「お前、今までどうしてたんだよ……」
しかも、それ暗にアオワーン四匹倒せって言ってないか?
「え? カルフに消火してもらってました」
「なら今日も頼め、よッ!」
言いながら、魔犬の首を斬り落とす。はじめに襲ってきた一体は殺せたが、俺の命を狙っている三匹のアオワーンはまだ健在だ。
次の瞬間、三匹の魔犬の体が跳ねた。俺の喉元を、左腕を、右脚を切り裂こうと三匹の魔犬が一斉に吠える。
喉元を狙ってきた個体を斬り殺す。
あと二体――! だが、俺の実力では剣の振りが間に合わない。
イドラを各部に発動する。俺の体に噛みついた二匹の魔犬の牙が折れた。当たり前だ。今この体は、減速によって硬くなっているのだから。
仕切り直そうと、二匹の魔犬が俺の体から離れる。その隙だらけの体に刃を振るった。続けて、血と脂で汚れた剣を残りの一匹に突き立てる。咆哮と共に、斬り口から紫が溢れた。
横目で見ると、マルコスとカルフの周りに四匹のアオワーンの死体が転がっていた。俺が討伐したアオワーンと合わせて、八匹。襲ってきたヤツらは、全匹殺せたようだ。
「ありがとうございます……ナギサさん」
「別に礼なんていいよ、アオワーンくらいなら」
地面に落ちている魔犬の牙を拾いながら、俺はアンバーにそう答えた。
少し休憩して、魔犬の巣穴を探す作業に戻る。……こういう仕事は千里眼があれば、すぐに終わるんだろうな。実際、クシェラはロワボヨンボの死体もすぐに見つけていたし。
そんなことを考えながら、森の中を歩く。二時間ほどしてようやく魔犬の巣穴を発見し、俺たちはアオワーンの群れを掃討することに成功した。
引き抜いた魔犬の牙を見せながら、そのことを村長に伝える。礼を言われ、俺たちはナジュラム村を後にした。
§
「何事もなくて良かったですね、ナギサさん」
ギルドに併設されている酒場の席で、カルフが俺にそう話しかけてきた。
「ああ、普通の依頼を受けられて良かったよ」
「あの話、フリじゃなかったんですね……」
そう残念そうに言うアンバー。
俺がなんと言い返そうか迷っていると、ギルドに依頼完了の報告をしていたマルコスが戻ってきた。
それぞれ、マルコスから銀貨二枚の報酬を貰う。すると、
「ナギサさん……あげますよ」
そう言って、アンバーが銀貨二枚を差し出してくる。
「え? でも、それお前の取り分だろ」
「今回僕は何もしてないので、どうか貰ってください……」
巣穴はちゃんと探してたから、そんなことはないと思うんだけど……
「いいんじゃないですか? アンバー今日やる気なかったみたいなので」
「…………じゃあ、ありがたく」
カルフの言葉に背中を押され、俺はアンバーから銀貨二枚を受け取った。
それから、たわいもない話を三十分ぐらいした後だろうか。マルコスが「それで、兄貴」と前置きし――、
「『マルコス冒険団』に本加入するかどうか、決めてくれましたか?」
「――――」
俺は、




