↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
減速の冒険者  作者: 加ヶ谷優壮
Prologue

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/51

    〝脳は痛みを感じない〟


 脳は痛みを感じない。


 この事実を知った時、俺はとても嬉しかったことを覚えている。


 だって、心は脳が作り出したものだから。

 その二つが因果関係にあるのなら、脳と同じように心の痛みも、いつかは感じなくなるんじゃないか――って思えたから。


「ああ、でも……」


 独りごちる。


「これは――別の世界の知識か」


 衆妙(しゅうみょう)の門と呼ばれる、異世界とこの世界を繋ぐ扉。俺が前述した知識は、その異世界から流入した本に書いてあったものだ。


 魂というものが存在するこの世界では、心と脳の因果関係は成り立たないのかもしれない。


「ぐぬぬ……」


 俺の喜びを返してほしい。

 そんなことを思っていると、前方から「ナギサー」と声が飛んできた。


「何をぼーっとしてる。気を引き締めろよ。この依頼を無事に終えるには、お前のチカラも必要なんだからな」


「ああ、任せとけ!」


 そう言って、俺は金色の髪をした少年――ユアン・グラネルドの隣に並んだ。


「――ふふっ」


 そう笑った瞬間、ユアンが俺から距離を取った。


「どうした?」


「その女みたいな笑い方をやめてくれねぇか? なんか、こう……背筋が痛む」


「ゾクゾクを通り越してるのか……」


 ユアンの発言が真ならば、対人戦の時に有効かもしれない。


「わかった、気をつけるよ」


 別に笑い方なんてどうでもいいしな。

 それに、男らしいと言われてるようで少し嬉しかった。ガキの頃は、女と間違えられることが多かったし……


「ナギサ、お前本当に〝天の宝玉〟はいらねぇのか?」


 家に元々あるものなんだ、遠慮なんてしなくていい――とユアンが続ける。


「いらないよ。もしショボい能力を手にしちゃったら、やる気が落ちるだろ」


「気持ちはわかるが、お前なら〝劇場のイドラ〟を手にできそうだけどな」


 劇場のイドラ。

 四つに分類される超常能力(イドラ)のうち、最も強い系統とされているものだ。


「そうか? お前もそう思うか?」


「そんなに自信あるなら使えよ」


「嫌だ」


「……寝てる間に食わしとく」


「食ったら、イドラを得られないだろ!」


 天の宝玉の無駄遣いにも程がある。


「ユアンは――」


 本当は劇場のイドラを手にしたかったのか、と聞きそうになって踏み止まる。

 ユアンの性格だ。

 答えなんてわかりきっている。

 わざわざ傷口に、塩を塗り込む必要はないだろう。


「どうした? ナギサ」


「ああ、いや……絶対Sランク冒険者になろうな、ユアン!」


「当たり前のことを言うんじゃねぇよ」


 ユアンはぶっきらぼうにそう言うと、歩調を速めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。