マッスル都市構想
もう話したかもしれませんが、私は運動音痴であります。ボールを、投げてはひょろひょろとあらぬ方へ飛んでいき、蹴ったつもりが空振り、飛んできたものは受け止められた記憶がありません。徒競走はいつもビリで、持久走は周回遅れ、鬼ごっこでは疲れた鬼が休憩代わりに私をタッチし一度として逃げ切ったことがない。相撲、腕相撲、手押し相撲の三種相撲で勝てたこともありません。
ある調査では近年の子供たちの体力が、統計上減少傾向にあるそうであります。色々原因はあるでしょうが、一番は運動不足でありましょう。公園が減り、広場も土地開発によって無くなり、子供たちは外で遊ぶより親の目が届く室内遊びに慣れてしまいました。
昔は今ほど娯楽に種類がなかったようで、祖父の子供の頃の遊びは、野球かサッカー、バスケなどで、もう少し年齢を重ねるとゲームセンターという遊戯施設で遊ぶのがほとんどだったそうです。比べて現代の子供はゲーム機ひとつあれば遊び尽くせないほどのソフトに恵まれていますから、外に出る暇など無く、もし外で遊ぼうと思っても、結局ゲーム機を持っていき車座になってみんなでゲームをやります。安全な広場や公園はなく、あってもボール遊び禁止や大声禁止など、のびのびと運動することが出来ません。
ここまで子供の運動について話してきました。では、大人はどのような運動をするでしょうか。大人になったら、体育の授業は無く、部活もなく、外遊びも無く、運動会もなく、ドッジボールもありません。
それでも大人の間で流行っている運動があります。筋トレであります。
他にもヨガやエクササイズなども大人の運動と言えましょうが、今回私の掲げる政策は、特に筋トレを中心に進みます。
筋トレはメジャーな趣味の一つになりました。身体を鍛えることの意味は広がり、健康維持のためや老後に備えた筋力維持など、ボディビルダーのような隆々とした肉体を目指さなくとも、筋トレは趣味であると言える時代です。ジムの数は増えていますし、健康意識の高い人も増えました。労働力不足の我が国で健康寿命が延び、労働人口が増えるのであればそれを後押ししたいと私は思うのであります。
そうした需要の高まりを受けて、私が提案したいのはマッスル都市構想であります。
マッスル都市は筋トレのための街であります。バリアフリーならぬマッチョフリーです。街全体を筋トレ施設のようにしてしまえば、そこで暮らす人は自然とムキムキになれるという都市を造るのです。
どんな構想か。まずコンビニよりもジムが多くあります。自販機にはプロティンか水のみであります。公衆トイレの横には公衆シャワー室を置きます。街路樹の代わりにブロッコリーを植えましょう。レストランはヘルシーで高タンパクなものを提供し、ジャンクフードなどは街に誘致されません。全区域禁煙で公園にはマシンが置いてあります。
エレベーターやエスカレーターは無く、上下の移動は階段か鉄棒、一本縄です。必然足腰は鍛えられます。移動はウォーキングからランニングまでに制限します。自転車は免許がなくては乗れません。車は身体が鍛えられないのでマッスル都市には合わない。車がなければ道は広々とし、ウォーキングレーンと追い越しランニングレーンの二車線になります。怪我人や急病人などには救急人力車を呼びます。移動手段は人力車や台車付きの自転車に限定し、車両の動力は人力に限ります。年に一度のお祭りは運動会にし、筋肉の神様に感謝を捧げます。マッスル都市の住人はマッチョなので、悪党は警察が来るよりも先に住民達によって捕まるでしょう。
マッスル都市は排気ガスの心配がなく環境に優しい。自動車が走らないので交通事故の不安もありません。筋肉を育てるには早寝早起きが重要でありますから、夜遅くまでやっている店もなく、消費電力も少ないでしょう。アルコールは筋肉に悪いので飲む人もおらず、酔っぱらいのケンカなど起きるはずがありません。日本一安全で健康な都市がそこに出来上がるのです。
街全体が筋トレの為に出来上がっていますから、三日坊主ということはなく、そこで暮らせば誰でもマッチョになれます。街に育てられるというわけであります。
現代人の運動不足を解消し、子供は統計開始以来でもっとも体力のある世代となるでしょう。マッスル都市の人気から人口の一極集中も分散されること間違いありません。




