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ご挨拶/エスカレーター歩き乗り禁止令

 私達には、日本の未来を考える義務があります。日本の行く末を決める義務があります。日本人に生まれ、日本人として生きる私達は、選挙に行って、誰かに投票し、日本のリーダーを決めます。それが日本の政治であります。

 リーダーは時に、あるいはほとんど優秀とは言えないかもしれません。そうなると、日本の未来への舵を切るのは船頭よりこぎ手かもしれません。ただ、優秀な船頭であれば、こぎ手も安心して前へ進むことができるでしょう。

 私はそこまで考えた時、私こそがその船頭になりたいと思い立ったのでございます。私は、若さという点では誰にも負けないつもりであります。柔軟な進路を選べる体力のある船頭に成れます。

 ご挨拶が遅れて申し訳ありません。初めまして。(わたくし)小山内(おさない)小人(しょうと)と申します。この度、初立候補となります。どうかお見知りおき頂けると幸いです。

 ご挨拶としまして、僭越ながら簡単な自己紹介をさせていただきます。最終学歴は○○幼稚園卒業、その後☆☆小学校入学。幼稚園在学中に成長期に合わせたおやつ財源の増額を園長に掛け合い、現在は4年A組の学級委員長として、夏休みの宿題量削減、エアコン設置実施、不人気給食メニューの撤廃などの実績がございます。私は教室の政治を飛び出して、日本の政治に挑戦したいと思ったのであります。

 市議会委員の父と、高校教師の母の間に生まれ、2つ上の兄の社会の教科書を読み始めた頃より総理大臣を志してきました。どうか顔と名前だけでも覚えていただき、ぜひ皆様の清き一票を私にお願いします。

 ただの挨拶だけでは政治的信条や政策などは見えませんでしょうから、早速、1つ公約を掲げさせていただきます。

 私が当選した暁には、エスカレーター歩き乗り禁止令を公布いたします。今後日本国内におきまして、エスカレーターには立ち止まって乗ることを義務付け、日本をエスカレーター先進国にしたいのであります。

 エスカレーターにも様々な種類がありましょうが、一般的なものはステップの幅が広く、人が二人並んでちょうどのものが主流かと思います。

 そう。二人分のスペースがあるのです!

 我が国ではエスカレーターの始まりから終わりまでの長さの、倍以上を乗り待ちで長蛇の列をなす文化があります。そうして片側を空け、お急ぎの方専用の追い抜き車線を作るのであります。

 皆様、もう止めませんか。片側を空けるのを。皆様もお気づきでしょう。エスカレーターを歩いて行ってもそれほど時間短縮にならないことを。せいぜい1、2秒の短縮にしかならないのに、タイパが良いなどと勘違いするせっかちさんの為に皆様が長い列を、まだかまだかと待つのを私は無くしたいのです、

 現在、一部地域では歩き乗りを減らそうという運動も起こっておりますが、なかなか普及には苦しんでいるということを聞きます。それならば全国的に禁止してしまう方がよほど普及も早くなることでしょう。

 では、具体的にどうするか、私の掲げる歩き乗り禁止令とはどういうものか。どのように禁止していくか。皆様の税金をどのように使わせていただくか。

 今後、エスカレーターの上り先、あるいは下り先に人を配置します。関東では右側、関西では左側であります。そしてエスカレーターを立ち止まってお乗りになった方には駄菓子を差し上げます。もし歩き乗りしている方がいたら、その方にはその場で200円の罰金を課科します。200円あれば、駄菓子をいくらか補充できましょう。サステナブルであります。

 今私には、いずれこの政策が実を結び、エスカレーターを2列に並んで乗っていく、美しい川の流れのような人の列が目に浮かぶようであります。

 しかしひとつ懸念もあります。もし皆様の努力の結果、右側あるいは左側の列では立ち止まる人が増えるかもしれません。ですが、その反対側はどうでしょうか。もし片側にしか駄菓子を配らなければ、もう片方は必然人気がなくなります。そうなると、関東では右側に、関西では左側に並ぶという逆転現象が起こるかもしれません。これを防ぐには、予算案を見直して駄菓子への増額を検討せねばなりません。心苦しいですが良い世の中にするためには、ご理解頂けますとありがたいのでございます。

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