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7:UNDERWORLD

「…つまり、友人に仕込まれたウイルスを除去したいんやな」


あれから十数分後、僕らは集合場所から少し歩いたところにある公園のテーブルベンチに座ってこれまでのことを話していた。時折HANAEさんの様子を伺い、話していいことと良くないことを確認しながら、僕達以外のユーザー名や個人情報はなるべく避けた上で、今抱えている問題をレンさんに説明した。


レンさんは見た目に反して真剣に聞き、それでいて理解も早かった。的確な質問とレンさん自身の補足情報で、さほど時間はかからずにこれまでのことを話し切れた。


「先にアンタ…ナナシの認識を改めなイカンな。突拍子もない話と思うかもしれんけど、逐一止めながら聞き」


僕が頷くと、レンさんは話し始めた。


「『大型デパート理論』は知ってるやろ?」


HANAEさんと食事をしている時に思い返していたが、NOWHEREは『階段のない大型デパート』と公式から説明されている。

徒歩で移動している限りはスペースの定義から外れない、というものだ。ナビボットに襲われた時も、攻撃行動が取れない筈のオープンスペースで攻撃を受けたことが僕の一番の疑問だった。


「その説明がそもそも違うねん。このNOWHEREには、厳密には『オープンスペース』なんて空間は存在せえへん」


「え…?」


思わず声が出た。公式から出されている見解がそもそも違うなんてあり得るのだろうか?

というか、『オープンスペース』が無いのなら、僕がいつも過ごしていた場所は何なんだ?


「手っ取り早く言うと、NOWHEREっちゅうのは『地球』なんや。でもって、ユーザーがオープンスペースって呼んでるもんが『国』。NOWHEREの運営がNOWHEREを創ったんやなくて、NOWHEREっちゅう空間が()()()()()()()んや。んでもって、そのNOWHEREっちゅう空間に『オープンスぺース』として分厚い壁とごっつい金網を置いて、その中の規律を後から作っとる」


「…」


言葉すら出なかった。運営に対する『NOWHEREという仮想空間を作った企業』という今までの認識が覆る。正確には、『NOWHEREという仮想空間を発見し、実用化させた企業』ということになる。


だとしたら、このNOWHEREは誰が創ったんだろう。


僕が黙っていることを説明不足によって伝わっていないと思ったのか、レンさんは付け加えた。


「そうやなぁ…最近流行りの言い方で言うと、『NOWHEREっちゅう名前の異世界があって、その異世界への行き方を確立させただけ』ってのが分かりやすいかもしれんな」


僕は頷いた。僕は、今までとんでもない勘違いをしていたのかもしれない。

僕たちは『地球』という現実世界で、何千年、何万年と歴史を積み上げて『国』を創り出し、それぞれ法律や規則、道徳に則って生活している。それは、『国』ですら制御することのできない『地球』という世界の法則の上に成り立つ。生命、重力、自然、時間…。


NOWHEREも同じだ。元々地球上に存在する『NOWHERE(もう一つの裏世界)』で、『オープンスペース』を創り出し、そのルールに則って生活している。そしてそれは、『NOWHERE』という世界の法則の上に成り立っている。


「ということは、僕が襲われた場所は…」


「その通り。その場所こそ、紛れもない『NOWHERE』やね。運営が創った『オープンスペース』っちゅう国から出て、ルールも法律も何もない無法地帯。そら攻撃を受けてもおかしないやろ?」


確かに話が繋がる。壁と金網に囲まれたエリアがオープンスペースの全てなのではなく、もっと広大で膨大な量のエリアが存在し、その一部をオープンスペースと定義しているだけ。僕が壁を通り抜けた場所は拡張予定のエリアなどではなく、元々存在していたエリアだっただけだ。そこに辿り着くまでの道を、メッセージの差出人は知っていた。


「今ナナシがいるこの場所も、その『NOWHERE』と同じやで。ウチらはオープンスペースではないこういう場所を、『UNDERWORLD(アンダーワールド)』と呼んどる」


僕が攻撃を受けた地点も、アンダーワールドっていうことだ。僕が今までオープンスペースだと思っていた場所は、『オープンスペース』と『アンダーワールド』として認識されていることになる。


「襲撃された時に気付いたみたいやけど、攻撃行動が取れるって言うてもUIが変わらへんかったやろ?」


確かにそうだった。MMOスペースや対戦中はUI自体が変更され、メニュー欄に『スキル』という選択肢が追加される。でも、ナビボットに襲撃された場所…アンダーワールドでは通常攻撃こそできたものの、UIを開いてもメニュー欄に攻撃行動の選択肢は一切なかった。


「そこで、スキルを使えるようにするのが『デバイス』や。拡張プラグインみたいなもんやな。NOWHEREのUIを拡張して、スキルを使えるようにするアイテムの総称をまとめてデバイスと呼んどるんよ」


僕は手に持っていたスマホを見る。これが僕のデバイスなのだろう。ナビボットに襲われた時、このスマホを介して、僕は哀属性魔法である『ソロウ』を撃てた。


「大抵はNOWHEREの武器と同じ形状しとるけど、デバイスの種類は多種多様。使えるスキルはデバイス次第やから、ハッキリ言ってデバイスの性能がソイツの強さに直結する。アンダーワールドでは、毎日アホみたいな金額でデバイスの取引がされてんで」


僕はどうやってこのスマホ型デバイスを入手したんだろう?メッセージの差出人が勝手に僕にデバイスを仕込んだんだろうか?

このままこのデバイスを使っていて何も問題がないのだろうか?


「逆に言うと、アンダーワールドに来ない限りはデバイスは普通持ってへん。ナナシは知らん間に持ってたおかげで、HANAEが勘違いしたんやな」


HANAEさんは僕がスマホを握っていたことと、魔法を発動したことで僕がアンダーワールドを知っている人間だと勘違いしていたらしい。何の説明もなくアンダーワールドへ移動したのも、この勘違いがあったからだったみたいだ。


「んで、アンタらを助けた運営っぽいヤツ…そいつもアンダーワールドの人間やろな。ソイツが適当な説明で誤魔化そうとしたのも、危険なアンダーワールドにナナシが来ないように気を遣ったんやろ」


トオノさんは僕のアクセス履歴を調査したことで、僕がこれまでにアンダーワールドに行ったことが無い事を理解していた。それに、僕がスマホ…つまりデバイスを使って魔法を発動させたことを()()()()。むやみにアンダーワールドに連れてくることはないと判断して、僕に情報をほとんど渡すことなく半ば強引に説明を打ち切った。


「じゃあ、レベルとかステータスは…」


「知らん」


「え」


今までとは打って変わって、食い気味且つ淡白に返されて思わず声が出た。


「MMOスペースとかコミュニティスペースは、NOWHERE運営が後から作ったエリアや。レベルとかステータスはMMOスペースで新しく追加された要素やろ?んなもんアンダーワールドに関係あらへん」


オープンスペースで確認できるのは、体力ゲージと魔力ゲージ。レベルとステータスが見られるのは対戦中かMMOスペースだけだ。MMOスペースで成長させたレベルや能力は反映されないのだろう。


「実際の所はレベルの概念は存在するらしいけど、確認方法がないねん。アンダーワールドの技術をもってしても、や」


僕がナビボットに襲われた時、ボックスに通常攻撃してもダメージが入らなかった。見れないだけでレベルの概念が存在しているのなら、僕は一度もアンダーワールドを訪れたことがなかったからレベルが初期状態でダメージが入らなかったのではないか。


「NOWHEREで属性や武器を自由に決められないのも、オープンスペースのルールやない。NOWHEREのルールで決められないんや。普通、キャラクターメイクなんぞ自由に決めれるのが当たり前やろ」


確かにMMORPGというのは普通、武器や職業・得意属性なんかはプレイヤー自身が好きに決められるのが当たり前だ。性格や気分で前衛や後衛のどちらをやりたいとかもある筈なのに、NOWHEREでは武器が決められているせいで選択肢が狭められている。属性が火や水といったよくあるものではなく喜怒哀楽なのも、奇を衒った訳ではなくNOWHERE自体が元々そういう仕組みになっていたからだったのか。


「まあ色々あるけど、時間も時間やし他は追々説明するわ。先にウイルス問題解決せんとな」


気付けば午後八時になっていた。今日は現実世界でHANAEさんとのやり取りもあってログインが遅かったし、ログインした直後のウイルス騒動もあって遅い時間になってしまっていた。


アンダーワールドについても気になることは多いが、確かにレンさんの言う通りウイルスの対策をしなければならない。ねねこさんを待たせるわけにもいかないが、まだどうすればいいかすらもわからない状況だ。


暗い表情をしているHANAEさんと僕を見て、レンさんは決心したように手を叩いた。


「…よし、レンちゃんが力貸したるわ。ウチの若いモンが迷惑かけたこともあるし、アンダーワールドの治安を脅かす奴は早めに潰しときたいしな」


組を潰すくらいの感覚で言っていそうだが、実際レンさんが力を貸してくれるのは助かる。人手が多くなることはもちろんだが、アンダーワールドについても話を聞けるだろう。HANAEさんからも聞けるだろうが、言語的な問題がある。オープンスペースで話せるような話題でもない。


「アンタら二人、直近時間あるか?ナナシが狙われてるかもしれんこと考えると、三人固まって行動した方がええやろ」


レンさんに聞かれて、HANAEさんと顔を見合わせる。


「…僕は明日にでも動けます。早く解決した方がいいので」


「私も、明日で大丈夫、です」


HANAEさんも肯定した。HANAEさんは僕に勝って三位入賞したので、大会の本選出場が決まっている。

でも、本選はまだ先の話だ。練習時間を削られてしまうのではと不安になるが、問題を残した方が大会中にモヤモヤしてしまうだろうか。


「明日平日やけど…まあいいか。こっちも明日の方が助かるしな」


HANAEさんは公開されているプロフィール上僕と同い年の筈なので、現在高校三年生の筈だ。現在の国籍は日本とのことだが、海外で義務教育を終えている可能性はある。

対する僕は言及されたくないので、特に何も言わず黙っている。


「ほな、連絡先交換しとこか。明日の集合時間は後程連絡するわ」















「おう。二人とも早いな」


翌日の昼過ぎ。アンダーワールドの昨日話していた公園で僕ら三人は待ち合わせをしていた。まだ集合時間には五分ほど早いが、僕、HANAEさん、レンさんの順番で既に集合していた。


僕は緊張や不安なことがあると時間より早く来る癖がある。早く来たからと言って特に何かが好転する訳ではないのだが、本能で緊張を緩和させようとしているのかもしれない。

HANAEさんは僕と現実世界で会った時はほとんど集合時間ぴったりに着いていた。その時にHANAEさん本人が集合時間前に集まるのが日本人の良いところだと言っていたので、もしかしたら気を遣ったのかもしれない。


「昨日あの後に情報収集してみたんやけど、ウイルス関連の情報は一つだけやった。ウイルスを販売してる奴がおるらしいって話やけど…正直無関係な気はするんよな」


レンさんは頭を掻きながら言った。

ウイルスを販売しているとなると、確かに実行犯ではないかもしれない。でも、実行犯にウイルスを販売した可能性はあるのではないだろうか。HANAEさんも浮かない表情をしているところを見ると、HANAEさんも無関係であるという意見に賛成のようではあるが。


「こういう時に一番情報持ってそうなのは知り合いにおるんやけど、いつも通り無視されてるんよな。どこにいるかも分からん神出鬼没な奴やしなぁ」


…無視されるのがいつも通りになっている時点で知り合いなのか怪しい気もするが、忙しい人なんだろうか。


僕自身もできる限り調べたつもりだが、案の定何も情報は得られなかった。アンダーワールドについてはネットのどこにも情報はなかったし、ウイルス関連の情報についても月並みなものしかなく、役に立ちそうな専門的な情報は得られなかった。


「ウイルス犯人より、除去できるengineer、探します?」


「それがええと思うんやけど…HANAE、そういう知り合いおる?」


HANAEさんは首を振った。アンダーワールドがどういった場所なのかも僕はあまり掴めていないので分からない。


「ウチにも技術者はおるけど、未知のウイルスに対処できるスーパーエンジニアみたいなのはおらんねん。脳味噌まで筋肉でできてる武闘派だらけやからな」


レンさんがどういう集団に属しているのかは分からないが、武闘派集団の組にいるのは割と簡単に想像がつく。現実世界とは違って、仮想世界でどんな仕事(シノギ)をしているのかは想像つかないが…。


「…気は進まんけど、一応対処できそうな奴は知ってんねん。ちょうどウイルス販売してるって奴と場所も近いし、ダメ元で行ってみる?」


僕とHANAEさんは頷く。レンさんは渋っているが、今は少しでも前に進まなきゃいけない。

レンさんは諦めたようにため息をつき、僕達を誘導するように歩き出した。


「しゃーないな。時間も惜しいし、さっさと行くか」


僕たちは後ろをついていく。公園を出て、ビル群に囲まれている大通を歩く。エリア…というよりはビル群の端の方にある公園だったので、少し先を見ると既にビル群の終わりが見えている。

その先は、僕が初めてオープンスペースの壁から出た時のような、平坦な道が続いているようだ。


「ナナシのために説明しとくと、アンダーワールドも攻撃行動が取れないスペースがあるんや。ちょうど今ウチらがいるこの場所も攻撃不可やで」


「…?」


「昨日の説明と矛盾すると思ったやろ?」


素直に頷いた。NOWHEREという世界の上に、攻撃不可のルールを制定したオープンスペースという空間を運営が創ったという話だった。それなら、純正NOWHEREとも言えるアンダーワールドは全て攻撃可能区域になる筈だ。

レンさんは自分の事のようにうれしそうな表情をしながら言った。


「アンダーワールドっていう場所を見つけてから、NOWHEREに存在する色んなユーザーが協力して建物を建てたり、公園を創ったりして整備してったんや。攻撃禁止区域を設定する方法も見つけて、ここらみたいに特定の場所は安全地帯なんよ」


公園で話している時、レンさんもHANAEさんもやけに周りを警戒していないと思っていたが、攻撃禁止区域だと知っていたからだったのか。人が多いことも不思議ではあったが、攻撃禁止区域なら確かに訪れやすいのだろうか。オープンスペースも条件は同じだが、何故アンダーワールドには人が多いんだろう。


「攻撃禁止区域にできるなら全エリアそうせえって思うかもしれんけど、それは無理らしいで。維持するのも設定するのも大変で、管理できるユーザーは数えるほどしかおらんみたいやな」


HANAEさんが感心しながら聞いているところを見ると、あまり知られていない内容のようだ。レンさんはなんでこんなにアンダーワールドに詳しいんだろう。


「逆に言うと、建物が見えんくなったら大概は攻撃可能区域やで。危なくなったらここに逃げ込めばええねんけどな」


攻撃禁止区域がどこなのかはしっかり覚えておいた方がいいだろう。危なくなったらすぐ逃げ込めばトラブルに発展するケースも減る…のか?

昨日みたいに物騒な人たちに絡まれる可能性は捨てきれない気もするが。


「攻撃可能区域には大抵人はおらんけど、高性能なデバイスを巡って襲ったり襲われたりが普通のスラム街みたいな場所やから、もし移動するようなことがあれば一人で行くのは危ないで」


…どおりでトオノさんが僕をアンダーワールドに来ないように仕向ける訳だ。オープンスペースですらナンパ行為やノーマナー行為、勧誘行為で治安が悪いと言われているのに、アンダーワールドはオープンスペースの十倍は治安が悪いようだ。


「HANAEくらいの実力があれば問題ないんやけどな。可愛い見た目に釣られたアホが何人消えてったことか」


「?」


オープンスペースで人気なHANAEさんはアンダーワールドでも人気らしい。アンダーワールドでも色んな人に話しかけられたということは、言語の壁にぶつかった人間がその分いる筈だ。トオノさんに言われるまで日本語で話せると自覚していなかったらしいので、おそらくこの場所でもスコットランド語で話していたのだろう。


「…NOWHEREは、どのくらいの広さなんですか?」


「分からへん。未だにNOWHEREの全貌は誰も理解できてへん」


いつ頃からユーザーがアンダーワールドに出入りを始めたのかはわからないが、攻撃禁止区域を創ったり、建物や公園等の施設を公式の手を借りずに作成できる技術を持っているのに、全貌は理解できていないという。ということは、全貌を理解するのに何か障害があるか、もしくは。


「…広すぎる?」


「正解や。北海道から沖縄まで、全ての地区のオープンスペースが同じ空間にあるのは理解してるやろ?各オープンスペースの周りにアンダーワールドがあるイメージでええんやけど、未だに果ては見えへん。ここまで来ると地球みたいに球体なのかどうかすら分からん」


全ての地区のオープンスペースが繋がっているというのは公式からも発表されているので誰でも知っている情報だけど、各オープンスペースの位置関係は分からない。現実世界の日本列島と同じ形をしているとは限らないので、下手すると北海道地区のオープンスぺースの上に沖縄地区のオープンスペースがある可能性すらあり得る。


「もう一つの問題は、攻撃可能区域にモンスターがいることやね。アンタらはボックスに襲われたって言うてたけど、あんな感じでモンスターがうようよしてる。運営が提供してるスペースでは見たことないような巨大なバケモンもおるよ」


広大すぎるエリアに加えて、モンスターという障害もある状況。確かにエリアの探索は進みにくいのかもしれない。

NOWHEREのサービス初期に多く見られた不気味なデザインのモンスターは、もしかしたらNOWHEREに元々存在していたモンスターをそのまま連れて来ていたのかもしれない。近年出てきたコビーやカリー等の人気モデルは逆に、アンダーワールドでは存在しない、運営が創り出したモンスターの可能性がある。

ボックスが凶暴すぎてMMOスペースで見なくなったのも、こういう理由があったのであれば納得できる。


僕がナビボットに襲われた時にトオノさんとHANAEさんが即席で連携が取れていたのも、アンダーワールドではモンスターとの戦闘が頻繁にあるからなのだろう。HANAEさんが対戦カテゴリで成績を出せているのも、他の選手に比べて経験値が高いからかもしれない。


「今歩いてるエリアは人通りも多いしザコばっかやから、定期的に駆除されてモンスターの脅威は薄いらしいで。人間の脅威はあるけどな」


既にビル群を抜け、平坦な道が続くエリアに来ていた。目を凝らすとうっすら見える程度の距離に建物がある。

あれが目的の建物なんだろうか?


「ああ、一応ファストトラベルもできんで。URLがあれば指定の場所に飛べるんやけど、URL発行するのが大変やから飛べる位置は限られてるけどな」


今から行く場所はURLが発行されていないか、レンさんがURLを知らないかのどちらかということだ。

おそらくHANAEさんも知らないのだろう。僕と同じで周りを確認しつつも、目の前の建物を観察している。


「…」


建物が近付いてくるにつれ、こちらが喋らなくても色々説明してくれていたレンさんの口数が減ってきた。今日はずっとにこやかな表情で会話をしていたが、昨日薄暗い建物で初めて会った時の威圧感を発するような仏頂面になっている。


「…先に言うとくけど、気ぃ悪くせんとってな」


あの建物に一体どんな人物がいるんだろうか。

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