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仮想世界の、もうひとつの裏世界  作者: 晴れ
バーチャルアイドルと裏カジノ

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17/18

17:Neutral

「お、来たな」


レンさん達と会話した翌日、僕はトオノさんと待ち合わせをしていた。

トオノさんは既に到着していて、僕を見つけるともたれかかっていた壁から離れた。


()()()では初めましてだな。見た目は変わらないからそんな気はしないが」


トオノさんは耳に着けていたワイヤレスイヤホンを外しながら言った。

NOWHEREでは何も着けなくても自分だけに聞こえるように音楽を流すことができるので、イヤホンはそもそも存在しない。なので、ここは現実世界だ。


どうして現実世界で待ち合わせなのかと少し困惑したが、おそらく昨日言っていた『トオノさんにしか会えない人物』が現実世界にいるのだろう。


「…時間、間違えてましたか?」


指定の時間よりは十分以上前なのだが、既にトオノさんは待ち合わせ場所にいた。僕はいつも通り、緊張や不安を感じると早くに着いて待っている癖があるので、時間を間違えたのかと思ってしまった。


「元々道に迷いやすいから、こういう時は大抵早く来て適当に時間を潰してるタイプなんだよ。今回はナナシアが早く来たから大して待ってないしな」


「…札幌にはあまり来ないんですか?」


正直、トオノさんが札幌にいることすら驚いた。NOWHEREで札幌地区にいたとしても、現実世界でも札幌にいるとは限らない。依頼を見た限りでは全国各地のものがあったので、勝手に本拠地は東京なのかと思っていた。

一時的に札幌に来ているのであれば土地勘がないのも理解できるが…。


「いや?生まれも育ちも札幌だよ。一時期違う場所にもいたことあるけど」


…それなら土地勘もあると思うのだが、何故道に迷うのだろうか。


出てきた疑問は口に出すことなく、歩き出したトオノさんの後ろをついていく。迷うと言っていた割に、足取りには迷いがない。おそらく何度も行ったことのある場所なのだろう。


「シキも札幌住みだから、会おうと思えばこっちでも会えるよ」


「…」


その情報はシキさんに許可を取らずに言ってもいいのだろうか。


「現実世界だと手が出せるから会わない方が良い気もするけどな」


シキさんには僕が札幌在住であることは言わないようにしよう。

でも、僕が札幌地区の大会に出場していると知られればすぐにバレてしまう。大会は実際に住んでいる地区じゃないと選手登録できないので誤魔化せない。


少し重い気分になりながら、半笑いで歩いていくトオノさんを見る。NOWHERE上でもそうだったが、この人にはシキさんやレンさんのような威圧感は全く感じない。レンさんも普段の明るい雰囲気の時はただの気さくな女性なのだが、一度スイッチが入ると普通の人間なら震え上がるレベルの威圧感を放ち始める。

シキさんやサイさん、それと対戦カテゴリで強い人と対峙した際には何かオーラのようなものを感じることはあるが、レンさんから感じるのはそれとはまた少し違う感覚だった。体験したことがないので分からないが、あれが殺気というものなのだろう。


ただ、この人にはそういった類のものを全く感じない。レンさんの反応を見てもシキさんに匹敵するレベルの実力者だとは思うのだが、飄々とした雰囲気や華奢な体つきが僕の感覚を麻痺させているのかもしれない。


この短時間で何度か欠伸している表情を見ても、昨日レンさんと物騒な話をしていた人間と同一人物とはとても思えない。本当にどこにでもいる…多少人目を惹く以外はどこにでもいる青年にしか見えない。


「そういえば、札幌地区のWMカテゴリの選手だったんだよな」


「…はい」


トオノさんと初めて会った時に経緯を話しているのと、僕のアカウント解析をしていたことで僕の情報は知っている。


「ゲームは好きだからeスポーツ系は結構見るんだが、対戦カテゴリはあんまり見てこなかったんだよな」


会議室のトオノさんの机にはCDや本が多く置かれていたが、ゲームもいくつか置かれていた。ほとんどがマイナーなタイトルだったものの、中にはプレミアがついているような隠れた名作と呼ばれるものがあり、なんとなくゲームが好きなのかもと思っていた。


「…どうして対戦カテゴリだけ?」


「だけって訳でもないが、アンダーワールドにいる人間は対戦カテゴリよりも複雑な戦闘を日常的にしてるからかな。アンダーワールドにも闘技場みたいな場所があるから、見るならそっちでいいかと思っちゃうんだよな」


言われてみれば確かにそうかもしれない。恒常的に命のやり取りをしているような人達なら、対戦カテゴリのような戦闘は生温く感じる…のだろうか。

アンダーワールドの闘技場というのも気になるが、想像ではお金を賭けた地下闘技場のようなイメージが浮かぶ。NOWHEREの対戦カテゴリは発足してから二年程度だが、まだまだ制限が多くできることが少ない。僕の出場していたWMカテゴリも使用できるモンスターやレベル、使用できるスキルの幅が狭くユーザーからの要望も多く出続けている。


「MMOスペースもアンダーワールドが同じような状況だからな。面白いシナリオや明確な目的もないが、『誰も行ったことのない場所』が存在するロマンがあるんだろうな」


アンダーワールドは広すぎて誰も全貌が理解できていないとレンさんが言っていた。誰も行ったことのない場所があるのはなんとなく分かるが、ロマンがあるかと聞かれれば僕はそうは思えなかった。


「…人の手が入ってないのなら、何もないんじゃ?」


札幌地区のアンダーワールドからイツキさんの拠点まで十数分は歩いたが、平坦な道が続いているだけだった。薄い霧がかかっていた関係で広い範囲を見た訳ではないが、人の手が入ってなければ建物の類は存在しないのではないか。


「札幌地区のアンダーワールドは人の手が入ってることが多いが、他の場所はそうでもないよ。…例を挙げるなら、君とリザさんが行った場所…ナントカっていう男と戦った場所は人の手が入ってない」


「…」


思わず絶句した。ムラタさんと戦った、明かりのない体育館のような場所。あんなに手の込んだ建物が、人が造ったものではない?


「人の手が入ってないってのはちょっと違うか…正確には、『誰が造ったか分からない』かな。記録に残ってる限り、一番最初のプレイヤーがNOWHEREを発見した時には既にあの建物はそこにあった」


一番最初のプレイヤーというのは、ムラタさんの話を聞く限りではリザさんの父親だ。それよりも前…本当に遥かに昔から誰かの手によって造られていた可能性がある。


「面白いだろ?NOWHEREっていう高度な技術を用いた存在自体がどうやって出来上がったのかも分からないのに、建物と変なモンスターは存在してる。アンダーワールドにいる人間の一部は、血眼になってNOWHEREの歴史と仕組みを学者のように研究してるよ」


確かに、ムラタさんの話によればリザさんの父親がNOWHEREについて調査した結果、出てきた結論は『危険』だった。何もない真っ白な空間が続いていたのであれば、簡単に危険という結論は出てこないのではないだろうか。

NOWHERE上にモンスターがいたから危険という判断を下した可能性も十分にある。


「…オープンスペースは人が造ったんですよね?」


「札幌地区はね。NOWHEREの中でも()()()()更地の土地を確保して作ったから、周りにはある程度何もない地域が続く」


札幌地区()ということは、他の地区のオープンスペースは元々あった場所を改装している場所もあるのだろうか。NOWHERE上の地区移動は特に制限もないのでいくつか行ったことがあるが、札幌地区と大して変わらなかった。変わらないが故に特に行く必要もないと思ったので全ての地区を訪れてはいない。


「さ、着いたぜ」


まだ聞きたいことはあるのだが、目的地に着いたのであれば気を引き締めなければならない。

ましてやここは現実世界なので、どんな目に遭うのか…


「…?」


話に夢中になっていて自分がどこを歩いているのか考えていなかったが、僕も見慣れた場所だった。

実物を見るのは初めてだが、テレビや広告でよく見る風景そのものだ。


北田(きただ)総合病院。四年くらい前に新しく出来た病院で、最先端の設備と技術であらゆる分野の病気に対応できるらしい。今や北海道では一番大きな病院で、実績にも信頼はあるものの予約が多すぎて診察を受けることすら難しいことで知られている。


「できるだけ離れないように。外よりも中の方が危険だからな」


呆然として建物を眺めていたが、慌てて足早にトオノさんに着いていく。中の方が危険というのも理解できないが、建物自体も普通の学校より大きいくらいなのではぐれてしまうと確かに合流するのが大変になりそうだ。


入口の大きな自動ドアを抜けると、機械に囲まれたエントランスが出てくる。トオノさんが立ち止まると、前方にある天井から吊り下げられたモニターに「OK」の文字が表示された。


「すでに発熱してたりすると別室に促すような仕組みになってる。ウイルスが流行した数年前からは大抵の病院にある設備だが、ここのは発熱以外の症状もある程度発見できるくらいには高性能らしい」


機械に囲まれる居心地の悪さを感じつつも、僕もトオノさんと同じようにモニタ―前で立ち止まる。

問題なく「OK」の文字が表示され、促されるままに受付窓口へ向かった。


受付窓口にはかなり多くの人がいた。大量に置かれているソファも座れるところを見つけることの方が難しいくらいに席が埋まっている。トオノさんは窓口を見ると、座席の近くに立ってスマホを取り出して時間を確認した。


「…」


窓口は空いている所もあるのだが、トオノさんが動く気配がないので僕も傍で周りの様子を見てみる。


設備どころか、内装の時点でかなり華美だ。観葉植物も見たことないくらいに巨大で、受付のカウンターも含めてところどころが間接照明になっているのが清潔感と高級感を増す。外からは分からなかったが、壁の一面が全てガラス張りになっていて外が確認できるようになっている。おそらく外からは見えないブラインド仕様なのだろう。

床には少しの汚れも見えない。何でできているのかまでは分からないが、雨で靴が濡れていても滑らないだろうという安心感がある。


「行くか」


急に動き出したトオノさんに慌ててついていく。何故今まで動かなかったのか分からないが、はぐれる訳にもいかないし静かな空間で声を出そうとも思わない。


今空いたばかりの窓口に向かうと、受付のお姉さんが笑顔で出迎えてくれた。


「お待たせいたしました。保険証をお預かりします」


「いえ、425号室に取り次いで欲しいんです」


いつものトオノさんとは違う作られた声色だった。聞いただけで人の良さが伝わるような落ち着いた声で、男の僕でさえ少しドキッとしてしまうような優しい声だった。

お姉さんも満面の笑みをトオノさんに返しながらパソコンを操作する。


「面会ですね?少々お待ちください」


トオノさんが会おうとしている人は入院していて、お見舞いの形で話そうとしているのだろう。


しかし、受付のお姉さんの顔が曇る。


「あの…425号室の方は、家族も含めて面会は全て拒否されているようですが…」


面会拒否?しかも家族を含めて全てとなると、会うことはできないのではないだろうか。

しかしトオノさんは驚くこともなく頷いた。


「ええ、なので取り次ぎだけで。荷物の受け渡しをお願いします」


トオノさんは来ているジャケットの胸ポケットから封筒を二つ取り出し、受付のお姉さんに渡した。お姉さんも安心したように封筒を受け取る。


「本人宛の郵便物です。危険な物は入ってませんが、中身を確認していただいても大丈夫なので」


普段の無関心な表情からは想像もできない優しい笑顔に、お姉さんも笑顔で受け取って了承した。

そのまま窓口を離れ、都合よく空いていた席に並んで座る。


「一応様子見るけど、十五分くらい反応無かったら引き上げるか」


「え…?」


驚いてトオノさんの方を見ると、トオノさんも僕の顔を見て驚いたように眉を上げていた。


「言っただろ?そもそも情報が得られるって決まった訳でもないって」


あれ、言ったよな?と上を見ながら呟くトオノさんを見て、あの封筒を渡しただけで面会拒否の人に会えるのかと不安になる。渡した人がすぐに封筒を開けるのかも分からないし、中身を見ても反応を返すのだろうか。

それに、メッセージ等で連絡せずにわざわざ直接出向いたってことは連絡先も知らないってことになる。情報が得られるとは限らないと言っても、あまりに望みが薄いような気がする。


「お」


僕が不安そうにしていると、トオノさんが何かを見つけて立ち上がった。

トオノさんの視線の先を見ると、さっきの受付のお姉さんが何かを探してキョロキョロと席を見まわしていた。

僕達を見つけると、安心したように足早で駆け寄ってきた。


「すみません、425号室の方がどうしてもお会いしたいと仰ってまして…」


「分かりました。じゃ、行くか」


予期していたかのように、全く動揺することなくトオノさんは歩き出す。僕は情報を得られる若干の安心感と、得体の知れない不安感を抱えつつも受付で面会手続きを済ませる。


「ここから先は電子機器の電源をお切りください」


一定の場所より先は電子機器が使えないようになっているらしい。スマホの電源を切り、受付よりも静かな病棟の中を進んでいく。


まるでホテルのような雰囲気のある廊下をしばらく歩き、階段をいくつか上がると目的の425号室に着いた。

ドアを一枚開けるが、出てきたのはもう一枚の重厚なドアだった。防音目的もあるのかもしれないが、こんな設備にする必要はあるのだろうか?


少し疑問に感じながらも、お姉さんがボタンをいくつか押してドアを開けた。


「あの時の…!」


僕と、病室の中にいたリザさんがお互いを見て驚いた顔をした。

トオノさんが会おうとしていた、チィリンという組織について情報を持っているのが、リザさん…?


「では、退室の際はこちらの内線電話でお呼びください」


お姉さんはリザさんの様子に一瞬驚いた顔をしたが、トオノさんが丁寧なお辞儀をすると相変わらず満面の笑みで廊下を戻っていった。僕がボーっと周りを見ながら歩いている時も、トオノさんはお姉さんと楽しそうに色々話していた。この短時間だけでもはや篭絡されていると言っても良いレベルだろう。


重厚なドアが閉まると同時に、リザさんがか細い声を発した。


「無事でしたか…!?昨日はお話もできなかったので…」


僕は頷く。リザさんは僕の様子に安心したようだったが、僕は僕でNOWHERE内で見たリザさんとは様子が違いすぎて困惑したままだった。

アンダーワールドでは特殊な技術を使わないと見た目の変更はできないためリザさんだということは理解できるが、頬が若干痩せこけていて明らかに顔色が悪い。十日と少し経っただけで、NOWHEREにいた時とここまで違いが出るのだろうか。

もしくは、十日より前から体調を崩していた可能性も考えられる。


「その辺りの確認も色々するつもりだったんだが…あんまり時間はなさそうだな」


お姉さんに向けていた柔らかい表情が消え、いつもの表情…よりは少し真剣な様子でトオノさんが言った。辺りを見回して何かに気付いたようだったが、僕には全く理解できない。


「…お久しぶりですね。会いに来て貰えるとは思ってませんでした」


「こちらこそ、お久しぶりです。まぁ依頼の延長なんで」


どうやらトオノさんとリザさんは面識があるらしい。それに、警戒心が強そうなリザさんがトオノさんに対しては安心した様子を見せていた。レンさんとの敵か味方か分からないような関係ではなく、良好な関係のようだ。


「じゃあ、手短に…封筒の内容の通り、現状そこそこ危険な状況にいます。入院する病院まで操作されてるとなると、色々綿密に計画されてるようですね」


入院する病院を操作?ムラタさんがそこまでのことを一人でやったとは考えにくいが…。


「…そんなに、私は恨まれているんですか?」


暗い顔をするリザさんに対して、トオノさんは首を振った。


「恨みを利用されただけですね。現に実行犯の男は誇張した情報を掴まされてる。リザさんを消したい人間が他にいて、自分の手を汚さずに処理したいらしい」


『実行犯の男』はおそらくムラタさんのことだ。事件後の話し合いでは持っていた情報が間違っていたかのような反応ではあったが、シキさんもリザさんが原因で人が死んだのは事実だと言っていた。あれは誇張した情報ということなのだろう。


「でも、結局裏にいる人が私を恨んでるってことですよね…?」


ムラタさんに情報を渡した人間がいるのなら、その人がリザさんを狙っているということになる。リザさんの過去に過ちがあるのであれば、その人がリザさんを恨んでいるという可能性は十分にある。


「確証はないですが、予想では違うかと。私情よりも、『繋げる力』を脅威に感じてる可能性の方が高いと思ってます」


『繋げる力』。僕がまだ知らない()()。トオノさんは理解しているようだった。リザさんも真剣な顔つきで俯いたが、何かに気付いたように顔を上げた。


「じゃあ、()()事件も…!?」


「明らかに狙われてますね。おそらくこれからも続くかと」


「莉子ちゃんは!?」


いつも通りの表情で言ったトオノさんに対して、リザさんが身を乗り出す。


「事前に伝えた通り本人は無事ですが、事情についてはほとんど説明してません。『大侵攻』についてざっくり知ったくらいですね」


莉子さん…ココさんが知ったのは僕と同じ情報の筈だった。だから、トオノさんの基準では僕も()()()()()()()()ことになる。


「こちらとしてもリザさんを失うのは大きいので、二人に関しては少しの間ウチのメンバーがケアする予定です。昨日一瞬だけ会ってると思いますが、金髪の女性がそのうちくる筈なんで」


間違いなくシキさんのことだろう。シキさんとココさんには面識があったようだが、シキさんとリザさんは面識がないようだ。

思えば、シキさんが札幌にいるということを躊躇なく話したのも僕がすぐに知ることになるからだったのかもしれない。


「本当は面識のある俺が見る予定でしたが、急遽別件が入ったもんで」


トオノさんの言う別件は僕とHANAEさんのことだ。シキさんが代わりに引き受けたのはリザさんとココさんの護衛ということになる。

でも、「リザさんを失うのは大きい」はどういうことなのだろう。リザさんは会議室の存在を知らなかったから、ハクのメンバーではない。それに、ココさんからの依頼が来なければリザさんの件に関わったのかと言われれば怪しい気もする。昨日の一件でリザさんの価値が急激に増したのだろうか。


「というのも、これから彼が『チィリン』に関わることになります」


「なっ…!?」


リザさんは驚きのあまり身を乗り出し、僕は思わずリザさんから目を逸らした。大きな声を出そうとしたからか、リザさんは苦しそうに何度か咳き込んだ。


「どうして、そんな…!?」


僕はまだ目を逸らしたままだったが、リザさんが驚きを隠せないまま掠れた声を出す。


「リザさん、胸元」


僕が目を逸らした先にいたトオノさんが目を瞑りながら言った。僕が目を逸らしたのは勢いに負けたのではなく、リザさんが身を乗り出したことによって病院着の胸元が露になったからだった。

普通の病院着ならそんなことにはならないと思うのだが、リザさんのプロポーションが規格外すぎることが大きな要因だろう。


「し、失礼しました…」


リザさんが身だしなみを直した気配を感じて、おそるおそる向き直った。顔色の悪かったリザさんは顔を赤くしながら毛布を自分の上に被せた。


「関わると言ってもまだここから調査する段階です」


僕とリザさんが気まずい空気になっていたが、トオノさんは全く動じずに淡々と言った。


「もう知ってるみたいですが、リザさんを誘導したのが『チィリン』です。どういう組織なのか、そして()()()()()()()()()()()()()()()()、それを話してもらうのが今日の本題です」

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