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日常5

よろしくおねがいします

 街に着いた頃、僕の顔からは鮮血が流れ出していた。住人たちはあいつらの命令通りに地面に引きずったままここまで来た。だが既に連れてきた住人の内の2割はいなくなっている。帰ってくるまでにあいつらの玩具として使い倒され、今頃は道中にいるモンスターどもの餌になっているだろう。あいつらは帰ってくるまでの間にモンスターに出会うと住人達にじゃんけんをさせ、勝った人には逃げてもいいと言い、少しの金と食料の入った袋を渡して離した。だがその食料の中にはモンスターどもを惹きつける液体が入った瓶があり、結局その人は悲鳴をあげながら餌になった。その様子を見ながら三人は自分たちも飯だと言わんばかりに腹いっぱい食べ、僕たちにはちぎったパンを地面に投げ捨て、それを手を使わずに食べろと命令し愉快そうにしていた。


 「やっと着いたな。とりあえずギルドの方に報告に行くか。遥、そこでくたばっているやつを動けるようにしてくれ」悠人は遥にそう言うと、遥は気持ちの悪い上目遣いで了承した。


 「お前、早くギルドに報告しに行っとけよ。俺たちは風呂に入ってくるから」そう言って全ての雑務をこちらに押し付け3人は風呂屋に行ってしまった。よくもまあ、あそこまで性欲に忠実になれるものだと少しの関心を覚えていた。


 「すみませんが、こちらについてきていただけますか。」そう言って僕は連れてきた住人達をギルドの方まで案内した。


 ギルドに到着し、中に入ると中には他の冒険者たちがいたが全員の顔が暗い。


 「ちっ、帰ってきやがった。向こうで死ねばよかったのに」そんな声がいろいろなところから聞こえてくる。そして僕の姿を見てわざとらしく聞こえるように言った。


 「いやーどっかの冒険者パーティーは今日はダンジョンに潜れないからって人を狩りにいったらしいぜ!俺たちならそんなことは絶対にできないな。だって人だぜ?お前らの方がよっぽどモンスターだっての」その声を聞いて後ろにいる住人たちが僕を睨みつけてきた。その気持ちは当然分かる。だがこうして様々な方位から負の感情を突き付けられるのは、肉体の痛み以上にしんどいところがある。それでも僕はあいつらには従うしかなかった。


 「依頼達成しました」そう言って受付に声をかけても賞賛の声も何ももらえない。それは僕たちが訪れた先で何をしたのかは後ろにいる住人たちの衣服や顔色を見ればすぐに分かるからだ。およそ人道的なものではなかったのは分かっている。だが誰も文句を言えない。厳密に言えばあいつら3人には文句を言えない。言ってしまえば次にやられるのは自分だと全員が理解しているから。


 「それでは、後ろの方々はこちらで預かりますので、これ依頼達成の報酬です」そう言って麻袋2つに詰められた金貨が机に大きな音を立てて置かれた。もちろんこの金貨はあいつらの物だ。そしてこれは人を殺して得た金でもある。受け取るのがはばかられるのが正直なところだった。それに後ろの人たちの今後を思うとどうしようもなく申し訳ない気持ちになってくる。彼らはこの後奴隷商に受け渡されこの国の様々な人々に買われていく。力仕事はもちろん慰み者として買われるものもいる。だが単に臓器を抜き取られるための臓器売買のために買われる人もいる。もちろんそれらは合法ではないがそう言った臓器売買などの既得権益はすさまじく、国も見て見ぬふりをしている。


 連れていかれる人々を見て中には幼い子どももおり、心が締め付けられるような気分になる。


 そうして一段落した後に、部屋に戻るとベッドの上に3人が裸で寝転がっていた。部屋の中は3人の事後の臭いが充満していたが、毎度のことなので既に慣れていた。


 「おせーんだよ。早くしろよ。のろまが。お前はいつものろまで役立たずだな」悠人の言うことを聞いて唯と遥が憎ましそうにこちらを睨みつけてくる。


 「それより、早く!ほら」こちらに手を向け、先ほどもらった金を要求してくる。それを差し出すと3人は少し不服そうな顔をした。


 「えーこれだけ?あんなところまで行ったのに?」遥が不満をこぼす。どう見ても十分な量の金貨だがこいつらは必ず文句を言う。たとえそれが国の国家予算の半分をもらったとしてもこいつらは文句を言う。底なしのくずどもだ。


 「いいんじゃない。ちょっと楽しかったし。特にあの大切な人を分けさせるやつ。悠人さすがだね」唯はそう言って悠人の顔を見た。悠人は唯に軽くキスした後こういった。


 「だろ?まあでも、とりあえずこの金分けようぜ」


 「そうね」


 3人はその後服を着て、机を囲んで座った。僕はその間も正座で地面に座るように強要されていた。


 「いつも通り3等分でいいよな?」悠人がそう聞くと唯と遥がうなずいた。


 「よし、あっそうだ。俺たちも鬼じゃないしあいつにも報酬をやらないとな」そう言って悠人は僕の方を顎で示した。


 「悠人は相変わらず優しいね。こんなやつにあげる必要なんて全くないのに。こいつは私たちにただひたすらに貸してたらいいんだよ」遥が憎たらしそうに言った。


 「そうだね。それに借りても返すのこっちで拒否できるみたいだし。本当にエリクサーみたいな存在だよね。それにお金払うなんて悠人は偉い」唯が悠人を褒めるように頭を撫でた。


 「やめてくれよ。二人とも。当然じゃないか。俺たちは決して離れられないんだからさ。二人もあげようぜ」そう言って悠人は遥と唯に微笑みかけた。何度この小芝居を見たか分からない。話す内容は多少違うが言っていることはいつも同じだった。


 「おら、拾えよ」悠人が自分の財布に入っている小銭を邪魔だと言わんばかりに床に落とした。唯と遥も同じように床に散らかした。そしてそれを無様に拾い上げる姿を見て三人で下品に笑っていた。


 「はっはははー、明日はこの金を使って遊びに行くか!」


 「そうね。何する?」


 「私は、別で行動するね」


 「唯は一人ね。分かったそれじゃあ悠人は私とデートね」遥が楽しそうに悠人に笑いかけていた。


 「別にそれはいいけど、何する?」


 「なんでもいいんじゃない?明日決めよ!」


 僕は金を集め終わってから部屋を出た。この金を使って久しぶりにまともな物が食べられそうだと思うと思わず腹の虫が泣いた。

ありがとうございました

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