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日常3

よろしくおねがいします。

 僕たちのパーティーはいつものギルドの前に来ていた。中に入る前から建物内から喧騒が聞こえてくる。


 「ここは、いつもいつもよくもまあ、元気よね」遥が呆れたような顔をしながら屋根から扉までを見渡した。

 

 「そういうなよ、遥、どうせ静かになるんだし。よし、それじゃあ行こうぜ」二枚のスイングドアを手で押しのけて悠人は先陣切って入っていった。


 そして悠人の宣言通り、僕たちのパーティーが建物内にいることに気が付いた他の冒険者たちが下を向いて黙りこくってしまった。


 「ほらな、静かになるだろ?」悠人は下を向いている屈強な冒険者の頭を拳で叩いて自分たちがこの街で一番偉いことを再確認するかのようにした。


 「ねえねえ、お姉さん。俺の話聞いてる?俺たちダンジョンに潜りたいんだけど早くしてくれない?」


 悠人がギルドの受付をしている女性に声をかけていた。そしてこの後の流れは全員が理解していたが、誰も口を出すことができなかった。


 「はっ、はい!急いでやりますので少々、おっ、お待ちください」


 「よかった、おーい早くできるってよ!」悠人が遥と唯に向かって嬉しそうに手を振っていた。だが二人ともこの後のことを考えており、どうせ早く行けるなんてことはないことを知っていたから、二人ともギルドの外に出て行ってしまった。


 「あーあ、行っちゃったー」悠人が落胆したような嘘くさい演技をした。


 「すっすみません・・・」受付の女性は小さな声で謝った。


 「すみません?すみませんじゃないよね。君のせいで俺のパーティーの絆にヒビが入りそうなんだけど、どうしてくれるの?ん?」悠人はカウンター越しに詰め寄った。


 「俺さ、あいつらのこととっても大切なのよ。分かる?だからさ、あの二人が今とっても嫌な気持ちになっているのが耐えられないのよ。そんでさ、そうなった原因のこのギルド、俺としては許せないのよ、正直」悠人がそう言うと他の冒険者チームがぞろぞろと席を立ってギルドから出て行ってしまい残ったのは首輪をつけ四つん這いを強要されている僕と受付の女性と悠人の三人だけになってしまった。


 「ど、どうすればいいですか・・」怯えた目で女性が悠人に聞いた。


 「ごめん、ごめん。そんな顔しないでよ。俺はただあいつらのことが大切だから嘘をつきたくないってだけでさ。別にお姉さんには何にも思ってないよ。ただ、どうして早くできるなんて言ったのか知りたいし、嘘だったんだからちゃんと謝ってほしいだけなんだよ。それをしてくれて、そのことを伝えたら、たぶん、さっきお姉さんが嘘をついたから怒って出て行っちゃったあの二人も戻って来てくれると思うんだよね。どうする?」悠人の話は支離滅裂で何を言っているのか毎回毎回最後まで聞いている僕ですら一度も理解できたことはない。


 「わかりました・・・謝りますので、ギルドを壊すのは止めてください・・・」お姉さんが半泣きで謝っていた。


 「いやいや、謝るってさ、もっとなんていうの?言葉だけじゃなくて、行動でも示してほしいのよ。だってよく言うじゃん女性は演技が上手いって」


 「・・・っつ」


 そのあとはいつもと同じだった。女性は悠人の前で着ていた服を全て脱がさせられて、そのうえ土下座させられたうえで犯される。いつもと同じだ。女性は泣きながらこちらを見てきたが、僕には何もできない。ただ、その場から去ることも許されず目の前の悲惨な状況を見ているしかなかった。悔しいだろうな。そんな陳腐な考えしか思いつかない自分にも腹がたつ。


 一通り終わった後、呆然とした様子で女性は床に座り込んでいた。


 「あっ、お前、俺たちがダンジョンに行けるように手続きとかしとけよ」悠人は僕にそう伝えてから外に出て行ってしまった。


 「なにもできなくてごめん・・・」自分の無力さに嫌気がさす。女性には上から布をかけてやるぐらいのことしかできなかった。


 「いいの、あなたは何も悪くないじゃない。悪いのは・・・うっ・・・」目から再び涙があふれ出ていた。


 「どうして、女神様はあなたのような親切な人だけじゃなく、あいつらみたいなゴミにもスキルを上げたの!」彼女はこみあげてくる思いを我慢ならない様子で吐き捨てた。僕はただ聞いているしかできなかった、今はまだ。だがそれももう少しだ。あいつらを地獄に叩き落してやる。


 「ごめん、気休めにもならないのは分かっているけど、これだけは言っておきたいことがあるんだ。僕は必ずこれまであいつらに、僕やこの街の人たちが味わった辛酸以上のことしてやる。だからあなたも希望はすてないでほしい。絶対に」今まで誰にも言ってこなかった思いを始めて他人に伝えた。


 「あなたの言葉なら少しは信じられるから、そう思っておく。それよりも、早く手続きしないとあなたまた暴力を振るわれてしまうでしょ?こっちにきて、ほら」そう言って散らかった服を胸の前にもって、受付カウンターまで、歩いて行く姿を見てなんて優しくて、心の強い人なのだろうかと思った。この人のためにも僕は必ず、さっき言ったことを実行しなければならないと今一度心に誓った。

ありがとうございます

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