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憎まれ救世主 ~優しき青年が授かったのは、憎まれる程に強くなる力~  作者: お米うまい
第一章 旅立ちの前に

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第90話 ベッカ、脱ぐ

 サラマンドラ国の城にて。


「ベッカ、入るぞ」


 研一はノックをする事もせずに、女騎士であるベッカの部屋の扉を開ける。


 女性の部屋に入るのに配慮も何もない対応だが、これは別に研一がベッカの事を邪険に扱っているという訳ではない。


 むしろ事実は逆。


 憎まれる程に強くなるというスキルを持っている研一としては、悪逆非道で女狂いな救世主と思われていた方が都合が良く、事情を知らない人間が見る可能性がある場所では傍若無人に振る舞っており――


 それは研一を悪人ではないと知っており、裏で協力してくれているベッカ相手だからこそ、他の人には出来ないような大胆な事をしているのだ。


 ――こうして研一が無遠慮に部屋に入る相手なんて、ベッカとロザリーくらいである。


「すぐにでも楽しみたいのは解かった。だから、せめて扉だけは閉めさせてくれ」


 だが、それが思わぬ事故を生む事も珍しくない。


 例えば今回のように、偶然にも着替えの最中に部屋に入ってしまう事などが、その典型だろう。


 しかも、このサラマンドラ国には下着の概念がない為、脱ぎかけの状態では大事な部分はどこも隠れておらず、完全に丸見えであった。


「物分かりがいいじゃねえか……」


 すぐに土下座でもして謝りたい研一であったが、ここで謝っては自分の演技もベッカの協力も全て無駄になってしまう。


 内心の気持ちを押し殺して、勤めて冷静に演技を続けながら、扉を閉めて部屋に入る。


「そんな顔をするな。別にお前になら見られたって怒る気なんて少しもないさ」


 扉を閉めると同時に辛そうに顔を歪める研一の姿に、ベッカは気にするなとばかりに笑って。


 それこそ本当に気にしてないとばかりに、着替えを再開するように服を脱ぎ捨てる。


「いや、そこは服を着るところだろ……」


「もし他に誰かが入ってきた時、この恰好の方がそれっぽいだろう?」


「そうなのかもしれないけど――」


 確かにこれならば研一がベッカを弄んでいるように見えるかもしれないが、そもそもベッカはサラマンドラ国では相当に高い地位に居る人間だ。


 悪党の演技をしている研一以外に、伺いも立てずに入ってくる人間が居るとも思えない。


「ふふ、私みたいな女の裸でも少しは気にしてくれるのか?」


「私みたいなって。それは謙遜にも程があるだろ」


 戸惑う研一を更に惑わすようにベッカは、裸のまま見せ付けるように身体を晒す。


 はっきり言ってベッカは美人だ。


 鋭い目付きに加えて戦闘を生業にしている者特有の威圧的な雰囲気が身体中から漂っており、可愛いという言葉こそ浮かび難いものの、整った顔立ちは間違いなく美人と呼ぶに差し支えない上に――


 鍛えられた身体は腕も足も無駄な肉なんてないとばかりに引き締まり、腰だって括れているというのに、胸だけは豊満に膨らみを形作っているのだ。


 これ程のプロポーションの持ち主は、地球で探そうと思えば世界のモデル雑誌を集めて、片っ端から目を通して見付かるかどうかだろう。


「ありがとう。お前がこんな形で訊ねてくるのは、あの時以来だな」


 まるで誘惑でもするかのようにベッカが自分の肌を晒したのは、色々な理由はあったものの、一番はベッカ自身の覚悟を決める為の時間稼ぎのようなものであった。


「本当、あの時は驚かされたよ。お前は誰にも頼らず、自分の身を削るような生き方しか出来ない類の人間だと思っていたからな」


「……一人で意地張って守りたいモノを失うのは、もう二度とゴメンだからな」


 マニュアルちゃんの一件で、研一は独りで戦い続ける事の限界を知った。


 その上でテレレのように上手くすれば、協力し合える可能性だって十分にあると思い至り、ベッカに全ての事情を話したのだ。


 ――そもそもベッカは事情を盗み聞きして知っていたものの、研一自身はベッカに事情を話した事なんて、それまで一度もなかった。


「前にも聞いたが本当に協力者は私だけで良かったのか? 姫様の方が力も立場も上だし、お前の力になれる事は多いと思うが……」


「お姫様は、優し過ぎるからさ。多分俺の事情とか全部知ったら、申し訳無く感じて必要以上に俺に協力し過ぎたりしてしまいそうだし――」


(何を考えているか解からなくて、イマイチ事情を話す気が起きないというか……)


 ベッカは研一の事を悪人ではないと宣言しに来てからというもの、表立っては研一を悪党のように扱いこそすれ、一度だって悪感情を向けてきた事はないのだが――


(何かあのお姫様。告白してきてからの方が、思い出したように物凄い勢いで悪感情向けてくるんだよね……)


 研一を本気で殺そうとしていたベッカを遥かに超える次元で、研一に何かしらの悪感情をサーラは度々飛ばしてくるのだ。


 これで信用して事情を全て話す勇気は、研一には湧いてこなかった。


 ――サーラとしては自分だって事情を知っているなんて言い出せない状況に苛立ち、そんな中でセンにばかり構っている研一に嫉妬や独占欲のような何かをぶつけているだけなのだが。


 サーラの心の内を知らない研一からすれば、殺意を超える悪感情を突然飛ばしてきているだけでしかない。


「どうした、急に黙り込んで?」


「ああ、いや。国を背負っているのに、これ以上、重荷を背負わせるのもアレだからね」


 それに何を考えているか解からないから協力を求め難いという部分も本心なら、サーラにこれ以上、余計な負担を掛けたくもないというのも、紛れもない研一の気持ちでもある。


「ああいう優しい人間はさ、俺みたいな面倒臭い事情抱えた人間になんて必要以上に関わらない方がいいんだよ」


 ベッカが優しくないという訳ではないが、研一の目にあまりにサーラは一生懸命で頑張り過ぎているように見えてしまい――


 変な苦労とかを掛けないように、自分から遠ざけておきたいという想いが先行してしまう。

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