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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第二章 ドリュアス国のテレレ

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第50話 心詠みの巫女、テレレ

「テレレ様! こんな奴の助けなんて借りられません!」


「確かに。いくら力があると聞いていても、信用出来ない者と共に戦う事は出来ん……」


 大きなテントの中に、怒声が響き渡っていた。


 テント内にはテレレを含めたドリュアス国の有力者達が揃っており、研一の処遇に付いて話し合っていた。


 ――ちなみに研一は植物の蔓のような物で両手両足を縛られた状態で、テントの隅に座らされている。


「ま、待って! 確かにこの男は女と見れば邪な目で見る禄でなしよ。挙句の果てに魔族の侵攻から国を守ってほしいならサーラ様に身体を差し出せと迫って、手籠めにした下種《ゲス》でしかないけど――」


 そんな中、意外にも声を張り上げて抗議していたのはロザリーであった。


「それでも強さだけは本物だし、その、頼まれた者さえ差し出せば魔族達とは、戦ってはくれるのよ! ドリュアスが魔族に滅ぼされない為には、不本意でもこの悪魔の力を借りるしかないわ!」


 ここで何の貢献もしないまま、研一が帰らされるような事になっては、援軍として派遣したサーラの顔が潰れると思っているのだろう。


 微妙にフォローになってない言葉を、ロザリーが必死で並べていく。


(何か非常に申し訳ない……)


 研一としては別に協力なんて取り付けられなくてもよかった。


 むしろ、テレレを襲おうとした変態として毛嫌いされたままの方が有難いまである。


(もう良い感じに憎悪溜まってきてるし、下手にガッチリと協力体制になって一緒に過ごしてたら、ボロが出るかもしれないものなあ……)


 魔族が襲撃してくるまでの間、生活していくだけの場所と食糧さえどうにか出来るならば、それ以上は求めていない。


 前回のベッカの件から考えるに、変に期待感などを抱かれないよう、魔族が来たら人知れず勝手に戦いに行くのが一番いいんじゃないかとさえ思っていたからだ。


「ロザリー(そこの女)が言うとおり、気に入った女を好きにさせてくれるって言うなら、クソ雑魚の魔族くらい、いくら来たってボコボコの返り討ちにしてやるぜ?」


 とりあえず、差し当たっては悪印象《ヘイト》稼ぎだ。


 縛られたまま出来るだけ悪党めいた表情を見せつつ、下卑た発言をしていく。


「さっき水浴び場で見させてもらったが、そこのテレレって女はちょっと肉付きは悪いが、綺麗な肌してやがったからな。こういう女を乱暴に扱って白い肌に傷が付いていくのが堪らねえんだよ」


 おそらく一番の要人であるテレレを貶めるような事をすれば、手っ取り早く周囲から悪意を得られるだろう。


「貴様! テレレ様になんて無礼な口を!」


「こんなふざけた奴の助けなんて必要ありません! テレレ様、こんな人間を救援に寄こしたサラマンドラ国に、すぐにでも抗議すべきです!」


 狙い通り、口々に研一への怒りや不信の言葉が飛び交い始め。


 悪意の感情が集まっていくのを感じる研一であったが――


(……何だ、アイツ?)


 まるで研一の言葉に同意するように一人の男が、したり顔で頷く姿が見えた。


 研一より一回りくらい年齢が高そうな、筋骨隆々とした体格の、どこか粗暴な雰囲気を感じさせる男だ。


 この粗暴そうな男からは敵意や嫌悪の感情が送られてこない。


「皆、黙って」


 研一が訝しんだ瞬間、静かだが妙に通る声がテント内を走った。


 話し合いに参加する様子も見せず、ずっと座って黙っていたテレレの声である。


「このままじゃ、協力し合うのは難しい」


 それだけ呟くと、テレレは散歩でもするような気楽さで歩き出したかと思うと、縛られている研一の前に座る。


 そして、覗き込むように研一の目を見て告げる。


「ねえ? どうしてアナタは嘘ばかり言うの? アナタだけだよ、嘘を吐いてるの」


 透き通るような蒼い目が真っ直ぐに研一を映す。


 まるで吸い込まれそうな雰囲気に気圧されながら、それでも呑まれる事なく悪党演技を研一は続けようとする。


「はあ? 訳の解からない言いがかり付けてんじゃ――」


「何か誤魔化してるなら無駄よ。テレレ様は嘘を見抜く力を持っているの」


(そういう事は先に教えておいてくれよ!?)


 だが、ロザリーから掛けられた言葉に、迂闊に口を開けなくなった。


 どうしたって嫌われる為には嘘を吐くくらいしか出来る事がないのに、それを封じられてしまったからだ。


 ――事実を言って嫌われるには、テレレに不満なんてないというか、そもそも何も知らない。


「アナタは別に私の水浴びを覗こうとは思ってなかったんでしょ? 私が入ってなんて誘ったから服を脱いだだけ。誤解だとも私に説明しろとも言わず、抵抗もせずに捕まったのは、どうして?」


「……」


 戸惑っていたのもあるが、変態として捕まった方が研一としては都合が良かっただけ。


 けれど、そんなの答えられる筈がない。


「どのくらいの女の子でアナタの相手をすれば皆を守ってくれる? 私にどんな事をしたいの? それとも、どんな事をしてほしいの?」


「…………」


 これにも答えられない。


 別に女の子なんて差し出されなくても守る気だから、どこまでが嘘判定になってしまうか解からないし。


 テレレにしたい事も、してほしい事もない。


 あえて言えば憎んでほしいくらいだ。


「あんな事言ってたのに答えられないの? 本当は私の身体なんて貧相で抱きたくもならなかったんだ……」


「そんな事はねえ。凄く綺麗だったぜ」


 それでも悲しそうな顔をされると無視し続けるのも憚られて。


 これは嘘じゃないだろうと言葉を返す研一であったが――


「……半分くらい本当。ちょっと悔しい」


 どうやら抱きたいという部分が嘘に引っ掛かってしまったらしい。


 そしてテレレの嘘を見抜く力に対して半信半疑であったが、今回のテレレの反応を見て、本当にそういう力を持っているのだと確信させられた。


「優しいね。どんな質問してもだんまりなのに、私が傷付いているのを見たら黙ってられないんだ?」


「…………」


「ちょっと照れた。可愛い」


(伊達に国の党首なんて、してないって事だろうね……)


 くすくすと無邪気そうにテレレが笑う姿に、してやられたとばかりに研一は顔を歪める。


 屈託のない笑顔とは裏腹に、まるで小悪魔にでも揶揄《からか》われているような気分であった。


「嘘を吐くのは聞かせられない事情があるから? 周りに人が居なかったら、もっと素直に、お話《はなし》出来る?」


 テレレの言葉に研一は無言で頷いた。


 言葉が見抜かれてしまうのなら、もう身振り手振りで応対するしかないと思ったのだ。


 ――と言っても、縛られたままなので首を動かすくらいしか出来なかったが。


「解かった。皆、外に出て」


「で、ですが、その……」


 テレレが迷う事無く周囲に指示を飛ばすが、誰一人として動けない。


 いくら縛られて大人しくしていても、テレレに邪な目を向けていると宣言した挙句に、何か隠し事までしていると判明しているのだ。


 そんな男と自分の国の党首を、二人っきりになんてさせられる訳もない。


「大丈夫、この人に無理やり私をどうこうする気はない。それとも私の言葉が信じられない?」


「わ、解かりました。テレレ様が、そこまで仰るのならば……」


 だが、テレレは党首として相当に信頼されているのだろう。


 念押しされるように言われれば、逆らえないようだった。


「おい、お前等。こっちに来い!」


「きゃあっ」


「自分で歩けるから離すのです!」


 テレレの指示に従い、ポツポツと人が出ていく中。


 下手に研一を庇い立ててスキルの成長の邪魔にならないようにと黙り込みつつ、研一を見守り続けていたセンとマニュアルちゃんを、男が捕まえて連れ出そうとする。


(マズイ……)


 テレレが何を言ったところで、現実問題として水浴び中に侵入しようとした挙句に、女達を差し出せと喚き散らした狼藉者が研一なのだ。


 その仲間であるセンやマニュアルちゃんだって、良い印象を持たれている訳がないし、研一が暴れ出した時の為に人質として確保しておくという意味もあるだろう。


(手荒に扱わないと思いたいけど――)


 目の届かないところに連れて行かれる事だけは、どうしても避けたいが――


 怪しさしかない研一に対して、その警戒は当然の対応とも言える。


「待って。ロザリーと救世主様の仲間だけは残って。後の皆は全員外に出て」


 どうするかと迷う研一の気配を察したように、テレレが追加で指示を飛ばす。


 周囲が研一陣営になるのだから、豪胆を通り越して考えなしと思われても仕方ないだろう。


「て、テレレ様。それは、さすがに……」


「もう一度言う。私の言葉が信じられない?」


「い、いえ。申し訳ありませんでした」


 案の定、心配する声が上がるが――


 テレレが不愉快だと言わんばかりに睨み付けると、即座に引き下がっていく。


(人形みたいに綺麗な顔してるのに、物凄いな、この人……)


 その迫力に圧倒され、どこか他人事の気持ちで眺める事しか出来ていなかった研一であったが――


「これで素直に、お話(はなし)出来るね。救世主様」


 凄く綺麗に微笑み掛けてきたテレレの姿に。


 次は自分がテレレの相手をする番なのだと自覚させられ、冷や汗を掻いたのであった。



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ロザリーはまずい
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