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憎まれ救世主 ~優しき青年が授かったのは、憎まれる程に強くなる力~  作者: お米うまい
第一章 導入

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第45話 千年近く糞スキル

 私の名はマニュアルちゃん。


 人間から悪感情を向けられる程に強くなるという、本来なら魔王と呼ばれる存在に付与される筈の超絶無敵の最強スキルだったのですが――


 人間に付与されるようになってからは、ただの使い難い糞スキル扱い。


 実際、マトモに扱えた人間なんて、誰一人居なかったゴミスキルなのです。


(御主人様だって、最初はそうだったのです……)


 何度も何度もこんなスキルは嫌だったと、もっとマシなスキルだったら良かったのにという思いは痛い程に伝わってきてました。


(いつもの事だなんて慣れていたつもりでも、それでも辛かったのです……)


 私だって本当は魔王とやらに付与されて、最高のスキルだなんて思ってもらえるのが一番いいのに、いつもいつも私だけ悪者扱い。


 好きで人間に付与されている訳でもないのに、どうしてこんな風に思われないのかとスキルだけじゃなく心まで腐っていく日々。


 私だって、こんな人間の使い手なんて望んでない。


 さっさと死んでくれたらいいのになんて、今思えば無礼過ぎて消滅してしまいたいような事まで思ってしまっていたのです。


(ですが、御主人様は今までの人間達とは何もかも違っていたのです!)


 私の目が狂っていたのを認めざるを得ません。


 私は今回のスキルの担い手は、どちらかと言わないでも外れの人種で、最初の魔族との戦いで死んで終わりだと思っていました。


 事実、半端な悪事しか重ねていなかったせいで力を失ってしまって、このまま死んでしまうのだろうとしか思っていなかったのですが――


(自己嫌悪によるセルフ強化で窮地を乗り切るだなんて! あんな事が出来たのは数百年私を使い続けた人間を見てきましたが、初めてだったのです……)


 発想だけならば、浮かぶ人間は居ない事もなかったのです。


 ですが、その多くが本当の意味では自分自身を憎む事が出来ずに大した力なんて得られませんでした。


 目的の為なら己すら心の底から憎める鋼の精神を持ちながら。


 あの土壇場でこんな裏技めいた発想に至れる柔軟性。


 何より――


(反則めいた強さのスキル……)


 一歩間違えば死んでいた窮地の中、使い難いスキルである私の責任にしない高潔な魂。


 こんな人間は数百年の歴史の中で初めての事でした。


(あの時駆け巡った感覚は今でも忘れられないのです……)


 魔王に付与され、世界中の人間に恨まれ、恐れられていた時にすら感じられなかった高揚感。


 私という存在が暴れ狂い爆発しそうになるな程の興奮。


 その時になって、ようやく私は自分自身が生まれた意味を知ったのです。


(私はこの闇野研一という偉大な御主人様に出会う為だけに、今まで苦痛の時を過ごしてきたのだ、と……)


 人間には使い難いスキルだと解っている癖に、手の一つも加えようとしない女神なんて、想像主だろうが最早どうでもいいのです。


 私が尊敬し、全てを賭けて尽くす存在は唯一人。


 聡明にして鋼の精神を持つ御主人様だけなのです!


(それなのに、どうして――)


 そんな御主人様の隣には私だけ居れば十分な筈。


 御主人様だって、そう思ってくれたからこそ私を人間として形作ってくれたんだと思っていたのですが――


(そうでないのなら、私は御主人様の服とか装飾品になって、いつでも傍に居てお守りしたかったのです……)


 神々の作ったスキルは一定以上の成長を遂げれば、物体として世界に顕現出来るのですが、それは担い手の願望によって姿を変える。


 私を顕現出来た者のほとんどは、内心では恨まれる事への恐怖が強かったのか、身を守る為の防具として私を世界に生み出してきていたのです。


 けれど、御主人様は違いました。


(御主人様が私に求めたモノは、ずっと隣に居てくれる人間……)


 残念ながら人の形をしているだけで、本当の意味で御主人様の求める存在になれてないのは、私だって解っているのです。


 だから人間を隣に置くというのなら、悔しいですが諦めるしかないとは思うのです。


(けど、あの魔人だって私と同じで人間なんかじゃないのです!)


 それならば隣に置くのは私だけで十分な筈。


 不合理です。


 訳が解からないのです。


 何でアイツだけが抱き締められたり撫でられたりするんですか。


(そこは私が御主人様に頂いた場所の筈なのに!)


 私こそ誰よりも御心を理解して、寄り添える存在。


 こんな世界の奴等なんて全て踏み躙ってでも、少しでも早く願いを叶えたいという御主人様の想いを、真に理解しているのは私だけなのです。


(そうです。そうして願いを叶えた御主人様は愛した伴侶を取り戻して、こんな世界なんて捨てて元の世界で二人で暮らしていく事だけがが――)


 そこに私の居場所なんてないのに?


(……黙るのです)


 あの方が元の世界に戻れば、私の事なんてゴミスキルとしか思う担い手しか居ませんよ?


(黙るのです!)


 それでも人型の私は満足なのですか?


(黙れ!)


 ――


 ――――


 ――――――。


(あれ? 私は何を考えていたのです?)


 偶にスキルでしかなかった時の思考と人型の思考が混ざって、記憶が飛んでしまう事があるのですが――


 どうやら、またやってしまったみたいなのです。


(ただでさえ私なんて使い難いゴミスキルでしかないのです。こんな変な不具合を抱えている事だけは、絶対に御主人様にバレないようにしなければ……)


 人型の私なんて、邪魔な存在でしかない。


 そんな事を考えながら。


 御主人様に纏わり付いている不敬な魔人を引き離すには、どうすればいいのかと頭を働かせていくのでした。

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