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憎まれ救世主 ~優しき青年が授かったのは、憎まれる程に強くなる力~  作者: お米うまい
第五章 全ての黒幕

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第214話 隠し切れなかった優しさ

「まだまだあるよ」


 研一の言葉を信じたい気持ち。


 けれど、もし事実ならどれだけの迷惑を掛けてしまったのかという想いで揺れ動き、黙り込んでしまうミリティに追い打ちを掛けるように研一は言葉を紡いでいく。


「解雇した正規兵だって、反逆されてもおかしくないのに全員何もせず放置。俺達が国に入った時だって、本当なら魔族に差し出さないといけない獣人達を、血眼になって探して捕まえようとしてないとおかしい筈だろ? それなのに必死で探していたのは、救世主の俺だけ」


 突っ込み出せば、あまりにもキリがない。


 こんな状態でミリティ達獣人を魔族に差し出す代わりに、国の安全を得ようとしていたなんて本気で言っているなら、怠惰というにも程がある。


「これだけなら国があまりに駄目過ぎて、やる気がなくなっていた可能性もあった。実際、俺達の前では気怠そうで、ずっと投げやりな態度だったしね」


「そうでござる! 拙者も親友だと思っていた頃から、随分と人が変わってしまったと思っていて――」


 親友の心の内を何も解かっていなかった。


 それを認めたくなくて、縋るようにリティアが駄目になっていたという説に縋ろうとするミリティであったが――


「けど、いつもやる気なさそうで投げやりに見えたリティアが、たった一つだけ。熱心に動き回ってた事があるんだ」


 研一は、それは有り得ないんだとばかりに、ミリティの言葉を切り裂く。


 何もかもにやる気がないと周囲を欺き続けたリティアが、それでも隠し切れなかった綻び。


 研一がミリティを黒幕の一味だと思った理由が、そこに全てあるのだから。


「どうしてリティアはさ、城に案内した時、俺達とミリティさんの部屋を分けたんだろうな。俺が女狂いの変態野郎だって思ってて機嫌を取る気なら、むしろ俺達とミリティさんの部屋は同じにするべきだろう?」


 当たり前のように研一とセン、ミリティという部屋分けにされたし。


 研一の中でも、それが自然の割り振りだから気にならなかったが、本当にミリティの事をどうでもいいと思っているのなら、部屋なんて分ける訳がない。


 むしろミリティを差し出すように同じ部屋にした方が、変態男だったなら大喜びだったろう。


「その後は荷物を置いたと思ったら休む暇もなく、風呂に案内だ。多分、ミリティさんが襲われるような時間を与えたくなかったんだろうね」


 そう考えれば、わざわざ研一が入った時に鍵ってリティアが風呂に入ってきた理由にも、何となく察しが付くというもの。


 おそらくだが、自らの裸体で研一を誘惑して、精力を搾り取ろうとでもしていたのだろう。


 少しでもミリティに向ける性欲が減るように。


「あ、いや、そんな……」


 もうミリティに研一の言葉を否定する事なんて、出来なかった。


 いや、そもそも。


 親友の気持ちにずっと気付いて上げられなかった事を認めたくなかっただけで、最初から心の底から否定なんて出来ていなかったのだから。


「俺も悪党を演じて長いからかな。何となく解かるんだよ。次にリティアがやろうとしている事が、何なのかさ」


 だから急がないと、なんて付け加えつつ、研一の顔に焦りが浮かぶ。


 急速に力が失われていた。


 この力が消えていく理由が想像通りなら、事態は限りなく最悪に近いからだ。


「やろうとしている事、でござるか?」


 感動や申し訳なさで心がグチャグチャになって、他に何も考える余裕がないのだろう。


 オウム返しに訊ねてきたミリティに、研一は誤魔化す事無く、はっきり告げた。


「反獣人派共を道連れに死ぬ気なんだよ、あの女は」


 今、研一以外にファブリス民の悪意を集める可能性が高い人間となれば、魔族の口車に乗って防衛の要である獣人達を追い出した、反獣人の人間達であり――


 尤も危険なのは、その旗頭にして扇動者と言える立ち位置に居た、リティアだろう。


「くっ。まさか獣人達が街の者と手を組んで、我々を待ち構えているとは……」


「そろそろアロガンス様が救世主を倒し、ミリティ嬢を喰らっている頃。ここは合流して、万全の態勢でもういち、ど?」


 そして、悪い事と言うのは重なるモノらしい。


 予想外の獣人達の抵抗に遭い、一時撤退してきたのだろう。


 態勢を立て直すべく、下がってきた魔族軍と鉢合わせてしまう。


「馬鹿な、アロガンス様達がやられたというのか!?」


「いや、だが大分魔力は消耗しているようだ! アロガンス様達の犠牲を無駄にしない為にも、我等で救世主を討ち取るぞ!」


 しかも、力が落ちている研一の姿を、アロガンス達との死闘の果てに消耗したものだと考えたらしい。


 弔い合戦だとばかりに、士気高々に魔族軍が襲ってくる。


「ちくしょう、ただでさえ時間がないってのに!」


 力が衰えてきている今の研一では、軽く蹴散らすどころか、倒せるかどうかさえ怪しい。


 だからって立ち止まる理由は微塵もない。


「ミリティさん、協力してくれ! 一気に片付けるぞ!」


「心得たでござる!」


 研一は抱えていたミリティを下ろすや否や、自らの危険をも省みず、切り札を発動させるべく動き出す。


 誰かの為に自分を犠牲にするような女を見殺しにするなんて、絶対に認めないという覚悟と共に。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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