第199話 研一、超絶変態大作戦!
「道理で拙者が迫っても、逃げるだけだったでござるか……」
城に戻った研一は、ミリティに事情を話す事にした。
というのも、物扱いしたり戦いが終われば好き放題してやるなんて、研一的には精一杯の悪党アプローチをしてきたというのに。
未だ、ミリティからは悪意の一つも流れてこないのである。
これ以上ミリティを罵倒したりして悪意を得ようとするのは、時間の無駄。
そう判断した研一は、この国での協力者をミリティにすると決めたのであった。
――信用出来る上に戦力的に考えて、これ以上の協力者は見付からないだろうと考えての事であった。
「信じてくれるのか? あれだけ酷い事言ったし、今更都合の良い話だと思うんだけど――」
「さっきも言ったでござるが、むしろ納得したでござるよ。拙者に手を出していないのも気になったでござるが、乱暴そうな態度の割に誰一人、殺さなかったでござるし」
「そ、そうか。信じてくれてありがとう」
(いやいや、そりゃあ衛兵達の人とか色々とアレだと思う人は居たけど、殺さきゃいけない程の人なんて、この国に来て会った覚えないから!)
思わず突っ込みそうになる研一ではあったが、控えめな態度のせいで忘れがちだが、ミリティの異名は最強の暗殺者。
出会った時も問答無用で殺そうとしてきたし、死生観が違うのだろうと、改めて実感する。
「それよりも、でござるよ!」
研一が価値観の違いに想いを馳せている事に気付きもせず。
ミリティは大きな声を上げたかと思うと、目をシイタケのように輝かせながら、研一の手を握って叫ぶ。
「そんな悪心に呑まれても仕方ない力を持ちながら、拙者達を必要以上に傷付けようとしない心遣い、拙者、感動したでござる!」
「ど、どうも……」
「それで今になって伝えたという事は、拙者に何か協力出来る事があるのでござろう! さあ、主様、ご命令を!」
「ぬ、ぬしさま? ああ、いや、それはともかく。実は――」
あまりの勢いに押されて相槌を打つだけになっていたが、願ってもない展開。
魔族との戦いに向けて、国中から悪感情を集めていきたい旨を、研一はミリティに伝えた。
「なるほど。それなら拙者に良い案があるでござるよ!」
そして、自信満々に告げられたミリティのアイディアに、最初こそ躊躇してしまう研一であったが――
結局、それ以上に自らの印象を急激に悪くするアイディアも思い浮かばず、そのトンデモアイディアを実行する事にしたのであった。
〇 〇
「いやあ、天気が良い日は、散歩に限るぜ」
ミリティに全てを打ち上げた翌日。
研一はセンとミリティを連れて、街中を練り歩いていた。
とはいえ、それは散研一が口にした散歩という穏やかな響きからは程遠い、あまりに非日常な光景であった。
「あ、主殿。部屋に帰ればいくらでもご奉仕するでござる。だから、どうか衆人環視の中で、このような戯れは――」
というのもミリティは首輪に紐を付けられた上に四つん這い状態で、研一にペットよろしく引かれており。
服装も、普段の忍び装束より更に露出度の高い、官能的な物に変わっていた。
――そんな二人の後ろを、センが普段の奴隷の演技で黙って付き従っていたが、普段より心持ち、視線は冷ややかに見えた。
「おいおい、何だあ? ペットが一丁前に俺様に命令たぁ、随分と偉くなったじゃあねえか」
真昼間から何をやってるんだと思うかもしれないが、これこそがミリティが考えた、研一の悪評を一気に上昇させる手段。
題して、『救世主、噂以上の変態作戦』であった。
「あ、主殿。後生です。どうか、このような戯れは、二人の時だけに……」
羞恥で顔を赤くし、消え入りそうな声で告げるミリティだが、実は演技ではない。
自分で提案してみたものの、いざ実際にやってみると想像以上に恥ずかしくて、もう心が折れそうになっていたのだ。
だが――
(なんて迫真の演技なんだ……。これはミリティさんの努力を無駄にしない為にも、俺も全力で頑張らないと!)
まさかミリティ本人から、こんなイカレタ提案をしておいて、三十分も経ってないのに限界が来ているとは、研一は露にも思わない。
――後ろで見ていたセンは気付いていたが、ミリティに助け舟を出す理由はないし。
今後の為に研一が力を付ける事自体は賛成なので、あえて何も言わずに事態を見守っていた。
「へえ、止めてほしいんだ」
ミリティの覚悟に応えようと、更に悪人面を強くしていく研一。
それは事前打ち合わせしていた筈のミリティですら、本気にしか見えない程に、嫌らしく下卑た表情であり――
「家に籠って俺の相手させてるんじゃ可哀想だと思って、外に連れ出してやった俺の気遣いを無駄にしたい、と。いやあ、ご主人様、傷付いちゃったなあ」
「あ、あぅ。それは、その――」
羞恥心で限界になっていたミリティは、演技である事さえ忘れて言葉に詰まる。
もはやこれが研一に悪印象を与える為の茶番ではなく――
どうしようもない弱みを握られ、ペットにならなければならないと、本気で錯覚し始めてすらいた。
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