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憎まれ救世主 ~優しき青年が授かったのは、憎まれる程に強くなる力~  作者: お米うまい
第二章 殴り込め、ファブリス国へ

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第188話 悪辣非道の入国者

(ここが鍛冶の国、ファブリスか……)


 あれから研一は迷う事無く、ファブリスの入口近くまで辿り着く事が出来た。


 別に目的地に迷わず辿り着ける能力に目覚めたとか、センがミリティの記憶を読んでファブリスの場所を教えてくれたとか、そういう訳ではない。


(何と言うか、確かにミリティさんは党首向きじゃないのかもしれないな……)


 研一が間違った方向に進みそうになる度に、「そっちじゃないでござるよ」なんて、ミリティが逐一、軌道修正してくれたからだ。


 ファブリス国に研一が行けば困るというなら、不興を買わない程度に遠回りの道を教えるなり、研一が間違った道に進んでも、放置していればいい。


 それが出来ない辺り、あまりにミリティは素直過ぎると言えるだろう。


(今まで会った党首の人達の中にも素直で真面目な人は居たけれど、それでも多少の政治的な駆け引きは出来てたし、もし党首になるなら、その辺の頭が回るか、汚れ仕事が得意な人辺りが副官に居ないと駄目だろうなあ……)


 もし本当にファブリス国がどうしようもない人間の集まりで、ミリティが次の党首になる流れになったなら。


 その辺の腹芸は、ウルスス辺りが出来るのだろうか、なんて研一が考えていた時だった。


「おい、そこの奴隷のような女を連れた男! 止まれ!」


 入口だろう門に近付いた瞬間、全身を金属鎧で覆い、重そうな槍を持った重装備の男に呼び止められる。


 おそらく門番か何かだろう。


 魔物や魔族が我が物顔で闊歩している世界だし、それ以前に国境。


 不審者を呼び止めるなんて当たり前の対応ではあるのだが――


「あ、何だ、てめぇ? 俺様の邪魔しようってのか?」


 研一は別に、行儀良く旅行に来た訳ではない。


 ファブリス国の住人が救いようのないゴミであろうと、勘違いで実は良い人達であったとしても、恨まれなければ始まらないのが研一のスキル。


 それならば初っ端から最悪の印象を与えるべく、あえて横暴な態度を取り、威嚇するように魔力を放出する。


「ファ、ファブリス国は現在、緊急体制を敷いており、国民以外の立ち入りを禁じている。申し訳ないが、お引き取り願おう……」


「はっ。知った事か。どけよ、木偶の坊」


 党首並みの膨大な魔力を見せ付けられてか。


 最初に呼び止めた時に比べて、随分と弱々しい態度で静止しようとする門番を研一は押し退けると、そのまま無理やり街の中に入ろうとする。


「だ、駄目でござるよ、救世主様! せめて見張りの兵を通してリティアに取り次いでもらうとか、もっと穏便に――」


 さすがに、もう少しマシな訪問の仕方をすると思っていたのだろう。


 あまりの蛮行に呆気に取られて動けずにいたミリティが、慌てて研一を止めに掛かる。


「き、貴様はファーミリティ!」


 そこで初めて門番は、ミリティの事に気付いたらしい。


 猫耳で忍衣装とかいう目立つ格好の女に今まで気付かないのかと思うかもしれないが、ミリティも伊達や酔狂で忍者みたいな恰好をしている訳では、ないらしい。


 どうやら下手に動いたりしなければ、見付からない程度に気配を消せるらしかった。


「薄汚い獣人が! 国で飼ってやっていた恩も忘れて逃げ出した挙句、こんなイカレタガキを連れてくるとは! どこまで俺達に迷惑を掛ければ気が済むんだ!」


(ああ、うん。コイツは駄目だな)


 そこで門番の口から飛び出した言葉に、研一の心が急激に冷えていく。


 真面目に仕事をしているだけだし、出来るだけ穏便に済まそうなんて気は、完全に消え失せてしまい――


 虫でも払うような軽い動きで腕を振る。


「グハッ!」


 たったそれだけで重厚な鎧に身を包んだ門番の身体が紙切れのように吹っ飛び、地面に転がるが、それで研一は止まらない。


 立ち上がろうとする門番の頭の上に足を乗せ、嘲るように笑って告げた。


「おいおい、笑かすなよ。獣人が薄汚いってんなら、それに守られていたてめぇは、ゴミ以下の屑ってか? 蠅に集られるウンコか何かっていう自己申告か?」


「き、貴様……。ファブリス国正規軍の俺にこんな事して、アヴァリティア様が黙っているとでも――」


「ああ、そりゃあ丁度いい」


「何が――」


「その何だっけ? アヴァリ何とかって女? ソイツに会いに来たんだよ。てめぇをボコボコにしてたら向こうから来てくれるってんなら、その女が来るまでてめぇを蹴ったり、踏んだりしてりゃあいいって事だな?」


 そうして、研一は異世界に来て最大級に極悪な笑顔を浮かべると――


 必死で止めようとするミリティを無視して、門番を蹴り続ける。


 それは異常に気付いて、増援が十人以上やってきても止まるどころか、増援達を巻き込んでエスカレートしていき――


 門番と援軍全員が気絶し、事態を住人から知らされたアヴァリティア本人が駆け付けて来るまで、その蛮行は続けられたのであった。

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