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憎まれ救世主 ~優しき青年が授かったのは、憎まれる程に強くなる力~  作者: お米うまい
終章

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第128話 そして彼女は恋を知る

「本当に助かってよかった……」


「……全く。そういう所が貴方は卑怯なのです」


 恋人を裏切ってしまっているなんて、さっきまで後悔していた癖に。


 それでも、いざ助けた相手の元気な姿を見れば、心の底から安堵の笑みを浮かべてしまう。


 そういう部分もズルくて卑怯ではあるが――


「えっと、その……」


 そこで助けてやったんだから感謝しろなんて、堂々としていればいいのに。


 プロディの覚悟を踏み躙って勝手に助けてしまったから、恨まれるのは仕方ないとばかりに、バツが悪そうというか、申し訳なさそうにしている所こそ。


 本当に卑怯な部分だろう、とプロディは思う。


(恩の一つや二つでも着せればいいでしょうに。全く、貴方という人は……)


 そんな研一だからこそ、マキ以外に心の許さなかったプロディも惹かれて、騙されてしまったのだろう。


 けれど、欺かれた事に怒りなんて、ある筈ない。


(あの時点では、ドリュアスに送っても私が助かるかなんて解からなかった。だから貴方は、私を殺したように見せ掛けた……)


 下手をすれば大事な功績値を無駄に使った果てに、マキにだって人殺しだと誤解され恨まれ続ける可能性だってあった。


 それならプロディを殺し、マキだけでも助ける道を選ぶ方が確実だ。


 それ等全てを理解した上で、研一はあえて、殺す演技をしてでもプロディを助けたのだ。


 結局助からなかった時に、恨みのぶつけ所さえあれば、少しでもマキの悲しみが軽減されるだろうと予測して。


 ――そして、プロディの容態が安定した後で、全ての事実を研一に知らされていたからこそ。


 隣にプロディが居なくなった事に寂しさこそ覚えても、マキに悲しむ様子がなかったのだ。


(そんな貴方が、私のどこに強さを見て、どこに憧れると言うのですか……)


 はっきり言って研一の言葉は、プロディからすれば嫌味か皮肉にしか聞こえない。


 そんなに自分の事を尊敬しているなら、今回の御礼に身も心も全て貴方に捧げて上げましょうか、なんて言いながら。


 割と本気で迫ってやろうかなんて、恩知らずで身勝手な想像をしてしまう程に。


 けれど――


「その、ごめん。あの時、俺は迷ってた。マキさんを完治させられるかはギリギリだろうって解かってたから、マキさんを助けるって約束を破って、今回は応急処置だけで済ませようかって悩んだ」


「本当に貴方という方は……」


 色々悩んで黙り込んでいるプロディの姿を、責めているとでも思ったのだろう。


 言わなければバレる事だってないのに、あの時、マキの方をチラチラ見ていた理由を研一は語り始めるものだから、すっかり毒気を抜かれてしまう。


「そこで無意識に私もお嬢様も助けようとしてくれる方を、恨んだり怒ったりなんてする訳ないでしょうに……」


 これでは、どれだけ感謝しているか身体で教えてやろうか、なんて言いながら迫ってやろうかとか、一瞬でも考えてしまったプロディの方が申し訳ない気分になるし。


「…………」


 おそらく読心の力で、プロディの思考が伝わってしまったのだろう。


 そういう意味で、研一に手は出させないとばかりに。


 嫉妬と独占欲を隠しもしない女の顔をして、真っ直ぐに睨んでくるセンの姿を見せられたプロディは――


 恩を建前に迫ってやろうなんて考えた自分が、急に恥ずかしくなってくる。


(……そうですね。そんな誤魔化しの気持ちで、私が手を出していい相手でも、肉体関係を結んでいい段階でもありません)


 だって、プロディの中で大事な相手は誰かと言われれば。


 今でも真っ先に頭に思い浮かぶのは、楽しそうに笑うマキの顔であり。


 どうしたって研一は、その次でしかないのだ。


 もし関係を進めるのなら、少なくとも二人の顔が同時に思い浮かぶくらいでないと、研一本人にも、研一を想う女性達にも申し訳ないとプロディが考えたところで――


「研一様。あの時に伝えた言葉を覚えていますか?」


 改めて伝えておかないと想いがある事に思い至ったプロディは、これから大事な話をすると言わんばかりに、覚悟の込められた声を出すと――


 今も申し訳なさそうな顔をしている研一を、自分に注目するように仕向ける。


「えっと、あの時って、どの――」


「今でもお嬢様の次に好きで、同じくらい大切に思っていますよ、研一様」


 そして、一息にそれだけ伝えた瞬間。


 プロディは、今更ながら、ある事に気付いてしまう。


(……よく考えなくても、これはとても恥ずかしい言葉なのではないですか?)


 前回伝えた時は、これから死ぬと思っていたのもあって何とも思わなかったが、冷静になってみると、告白の言葉以外の何物でもない。


 別に今すぐに恋人同士になりたい訳でもないのに、これは先走り過ぎな言葉ではないかとか、そもそも告白自体がこんないきなりするものではないようなとか。


 色々な想いがプロディの頭を過ぎり、羞恥で一気に顔が赤くなっていく。


「あの、プロディさ――」


 突然、様子がおかしくなったプロディの顔を、心配そうに研一が覗き込もうとするが――


「と、とりあえず今はそれだけ覚えておいてください。正式な御礼は、また別の機会に伺わせて頂きます」


 プロディは慌てたように研一から距離を取ると。


 言いたい事は全て伝えたとばかりに丁寧にお辞儀をして、返答を待っている余裕もないとばかりに、そのまま部屋を出ていってしまった。


「えーと、怒ってる訳じゃないって事でいいんだよな?」


 覚悟を踏み躙られて勝手に助けれた事に文句を言いに来た訳でも、それでも助けてくれた事への御礼を伝えに来た訳でもないプロディの態度に。


 結局、これから自分はどう付き合っていくのが正解なんだとばかりに戸惑う様子を見せる研一であったが――


「……アレが怒っているように少しでも見えたなら、しっかり休んで、ゆっくり物事を考えた方がいいと思います」


 あそこまで露骨な態度を取られたら、読心能力なんてなくても解かるでしょうと言わんばかりに。


 どこか不貞腐れたような投げやりな態度で、センはそんな事を呟いたのであった。

これにて三部完結、そして毎日更新終了です。


次回からは日曜0時の更新となります。

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