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憎まれ救世主 ~優しき青年が授かったのは、憎まれる程に強くなる力~  作者: お米うまい
第六章 姉妹の結末

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第121話 身勝手のツケ

「え?」


 その瞬間だった。


 プロディの身体を光線のような何かが貫いた。


 それは一見するとマキの使っていたビットの放つ光線に似ていたが、高純度の魔力で出来た攻撃であり、機械のビットから出てくる代物ではなく――


 新たな襲撃者が現れた、という証左でもある。


「プロディさん!」


「馬鹿! 私なんて放って――」


 プロディが何か言うのも構わず、咄嗟に研一はプロディに抱き着くと勢いのまま地面に押し倒す。


 一瞬前までプロディの頭が在った場所を、追撃の光線が駆け抜けていく。


 ――ほんの少しでも迷っていたなら、間違いなくプロディは死んでいた筈だ。


「誰だ!」


 とはいえ、光線は身体を貫通しており、放っておけば死に至るだろう。


 研一はプロディを背に庇う形で立ち上がると、光線の飛んできた方向へと視線を向ける。


「いやいや、むしろテメェの方こそ誰さんだよって話な訳。こっちは、ディーちゃんに騙されてた哀れな哀れな被害者様よ」


「……ザインですか」


 そこに軽薄そうな男が佇んでいた。


 苦しそうに漏れたプロディの声から察するに、ザインという名前らしい。 


「俺ちゃんさあ、そこの女が国境の魔導人形壊して党首の首も取るって言うから、わざわざ自分トコの部隊を待機させてた訳よ。他の奴等は騙されているから止めとけって言ってたんだけど、そこはホラ。惚れた男の弱みってヤツゥ?」


 俺ちゃんも騙されているとは思ってたけど、無視は出来ないじゃんと付け加えて。


 軽薄な態度とは裏腹に、底冷えするような冷たい視線でザインが研一とプロディの二人を眺め見る。


「本当はさ、俺ちゃんとしては騙されてるとか、どうでも良かったんだよね。騙されてたなら騙されてたで、この国の連中皆殺しにして、ディーちゃんだけ攫って行けばいいだけの話だったからさ」


 そうすれば騙されてたなんて関係なく、他の魔族連中も黙るしかない。


 そんな言葉からは、ザインが本気でプロディの事を本気で手に入れようとしていたという思いが見え隠れしていた。


「それなのに待機させてた部隊は功を焦って俺ちゃんの命令も無しに勝手に突撃するもんだから、仕方なく一人でディーちゃん確保に出向いてきた訳。幸い、国境の方の騒ぎに兵が集まってたみたいで、すんなり潜入出来たのはいいんだけどさあ……」


 不意討ちだったとはいえ、一撃でプロディを戦闘不能にまで追い込んだ実力者だ。


 もし兵達と遭遇して暴れていたならば、騒ぎになり研一やプロディだって奇襲を受ける前に気付けたかもしれない。


 幾重もの偶然が、この男の不意討ちを成功させてしまっていた。


「ようやくディーちゃん見付けたと思ったらさあ。俺ちゃんには向けてくれた事のない熱っつい視線を、そこの男に向けてるじゃん。俺はディーちゃんが望むなら魔族を裏切ってもいいし、ここの女党首だってぶっ殺して、ディーちゃんを国で一番の女にしてやるって何度も誘ってやったのにさあ!」


「…………」


 その言葉で研一は、理解した。


 自分の命を捨てでも助けたいと願う程に大切なマキを殺すなんて言っている相手に、プロディが靡いて付いていく訳がない。


 ザインのプロディに向ける気持ち自体は、本物なのかもしれないが――


 これではどれだけ頑張ったところで、その想いが届く事はなかっただろう。


「ディーちゃんさあ! 今回の件は全部、その男と一緒になる為にやってたって事だよねえ! そんな身勝手な理由で自分の国の仲間達騙して、魔族達も騙して、こんな大それた騒ぎ起こしてさあ! 心痛まない訳!」


「……言い訳はしません。大体、似たようなモノですから」


 別に研一と結ばれる為に起こした計画ではない。


 とはいえ、身勝手な理由で国も魔族も巻き込んだという言葉には、反論の一つだって出てこなかったから、プロディは説明をしなかった。


(解かっています。これは国の未来の事にした訳でもない、マキに生きていてほし

いという私のエゴでしかないのですから……)


 もし国の未来を考えるのならば、そもそも『魔人だって安全に産めるでしょう』では、マキを助けられないと説明して、結局マキはすぐ死ぬと周囲に説明していれば、反逆すら起きていなかった。


 そのままマキが死ぬまで傍に仕え、マキが死んだ後に、誰からも認められる形で党首を継げば終わっていただろう。


 だが――


(どうして私が、こんな国の党首なんかにならないといけないのです……)


 前王に国外れの遺跡にマキと二人で押し込められ、死ぬ事を願われていたのだ。


 それを哀れに思って国の誰かが助けに来てくれたというならともかく、前王を倒すまでは誰も見向きもしてくれなかったのに。


 前王を倒した瞬間から、今までの事なんて気にもせず、マキーナ国最強の戦士だなんて囃し立て出したのだ。


(そんな奴等の為に、本当は一秒だって働きたくなんてありません……)


 マキーナ国に恨みこそあれ、思い入れなんて欠片一つだって、ある訳も無く。


 最初からプロディの世界には、マキ以外には誰も居なかったのだ。


(だから、お嬢様の居ない世界で生きていく事になんて、何の未練もなかった筈なのに……)


 それが変わってしまったのは、つい最近。


 マキの居ない世界で生きていくくらいならば、全てをマキに捧げて死のうと決めていた筈のプロディだったが――


 同じ痛みや苦しみを持つ者に、出会ってしまった。


 それこそが事件で亡くしてしまった恋人の為に、元の世界すら捨て、この世界にやってきた研一であった。


(おかしなものですね。出会ったのはザインの方が早いですし、告白だって何度もされてきたというのに……)


 どれだけ告白されても、少しだって心は動かなくて。


 プロディは自分には恋心なんてないものだと、思っていた。


 それなのに研一の過去を聞き、この世界に来た想いを伝えられてしまってからは、気が付けば研一の事を目で追うようになってしまっていた。


(そんな時でした。『魔人だって安全に産めるでしょう』が完成したのは……)


 これは運命だと思った。


 もし後少しでも完成が遅ければ、きっとマキが死ぬ事を仕方ないと割り切って諦め。


 死んでしまったマキの想いを受け継いでとかなんだと言い訳をして、研一に迫ってしまっていたかもしれない。


 そんな邪念は捨てて、進めてきた計画を実行に移せ。


 プロディは神様に、そんな風に言われたと思ってしまった。


(誰だって認めてくれない、身勝手な自己満足で終わる筈でしたのに……)


 プロディ自身、気付いていたのだ。


 装置が完成したタイミングなんていうのは、ただの偶然でしかなくて。


 半ば自棄に近い勢いで、国も魔族も自分の都合で巻き込んで。


 その果てに叶えようとしてるのだって、ただの独り善がりで自己満足な願い。


(お嬢様だって、望んでなんていません……)


 マキも言っていた筈だ。


 プロディの目的は全て解っている、と。


 あれは国を乗っ取ろうとしていた事を知っていたという意味ではなく、プロディを犠牲にしてまで生きたくないという意味であり。


 正しく目的を理解していたからこそ、マキは殺さないように戦って、必死で止めようとしていたのだ。


(でも、こんなの仕方ないでしょう……)


 身体を貫かれ、朦朧とする意識の中――


 プロディは自分の身体に、影が落ちる気配を感じる。


「…………」


 研一が何も言わず、ザインの前に立ち塞がっていた。


 恋人を助けたいなんていう自分の願いの為だけに、多くの者を騙している者として。


 プロディが大事なのは俺じゃない、なんてザインに言い訳の一つもせず――


 ただ、似た罪を背負う者を守る為だけに。


 ザインと戦う覚悟をする。


 ――プロディの目的のために、都合の良いように使われてしまっただけの被害者であり、復讐する理は向こうにこそあると理解した上で、だ。


(こんなの、好きにならずに居られないでしょう!)


 同じような苦しみを持つ研一ならば、こうして自分の味方をしてくれると、研一だけは自分の想いを理解してくれると、どこかでプロディは解かっていた。


 だからこそ――


 これ以上好きになって、マキよりも大切な人になってしまう前に、動かざるを得なかったのだ。


 このままでは、何よりも大事だった筈のマキを見殺しにしてでも、生きていたくなってしまいそうだったから。


 これ以外に。


 今まで築き上げてきた自分の価値観という世界を守る方法が、プロディには解らなかったのだ。

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