第118話 マキーナ最強決定戦、決着
「どうしたんですの? そんな事では私には指一本、振れる事は出来ません事よ」
戦いは。半ば一方的な展開になっていた。
マキが操るビットは更に勢いを増してレーザーをこれでもかと撃ちまくり、そのレーザーの雨をプロディが必死に潜り抜けて一撃を加えるのだが――
残ったビットが張り巡らせたバリアが、あまりに強固で砕く事が出来ない。
このままの状態が続けば、マキの言うとおり。
プロディはマキに指一つ振れる事も出来ず、倒されてしまうだろう。
(本来ならばビットのエネルギーが切れるまで耐えれば、それで終わりなのですが――)
とはいえ、研一をして今まで出会った中で最強だったと言われるプロディさえも圧倒する力なのだ。
無限に振るい続けられる筈がない。
事実、いくつものビットが置物にでもなったしまったように力を失い、地面に転がっているのだが――
(……ここを戦いの舞台にしたのは、失敗でした)
ピットがエネルギー切れを起こす度に、遺跡から新しい物が次々に補充されてくるのだ。
これだけでも十分、プロディを追い詰めるだけの力があるにも関わらず、まだマキの攻撃は終わらない。
ビットからのレーザー攻撃を交わし切ったとプロディが一息を吐こうとした瞬間、遺跡に仕掛けられている罠が踏んでもいないのに発動し、背後からプロディを撃ち抜こうとしたのだ。
避けるどころか、気付く事すら出来ない不意討ちの一撃。
「おっと……」
(麻酔弾ですか。当たったら一撃で終わっていましたね)
ただし、それはプロディ以外の相手ならの話。
微弱な電気を周囲に張り巡らす事で辺りの様子を把握出来る上に、雷の速さで動けるプロディはギリギリのところで回避に成功すると――
罠の操作に意識を取られて、守りが薄くなっているという僅かなに可能性に賭けてマキに雷を放つ。
「さすがディーですわね。私の監視の網を潜り抜けて魔導人形を壊していただけは、ありますわ。今のを完全に避け切るとは、想定外ですの」
だが、バリアは変わらず堅牢であった。
マキは攻撃された事なんて気にも留めずに、奇襲を回避したプロディを称える。
そこに焦りの色は一切なく――
ただ確実に仕留めるには、次はどうすればいいかと思考する、冷静な視線だけがあった。
(……致し方ありません)
マキを倒すには自身が持つ、最大最強の攻撃を仕掛けるしかない。
プロディは瞬時に覚悟を決めると、その技を発動させる。
「数には数で勝負、という事ですわね」
プロディの身体が複数に分かれていく。
雷を使い、自分自身を模した分身体を作り出したのだ。
それは次々に数を増やし、一分もしない内に百にも届かん勢いで増えたかと思うと――
「お嬢様、覚悟!」
間髪入れずにマキへと襲い掛かる。
一体一体が雷の速度を持ちつつ、並の魔族なら一撃で消し飛ばす程の威力を秘めた百近くの魔力体の襲撃。
動きこそ直線的ではあるものの、この数の暴力の前では、むしろ下手にうごかれるよりも最短で真っ直ぐに突っ込んでこられる方が遥かに厄介だろう。
けれど――
「そう来ると思っていましたわ!」
この技こそ、かつて先代の王でありマキの父親を倒した技。
当時より強く鋭くなっていたのだとしても、それでも二人に勝利をもたらした思い出の攻撃である事に変わりない。
文字通り、何度も夢に見て心に焼き付いた攻撃の軌道なんて読めているし。
長年の付き合いで呼吸のリズムだって、マキには目を瞑っていたところでプロディ以上に理解している。
「解かっているだけで止められるなら、苦労はありません!」
それでもプロディは、自らの勝利を確信していた。
この技ならマキが防御に徹したとしても削り切れるだろうし、防御に回していたビット全てを迎撃に回したところで防ぎ切れる数ではない。
結局は、迎撃されようが防御されようが自分が押し勝つと予測するプロディであったが――
「解っているから、事前に準備するのでしてよ!」
マキの叫びの呼応するように、力を失くしたように地面に転がっていたビットが光り始める。
ビットはエネルギー切れを起こし、動かなくなっていたのではなかった。
このプロディの最終攻撃を防ぐ為だけに、エネルギー切れを起こしたように見せ掛けて、地面に転がしていただけだったのだ。
「姉妹喧嘩は私の勝ちですわ!」
攻撃に使っているビット、防御に回していたビット、地面に転がっているビット。
そして、部屋にある全ての罠が一斉に起動し、分裂した全てのプロディに襲い掛かる。
レーザーの光と罠から放たれた弾丸の嵐に周囲が埋め尽くされ、それ等が晴れた時には、何も残っておらず。
マキ以外には誰も、影一つ見当たらない。
「でぃ、ディー?」
レーザーの威力は絞っていたし、弾丸だって全て麻酔弾に変えてある。
それでも雷に変換された身体では耐えられず粉々になってしまったのかもしれないと、マキが不安になった瞬間であった。
「あ、あれ。何ですの……」
急に頭が重くなり、立っている事も難しくなって膝を付く。
凄まじいまでの眠気が、マキの身体を蝕んでいた。
「……だから貴女は甘いと言うのです」
地面に倒れそうになったマキを抱き留めた状態で、プロディが姿を現す。
電気の力で光を捻じ曲げ、姿を消していたのだ。
(もし本気で殺す気で攻撃してきていたのでしたら、結末は違っていたでしょうに……)
死なない程度に威力の抑えられたレーザー攻撃しかして来ないのなら、当たるだけ当たって倒された振りをして、やり過ごす事くらい出来る。
そして、殺してしまったと勘違いして隙だらけになっていたマキに、予め拾っておいた麻酔弾を投げ付けて眠らせたのだ。
――下手に魔力を込めた攻撃をすれば、気取られて防がれる可能性が高いから不意を突くなら麻酔弾にすると、プロディは決めていたのである。
「とはいえ、これでは勝ったとは言い難いと思いませんか?」
当たっても耐えられるだけで気絶しそうなくらいには痛いし、魔力だって想定以上に消費してしまった。
そして、目的を達成するのが勝利と言うのならば――
「いきなり同意を求められてもな。何の話か、さっぱり解からないんだけど……」
まだ目的も達成していないのに研一が来てしまっている以上、まだ勝敗が付いたとは言い難く。
勝負の行方は、延長戦に持ち込まれてしまったとばかりに、プロディは今来たばかりの研一に視線を向けるのであった。
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