表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/33

4-4

 ギルドのカフェスペースは昼下がりの柔らかな光に包まれていた。冒険者たちの賑やかな声が遠くから聞こえ、活気に満ちた空間だった。悠とウルクは角の席に腰を下ろし、目の前には香り立つハーブティーが置かれている。


悠はカップを手に取りながら、静かに口を開いた。


「ウルク、少し話したいことがあるんだ。」


ウルクは頷き、彼の言葉を待った。彼の真剣な表情に、これが軽い話ではないことを察していた。


「今回のキマイラの件、不測の事態ではあったけど、俺たちだけでは本当に危うかった。それが現実だ。」


悠の言葉にウルクも同意するように視線を下げる。


「まだまだ俺たちは強くなる必要がある。そのためには、もっと修行を積まなければならない。それと……」


悠は一呼吸置いて続けた。


「もしまた何かが起きた時、二人だけで対処できない場面も出てくるだろう。その時に備えて、新たに仲間を募ることも考えていきたい。」


「仲間を……?」


ウルクが意外そうに顔を上げた。


「そうだ。冒険者としての幅を広げるためにも必要なことだと思う。それに……あの秘宝のことも気になる。どこから見つかり、誰が辺境伯領に持ち込んだのか。これは引き続き情報を集めていく必要がある。」


ウルクは真剣な表情で彼の言葉を聞き、短く頷いた。


「確かに、その通りね。私たちだけでは対処しきれない問題が増えてくる可能性もある。今後のために準備は必要だわ。」


「それで……」


悠は少し視線を彷徨わせながら続けた。


「俺は迷宮都市に行こうと思っている。そこなら、鍛錬の場も情報も仲間も揃う。だけど……」


彼はウルクをまっすぐに見つめた。


「ウルクはこの街の出身だろう?もしここに残りたいなら、俺は一人で行くつもりだ。」


ウルクは少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに微笑んだ。


「悠、同じことを考えてたわ。」


「……え?」


悠は一瞬、彼女の言葉を理解できず目を見張った。


「私もこの街を出て、もっと広い世界を見たいと思ってたの。冒険者として成長するためには、ここだけじゃ足りない気がしていたのよ。」


ウルクはカップに手を添え、熱を感じながら続けた。


「それに……迷宮都市って少し憧れるの。未知の世界が広がっていて、そこにはきっと私たちが必要としている何かがある気がする。」


悠は思わず笑みをこぼした。


「そうか。じゃあ、一緒に行こうか。」


ウルクも微笑み返し、力強く頷いた。


「ええ、これからも一緒よ。」


二人はしばし無言でハーブティーを口に運び、互いの決意を胸に噛みしめた。


「俺たちなら、もっと強くなれる。」


悠は未来への期待を込めて言葉を紡いだ。

ウルクはその言葉に応えるように微笑みながら言った。


「そうね。そして、私たちで新しい道を切り開いていきましょう。」


ギルドの喧騒がどこか遠くに感じられる中で、二人の間に流れる空気は次第に高揚感を伴った。それは、新たな旅路がすぐそこに迫っていることを予感させるものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ