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ギルドのカフェスペースは昼下がりの柔らかな光に包まれていた。冒険者たちの賑やかな声が遠くから聞こえ、活気に満ちた空間だった。悠とウルクは角の席に腰を下ろし、目の前には香り立つハーブティーが置かれている。
悠はカップを手に取りながら、静かに口を開いた。
「ウルク、少し話したいことがあるんだ。」
ウルクは頷き、彼の言葉を待った。彼の真剣な表情に、これが軽い話ではないことを察していた。
「今回のキマイラの件、不測の事態ではあったけど、俺たちだけでは本当に危うかった。それが現実だ。」
悠の言葉にウルクも同意するように視線を下げる。
「まだまだ俺たちは強くなる必要がある。そのためには、もっと修行を積まなければならない。それと……」
悠は一呼吸置いて続けた。
「もしまた何かが起きた時、二人だけで対処できない場面も出てくるだろう。その時に備えて、新たに仲間を募ることも考えていきたい。」
「仲間を……?」
ウルクが意外そうに顔を上げた。
「そうだ。冒険者としての幅を広げるためにも必要なことだと思う。それに……あの秘宝のことも気になる。どこから見つかり、誰が辺境伯領に持ち込んだのか。これは引き続き情報を集めていく必要がある。」
ウルクは真剣な表情で彼の言葉を聞き、短く頷いた。
「確かに、その通りね。私たちだけでは対処しきれない問題が増えてくる可能性もある。今後のために準備は必要だわ。」
「それで……」
悠は少し視線を彷徨わせながら続けた。
「俺は迷宮都市に行こうと思っている。そこなら、鍛錬の場も情報も仲間も揃う。だけど……」
彼はウルクをまっすぐに見つめた。
「ウルクはこの街の出身だろう?もしここに残りたいなら、俺は一人で行くつもりだ。」
ウルクは少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに微笑んだ。
「悠、同じことを考えてたわ。」
「……え?」
悠は一瞬、彼女の言葉を理解できず目を見張った。
「私もこの街を出て、もっと広い世界を見たいと思ってたの。冒険者として成長するためには、ここだけじゃ足りない気がしていたのよ。」
ウルクはカップに手を添え、熱を感じながら続けた。
「それに……迷宮都市って少し憧れるの。未知の世界が広がっていて、そこにはきっと私たちが必要としている何かがある気がする。」
悠は思わず笑みをこぼした。
「そうか。じゃあ、一緒に行こうか。」
ウルクも微笑み返し、力強く頷いた。
「ええ、これからも一緒よ。」
二人はしばし無言でハーブティーを口に運び、互いの決意を胸に噛みしめた。
「俺たちなら、もっと強くなれる。」
悠は未来への期待を込めて言葉を紡いだ。
ウルクはその言葉に応えるように微笑みながら言った。
「そうね。そして、私たちで新しい道を切り開いていきましょう。」
ギルドの喧騒がどこか遠くに感じられる中で、二人の間に流れる空気は次第に高揚感を伴った。それは、新たな旅路がすぐそこに迫っていることを予感させるものだった。