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翌朝、宿の食堂で簡単な朝食を済ませた悠は、ギルドへと向かった。到着すると、既にウルクが待っていた。彼女はどこかスッキリした表情をしており、昨日までの迷いが晴れたようにも見える。
「おはよう、ウルク。早いな。」
「おはよう、悠。今日は色々と話し合わないといけないから。」
ギルドの扉を開けた悠とウルクは、喧騒の中に一歩足を踏み入れた。冒険者たちが依頼票を巡り議論を交わし、報酬を手にして酒場へ向かう様子が広がる。その中で、見慣れたギルド受付嬢が二人を見つけ、柔らかな笑顔で手を振った。
「お二人とも、お疲れさまでした。今回の件、本当に大変だったようですね。」
受付嬢の言葉に、悠が軽く頭を下げ、ウルクが少し緊張した様子で言葉を続けた。
「依頼の報告をしたいのですが、辺境伯から何か伝達が来ていると聞いています。」
受付嬢は頷き、二人をギルドの奥にある部屋へ案内した。そこにはギルド支部長が既に待ち構えていた。壮年の男性で、落ち着いた雰囲気と厳格な目つきが印象的だった。
「ようこそ。君たちの報告は既に辺境伯から聞いている。そして、改めて感謝の意を伝えたい。」
支部長の声は低く響いた。その後、彼はデスクの上に置かれた書状を二人に示した。
「これは辺境伯から届いた正式な推薦状だ。彼は今回の一件を受け、君たち二人をランク5に推薦している。君たちの実績と、今回のキマイラ討伐での奮闘は、それに値するものだと判断した。」
ウルクは一瞬驚いたように目を見開き、悠も少しだけ口元を引き締めた。
「ランク5に……ですか?」
ウルクが信じられないように呟いた。
「その通りだ。君たちがこれまで成し遂げてきた実績、そして今回の遺跡調査とキマイラ討伐を考慮すれば妥当な判断だろう。もちろん、私もこの推薦に賛成だ。」
支部長は微笑みながら書類にサインをすると、それを受付嬢に手渡した。
「これで正式に君たちはランク5の冒険者だ。おめでとう。」
ウルクは息を飲み、悠は静かに頷いた。
「ありがとうございます。これからも精進します。」悠が言葉を整えて答えると、支部長は満足そうに頷いた。
広間に戻ると、受付嬢が新しいランクを示すバッジを二人に手渡した。バッジには銀色の枠が施され、ランク5を示す印が刻まれている。
「これが新しいバッジです。ランクアップ、おめでとうございます。」
周囲にいた冒険者たちがこの光景を目にし、ざわめきが広がった。
「ランク5か、あの二人、やるじゃないか。」
「ゴブリンの巣を殲滅したって話だが、今回はキマイラだろ?そりゃ納得だ。」
そんな声が聞こえる中、ウルクは少し恥ずかしそうに笑みを浮かべた。
「なんだか目立ってしまったわね。」
「実力に見合った評価だ。胸を張ろう。」悠は穏やかに言った。
二人は改めて自分たちのバッジを見つめた。新たな道への第一歩が、これでまた一つ形になったと感じていた。