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3-3

 二人はお互いの体を確認し、問題がないことを確かめ合った後、状況の整理を始めた。


「ここ、どこなの?」


ウルクが辺りを見回しながら呟く。


「分からない。ただ、さっきの最奥の部屋じゃないのは確かだ。」


悠は壁の模様を指差しながら答える。


「見ろ、これ。最奥にはこんな模様はなかった。」


壁には幾何学模様のような刻印が刻まれており、青白い光を微かに放っている。その光が周囲を照らし出し、神秘的な雰囲気を醸し出していた。


「もしかして……遺跡の未踏エリアに飛ばされたんじゃない?」


ウルクが慎重に言葉を選びながら言った。


「あり得るな。でも……」


悠は目を細め、壁に触れながら言葉を続けた。


「最奥に戻る必要がある。あの秘宝を放置すれば、また同じことが繰り返されるかもしれない。」


 二人は先ほどの戦闘と暗闇の体験を振り返った。あの秘宝が引き起こした大量の魔物や、心の弱みを突く暗闇は、ただの戦闘以上に二人を追い詰めた。特にウルクは、自分のトラウマと向き合った経験を思い出し、拳をぎゅっと握りしめる。


「……また同じことが起きたら?」


ウルクの声には、わずかな震えが含まれていた。


「その時は、俺たちで終わらせる。」


悠はきっぱりと答えた。


「今度はあの暗闇に負けない。それに……光の力で浄化できるかもしれない。」


「光の力?」


ウルクが眉を上げる。


悠は頷きながら説明を始めた。


「遺跡に漂うこの霧や魔物の気配は、秘宝が放つ負の魔力が原因だ。それなら、光魔法を使えば少しは打ち消せるはずだ。」


「それで浄化できるなら……戦いが少しは楽になるかもしれないわね。」


ウルクも納得したように頷いた。


 二人は立ち上がり、未踏エリアの探索に備えて準備を整えた。ウルクは自身の魔力を確認し、回復呪文で微細な疲労を取り除く。一方、悠は格闘術と魔術を組み合わせる準備を進め、光魔法の詠唱を復習した。


「俺が前を守る。お前は後方から支援を頼む。」


悠はウルクに指示を出す。


「分かったわ。でも、無茶しないでね。」


ウルクは微笑みながら返す。


二人は息を合わせて新たなエリアの奥へと進み始めた。周囲には奇妙な音が響き、壁に刻まれた模様が不気味に輝いている。


「この模様……ただの装飾じゃない。」


ウルクが壁を指差して言った。


「何かの魔術陣みたい。」


「気をつけろ。罠が仕掛けられているかもしれない。」


悠は足元に目を配りながら進む。


 やがて通路が広がり、さらに大きな部屋へと繋がっていく。部屋の中央には、小さな石碑が立っていた。その石碑には古代文字が刻まれており、青白い光を放っている。


ウルクが慎重に近づき、古代文字を解読し始めた。


「これは……『試練の間』と書かれているわ。」


「試練の間か……また何か出てきそうだな。」


悠が周囲を見渡し、警戒を強める。


突然、石碑から光が迸り、部屋全体が震え始めた。天井から降り注ぐ光の中から、複数の魔物が姿を現す。


「来たか!」


悠は即座に構えを取った。


「支援は任せて!」


ウルクも呪文を詠唱し始める。


二人は協力して魔物の群れに立ち向かう。悠の拳から放たれる光魔法の衝撃波が魔物を吹き飛ばし、ウルクの炎の矢が次々と敵を焼き尽くしていく。


 試練の間を突破した二人は、疲労を感じながらも先へ進んだ。通路の先には、かつて最奥だと思われた部屋への道が続いている。


「さっき来たときにはここに繋がる通路は確認したはずだったが。」

 

「そうね、もしかしたら試練の間が起動したときにだけ繋がるような通路なのかもしれないわね。」


ウルクが相づちを打つ。


「もうすぐだ。」


悠が短く呟く。


「ええ、もうすぐね。」


ウルクも力強く頷いた。


二人は決意を新たに、再び最奥の秘宝へと向かって歩き出した。

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