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悠とウルクは、解放した捕虜の二人を近くの村まで送り届けるため、森を抜けて街道沿いを歩いていた。捕虜たちはまだ怯えた様子を見せながらも、何度も二人に感謝の言葉を繰り返していた。
「本当にありがとうございました……助けてもらえなければ、もう二度と外には出られないと思っていました。」
捕虜の一人が深々と頭を下げた。
「気にするな。無事で何よりだ。」
悠は柔らかな声で答えた。
「次からは森に入るときはもっと気をつけることね。」
ウルクも優しい表情で言葉を添える。
村に到着すると、村人たちが捕虜の無事を喜び、二人に礼を述べた。その温かい光景に、悠は胸の中で静かな満足感を感じていた。
捕虜になっていた人たちを村に送り届けた後、悠とウルクは再び森へ戻り、ゴブリンの巣を完全に破壊することを決意した。残存するゴブリンがいないことを確認した後、悠が拳に魔力を込め、ウルクが火炎の魔術を発動させる。
「行くぞ、ウルク。」
悠が拳を振り上げる。
「ええ、これで終わりにするわ。」
ウルクが詠唱を終え、洞窟の内部に炎が巻き起こる。
洞窟から黒い煙が立ち上り、巣は完全に焼き払われた。
ゴブリンの魔石を収集しながら、悠は静かに言った。
「これで終わりだな。」
「ええ。やっと街に帰れるわ。」
ウルクは疲れた顔を見せながらも、達成感に満ちた微笑みを浮かべた。
ラスティアの街に戻った二人は、すぐに冒険者ギルドへ向かった。ギルドはいつものように賑わいを見せており、受付カウンターには依頼を終えた冒険者たちが列を作っていた。
「次の方、どうぞ。」
受付嬢の明るい声が響く。悠とウルクは前に進み、今回の依頼について報告を始めた。
「依頼票ではゴブリンが5匹程度と書かれていましたが、実際には20匹以上が巣を作っていました。それに加え、捕虜も確認しました。」
悠が淡々と事実を述べる。
受付嬢は驚いた様子で眉を上げた。
「そんなに多くのゴブリンが……!捕虜もいたなんて、依頼内容以上の対応ですね。」
「巣は完全に焼き払い、捕虜は無事に近くの村へ送り届けました。」
ウルクが続けて説明した。
悠は収集した魔石を袋から取り出し、受付嬢の前に置いた。
「これが討伐の証です。」
受付嬢は魔石を数え、さらに詳細を確認した後、笑顔を浮かべた。
「これだけの成果を上げたのなら、ランクを上げるのが妥当ですね。お二人とも、ランク1から一気にランク3へ昇格となります。」
「ランク3……!」
ウルクが目を見開く。
「思ったより早かったな。」
悠も驚きを隠せない様子だったが、冷静な表情を保ちながら答えた。
報告を終えた二人は、ギルド内の食堂で軽食を取りながら戦いを振り返っていた。賑やかな店内の一角で、二人は向かい合って座っている。
「まさかランク3になるとは思わなかったわ。」
ウルクが微笑みながら言った。
「俺もだ。だけど、それだけの仕事をしたんだと思えば当然だろう。」
悠は淡々と答えたが、内心では達成感が広がっていた。
ウルクは少し真剣な表情になった。
「正直、悠がいなければどうなっていたかわからないわ。」
「ウルクだって頼りになったじゃないか。俺一人じゃ人質を無事に助けられるか分からなかった。」
悠は素直に答えた。
二人はしばらく黙って食事を続けていたが、やがてウルクが口を開いた。
「ねえ、これからも一緒にパーティを組まない?」
悠は一瞬驚いたが、すぐに頷いた。
「いいな。今回でウルクとならうまくやれるってわかったし、是非お願いしたいところだ。」
ウルクは笑顔を浮かべた。
「じゃあ決まりね。次の依頼も一緒に行きましょう。」
食事を終えた二人は、ギルドの外に出て夜空を見上げた。星が瞬き、街の喧騒が少し遠くに感じられる。
「これから、どんな依頼が来るんだろうな。」
悠が静かに呟く。
「わからない。でも、私たちなら何とかなるわ。」
ウルクが自信を込めて答えた。
「そうだな。」
悠は微笑み、拳を握りしめた。
「俺たちの第二の人生、これからが本番だ。」
二人は夜の街を歩きながら、これからの冒険に思いを馳せた。