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翌朝、悠は窓から差し込む陽光で目を覚ました。昨夜の疲れは完全に抜け、身体も軽く感じられる。深く伸びをしながら、彼は心の中で呟いた。
「よし、今日からだ。」
身支度を整えた悠は、宿の食堂で簡単な朝食をとった。食堂には他の冒険者や商人らしき人々が集まっており、あちらこちらで活気ある会話が飛び交っている。その雰囲気に少し圧倒されながらも、悠はパンとスープを平らげ、再び冒険者ギルドへ向かった。
ギルドに到着すると、中は昨日以上に混み合っていた。冒険者たちが依頼掲示板の前に集まり、それぞれに適した依頼を探している様子だ。武器を手にした戦士や、軽装の斥候、そして豪奢な杖を持った魔術師など、様々な職業の冒険者が一堂に会していた。
悠は一度深呼吸をして、掲示板の前へと進む。自分のランクに合った依頼を探すことが今日の第一歩だ。ランク1の冒険者向けの依頼は簡単なものが多く、薬草の採取や小型の魔物の討伐といった内容が並んでいる。
「これなら、シアの訓練でやってきたことが活かせそうだ。」
悠は掲示板をじっくりと眺めながら、慎重に依頼を選び始めた。
掲示板に貼られた依頼を一通り見ていると、不意に背後から声をかけられた。
「ねえ、あなたも新米冒険者よね?」
振り返ると、白いローブをまとった女性が立っていた。長い金髪に知的な雰囲気を漂わせたその女性は、腰には小ぶりな杖を携えている。魔術師だろうと直感した悠は、少し驚きながらも返答した。
「そうだけど……何か用?」
女性は微笑みながら言葉を続けた。
「私もランク1の冒険者なの。一緒に依頼を受けない?討伐系の依頼を探しているのだけど、単独行動は少し不安で……。」
「一緒に?」
悠は少し迷った。依頼を一人で受けることに特に不安はなかったし、シアの訓練で戦闘には自信があった。しかし、彼女の提案を断る理由もない。
「確かに、一人より二人の方が安全か。」
内心でそう結論づけた悠は、頷きながら答えた。
「わかった。俺も同じランクだし、ちょうど討伐系の依頼を探していたところだ。」
女性は嬉しそうに笑い、軽く頭を下げた。
「ありがとう!あ、自己紹介がまだだったわね。私はウルク。このギルドに登録したばかりの新米魔術師よ。」
「俺は悠。よろしく、ウルク。」
互いに簡単な挨拶を交わし、二人は再び掲示板に目を向けた。選んだのは「北の街道、その近郊の森に現れたゴブリンの群れの討伐依頼」だった。ランク1の冒険者向けとしてはやや難易度が高いが、二人で挑むにはちょうどいい内容だった。
受付で依頼を申し込んだ後、二人はギルドの一角にある談話スペースで作戦を立てることにした。ウルクは鞄から地図を広げ、ゴブリンが出没しているとされる森の位置を指差した。
「ここが目標地点ね。そこまで街道を進んで森に入る。現場に着いたら私は後方から魔術で援護するから、悠が前衛でゴブリンを引きつけてくれると助かるわ。」
「前衛は任せてくれ。魔術の援護があるなら心強い。」
悠はウルクの説明を聞きながら、頭の中で戦闘のイメージを組み立てていく。これまでの訓練で身につけた格闘術と魔術の融合をどう活かすかが鍵になるだろう。
「それから……気をつけてほしいのは、ゴブリンは集団で動くことが多いってこと。油断すると囲まれてしまうかもしれないわ。」
ウルクの言葉には冷静な分析が含まれており、悠は彼女の頼もしさを少し感じた。
「了解。準備が整ったら出発しよう。」