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アルター・ペンドラム。


公爵家の跡取りとして生まれ、何不自由なく生活をしてきた、いわゆる七光りになってもおかしくない境遇にも関わらず、他者の声に惑わされることなく自身を律し続け、圧倒的な力を手に入れた天才。


彼は勇者の才能を真っ先に認め、その才能を育てようと壁となることを選んだ。


主人公たちとの戦闘には全て勝利し、その役割を全うするが、最終決戦、勇者たちを魔王のもとへと行かせるために、万の大軍へと1人立ち向かい、行方知れずとなる。



そして、今、この入学後、最初の決闘で圧倒的な勝利を収め、勇者へと大きな挫折を与えるのだ。


「はあはあはあ…。」


「……。」


息絶え絶えの勇者に向かい合うアルター。


勇者はもうすでにボロボロながら、アルターは服すら汚れることない。ゲームの時は勇者の一撃を受け、呻くというシーンがあるのだが、それすらなかった。つまりはゲームの時より、アルターは勇者を圧倒的していた。


強い。やはりアルター・ペンドラムは作中最強クラスである。


これはこれでカッコいい…が…果たしてこれでいいのだろうか…その一撃を与えられたことでアルターにも手が届くと幼馴染に慰められて、努力を始めるというのが物語の流れのはずなのだが…。


「はあはあはあ…。」


…しかし、勇者はもう立っているのもやっとという様子。


これ以上の頑張りは期待できそうにない。


このまま勇者に期待して、悪戯に嬲るのは、人として許されることではあるまい。


アルターはこの世界の主人公たる勇者ならば、いずれ挫折を乗り越えられるだろうと信じて、言葉を口にする。


「…それで終わりか?ならばこちらから行かせて貰おう。」


「っ!?」


勇者はアルターの言葉に身じろぎした。


そのほんの一瞬のうち、アルターは勇者の懐へと忍び込み、トドメの一撃を放って終わる。


…そう…アルターの動きを目で追えていた者ならば思ったことだろう。


転生当初からの念願の勇者との対決を目の前にして、前日は眠れぬ夜を過ごした。


…要するに、寝不足プラスこのトドメの一撃は今までにないほど力んでいた。故にアルターは脚元がお留守。観客席から放り込まれ突然脚元に現れた、なにか黄色い果物の皮のような物体を踏んだのを確認し…。


ツルッ。


「あっ…。」


そして、丁度、勇者の構えていた模造剣がお腹に…鳩尾にめり込んだ。


そうなれば当然…。


「グエッ!!……パタン。」


…余程当たりどころが悪かったのだろう。


こうして、影の師匠たるアルター・ペンドラムはノックアウトされた。


消えゆく意識の中、審判の勝利を告げる声の他に、こんな天の声が聞こえた気がする。


【アルター・ペンドラムはドジっ子属性を獲得しました。】



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