さわらぬ女神に祟りなし。
誤字脱字等あるかと思いますがご容赦ください。
痛いのは一瞬だった。
体が冷たくなって行くのが自分でもわかる。
散々喧嘩も悪いこともやってきたけどまさか猫を助けようとして車とぶつかっちまうなんてな・・。
「やっとゆっくり休める・・」
天国か地獄があるなら自分は間違いなく地獄行きだろう。
そう思いながら目を閉じた。
はずだったのに・・・眼の前に広がっていたのは真っ白い空間だった。
「なんだここ・・」
呆然と座り込んでいると目の前に豪華な椅子に座った青年と色白の美女が現れた。
どちらも金髪碧眼で同じ人間とは思えない、不思議な威圧感、神々しいとでも言うのだろうか。
『いらっしゃーーい!!』
満面の笑みで元気に青年が話しかけてくる。唐突な第一声とキレイな顔立ちからは想像もできないようなテンションの高さに一瞬呆気にとられてしまったがすぐに我に返る。女性は目を閉じたままじっと後ろで立っていた。
「こ、、ここはどこだ。私は死んだはずだ。」
落ち着いて、ペースを持っていかれたらだめだ。。そう言って、睨みを効かせた。一旦深呼吸をする。
そう、私は車と衝突して死んだはずなのだ。
死後の世界にしても青年、美女、自分しかいない空間。考えてもしかたがない、目の前の存在に確認するしかない状況を必死に受け入れようとしていた。
『そう!君は一度死んだ。君の世界で魂が輪廻転生する前に僕の世界に呼び寄せたのさ!俗に言う、最近流行りの異世界転生ってやつだね☆』
おそらくイケメン側の美青年がウインクしながらキラキラした顔で話しかけてくる。
悪びれるわけでもなく、とても楽しそうだ。
そのキラキラした笑顔が理解出来な状況とあいまってイライラが抑えられない。
「転生だと?ふざけるなよ、人間がみんな生きたい奴らばっかりだと思うな!勝手なことしてんじゃねぇ!」
やっと、ろくでもない自分の人生が終わったと思った。今までの記憶も何もかも残ったまま生かされるなんてたまったもんじゃない。人間がみんな生きたいと思っているわけがない。
『さすが!普通は異世界転生ってなるとチートスキルが手に入る〜って喜んで異世界に行っちゃう人間が多いのにサクラっちはちがうね〜ぇ』
怒りをぶつける私には我関せずといったところだろうか。美青年は一切テンションを変えることなく話を続ける。
「サクラっちだぁ?。」
馴れ馴れしい呼び方と小馬鹿にしたようなテンションにイライラは募っっていくばかりだ。
『春日桜32歳、中学生のときからレディースに加入、高校を卒業する頃には「狂い咲きの桜」と恐れられるほど喧嘩にあけくれていたが高校卒業後先輩に誘われてキャバクラに勤める。最近はお客さんに対して恐喝まがいのこともしていたみたいだね。』
・・・。そう、私は元ヤンで喧嘩にばかり明け暮れていた。お世辞にもまともな人生を歩んできたわけではない。そんなロクでもない人間とわかっていてココに呼び寄せた理由はわかりたくもないが目の前の存在はカミサマ的な存在なんだろう。
「ちっ。全部お見通しみたいじゃないか。そういうあんたは何もんだよ?」
『僕はディアス。サクラっちの魂を呼び寄せた張本人でこれからサクラっちが向かう世界の創造神さ☆後ろにいるのは補佐女神のエアリーズだよっ』
そう言うと後ろの女性がペコッと頭を下げる。相変わらず目は閉じたまま、言葉も発しない。
正直こんなハイテンションな野郎の補佐なんて私ならまっぴらゴメンだ。
「で、その創造神様が異世界転生を行う理由はなんだ?世界を救ってほしいとか魔王を倒せとか言うんならあたしみたいな元ヤンじゃなくてもっと真面目に生きてたやつのほうが向いてるだろうよ」
理由を聞いたところでどうにもできないんだろう。それでもカミサマとやらの都合に巻き込まれるのはまっぴらゴメンだ。すこしでも納得できる理由が出てくれば御の字。そう思って理由を問う。
『ハハッ。僕が管理してるんだ、流石に世界を救ってだなんて他所様に頼むほどピンチじゃないよ〜。サクラっちには、ただ僕の世界を自由に旅してほしいのさっ☆』
ディアスは相変わらず満面の笑みだ。チャラそうでテンションも高い。でもふざけているとは思えない・・。
不思議な感覚だ、これが創造神ってやつの深さなんだろうか。
『ふふっ、戸惑っているみたいだね。せっかくだから説明してあげる!この世にはいくつもの平行世界が存在している。君がもといた世界はコードナンバー794。僕の管理する世界はナンバー1192さ。』
『それぞれの世界で輪廻転生は常日頃行われているんだけど、いろんな理由で魂の器が足りないときは世界をまたいで転生することもある。前世の記憶がないだけで異世界転生は日常的に行われているんだ』
平行世界、輪廻転生、天国と地獄、死後の世界なんて深く考えたことはなかったが一度は聞いあことのある内容だ。ディアスは話を続ける。
『よく世界を救うために異世界から勇者を召喚したって話が話題になってるけど、平行世界をまたいで転移させるなんて管理している創造神が手を加えなければできやしない。僕たちはとても長い年月を生きているからね。暇つぶしに転移させて高みの見物を楽しんでいる創造神もたっくさんいるんだよ。』
カミサマからしたら、人間なんて虫みたいな存在なんだろう。虫同士戦わせて上から覗き込んで楽しむ。理解したくはないがどの世界もカミサマと呼ばれる存在も聖人君子ばっかりじゃないってことか。
「で、あんたも私で暇つぶししようってのか?」
暇つぶしだったとしてもこの状況で転生は免れないだろう。
避けられないとしても手のひらの上で踊らされてやる気はサラサラないのだ。
『まさか!!さっきも言ったけど、転生したところで勇者になって世界を救う必要はない。君は地球ではあまり恵まれた環境とは言えない生い立ちだ。だからこそ君には僕からの恩恵を受け取ってただ生きることを楽しんでほしい。生を謳歌してほしいのだよッ☆』
まるで背景に薔薇とキラキラが舞ってそうなほどの満面の笑み。
全くもって胡散臭さしか感じない。自分の世界を楽しんでほしいためだけに転生させるなんて考えにくい。
なにか思惑があるんじゃないと疑念の眼差しでディアスを見続けているが、満面の笑みが崩れることはない。崩れるどころか話が進むたびディアスのテンションは上がっていく一方だ。
後ろのエアリーズと言った女神も現れた当初からビクともしない。微動だにしないところを見るとキラキラ薔薇を撒き散らしたテンションが正常なのだろう。一体何年、何十年、付き添っているのだろうか。。
怒るのも疑念を抱くのもアホくさくなってきた私はそんなしょうもないことを考えていた。
『君が転生する世界は、今まで過ごしていた地球とは違ってスキルや魔法が存在する。そうだなあ。。テ○イル○シリーズみたいな感じの世界って感じかな☆』
カミサマ、、お前暇つぶしにゲームやってんのかぃ。。
『人間以外にも魔族やエルフ、亜人と呼ばれる者たちも存在しているけど今のところは戦争が始まったりするような危ないところではないよっ☆』
・・・今のところとは。。所々ツッコミどころも多いがひとまず一通り説明を聞いておこう。一人変わらないテンションで語り続けるカミサマを眺めながらあぐらをかいて座り込んだ。
『基本的には、どの種族も肉体に関するスキルか魔法に関するスキルを持って生まれてくる。人間に限ってはスキルを持たずに生まれてくることもめずらしくない。0か1、稀にスキルを2つ所持して生まれてくる場合もあるけどめっっっっつたにないんだ。
0か1か。。スキルや魔法なんて生まれ持ったもんは0で生まれてきた限りどうしようもないんだろう。場所によっちゃヘビィなところもありそうだな。
『で!ココからが本題だ。サクラっちに授けるスキルはなーーんとみっつ!!大盤振舞さぁ☆☆』
バチコーーーーーン!!!
『ブベぇッぇぇ!!』
勢いよく両手を上げてウインクしたとお思いきや派手な音を立てて吹っ飛んでいた。
「め、女神がブッた。。」
そう、今まで静かに見守っていた?補佐女神がディアスに思いっきりビンタを叩き込んだのだ。
「こんのアホナルシストが!!50年ぶりに正規ルート以外で転生をしたかと思ったらスキル3つなんて何ふざけたこと言ってんだぁオイ!前回は緊急事態だったからまだしも、今の状態で人間一人にスキル3つ付与したらその後のの承認会議でどれだけ文句言われるかわかって言ってんだろうなぁ?。属性神たちを納得させるのがどれだけめんどくせえかわかって言ってんだろうなぁ。あぁん?」
勢いよく啖呵を切ったかと思いきや恐ろしい眼光で睨みをきかせている。美人から出てくる怒号ほどおっかない、、いや恐ろしいものはない。何も言わずじっと見守っていたわけではなく呆れて何も言う気がおきなかっただけなのだろうか。
『・・ま・・まぁ・・まあ落ち着・・いて・・エアリン・・。』
勢いよくフッ飛んでいったディアスがヨロヨロと這いつくばって戻ってくる。
今まで見たどのパンチより恐ろしい女神ビンタにすっかり開いた口が塞がらなかった。
エアリーズは氷点下ももろともしない程の冷ややかな眼差しで椅子まで戻ってきたディアスを見つめていた。
『属性神のみんなも最近は平和すぎて・・暇を持て余しているはずさ・・。一旦はお約束で批判するかもしれないけど、きっとすぐ納得するよ☆』
ヨレヨレになりながらもビンタ前と同じテンションで語り続けようとするカミサマを見て呆れを通り越して尊敬の念すら芽生えそうだ。
「3つの・・内容はするどうつもりなんです?」
エアリーズの口調は落ち着いているが目線はあいもかわらず冷ややかだ。
『ふふっ。よくぞ聞いてくれました☆』
『まず、一つ目は肉体強化EX(エクストラ)!どんな魔法も弾いちゃう、どんな剣でも傷ひとつつかない!むしろどんな剣もへし折っちゃう!まさに無敵の肉体だから喧嘩し放題だよっ☆』
ピキッ。。
エアリーズの血管が浮き出てきているのがうっすら分かる。剣も折っちゃうとかバケモンじゃねえかよ。それに三十路過ぎて喧嘩ばっかやってられるかよ。体力は年齢に勝てないのだから。
『お次は、全属性加護!魔法の属性は、火・水・風・土・光・闇の6種類。ひとり1属性は基本だけど6属性すべての魔法が使えるように全属性神の加護をつけちゃう☆』
ピキキッ。。。
浮きでた血管が濃くなっていく。。多分それぞれに相性とかがあるんだろうけど全属性持っちゃったら弱点ナシじゃん。カイブツじゃねぇかよ。逆にまともに暮らしていけるのか不安になるチートっぷりだ。
『最後は、無限収納アイテムBOXだね。君にはいろんな景色を見ていろんな体験をしてほしいから旅には欠かせないアイテムBOXを授けるよ☆容量は無限大、保存機能もばっちりだから重い荷物を担がなくても自由に色んなところへ行けるはずさ☆』
ピキン。
3つ目で血管がパンクしちゃうのではとハラハラしていたが、アイテムBOXはそこまで規格外のスキルではないんだろう。エアリーズの雰囲気が少しだけもとに戻ったように感じる。
まあでも、後でこってりしぼられるんだろう。
さわらぬ女神に祟りなし。そう胸に刻みつけるのだった。




