山道の人形
山道の脇に小さな花束を見つけたので、路肩にバイクを停めて手だけ合わせていくことにした。
死亡事故現場なのだろう。こんな山奥でも供えてくれる人がいるなんて、この人は愛されていたんだなぁ。
近づいてみると、おかしなものが見えた。
そこにあったのは、さっき見つけた花束、子どもの好きそうなジュースが数本、そして、首のない人形⋯⋯
ジュースが多いことからして、恐らくここで亡くなったのは幼い子どもなのだろう。
しかしなぜこんな人形が⋯⋯
「おーい!」
!?
遠くに50代くらいの男性の姿が見えた。
なんなんだ、いきなり話しかけてきて、ビックリするだろ。
「ごめんごめん、ビックリさせちゃったか」
「いえ、ビックリしてませんよ、大丈夫です」
俺は強がりだからな。
「兄ちゃん、こんなとこでどうしたんだ?」
「実はこんな人形を見つけまして⋯⋯」
「ああ、それのことか」
知っているのだろうか。
「これは恐らく犯人に向けたものだろう。犯人は現場に戻るって言うしな、その犯人もこれを見れば自首したくなるだろう」
ということは、まだ捕まっていないのか。
「気味が悪いからと山の管理者に捨てられたこともあったんだがな、またしばらくして来てみたら同じような首なしの人形が供えられてたんだ」
なんだか気味が悪いな。
「どんな事故だったんですか?」
「ああ、なんでも小さな男の子の頭がトラックの下敷きになっちまったみたいで、パニックになってたんだろうなぁ、降りてきた運転手がその子の足を掴んで、力いっぱい引っ張ったんだ」
引っ張⋯⋯
「何度も何度も、抜けるまで必死に引っ張ったんだ」
抜けるもんなのか?
「するとな、何回目かでやっと抜けたんだよ。ぶちぶちぶちって音を立ててなぁ。あん時俺の中で音がしたんだ。プツンって何かが切れたみてぇな音がよぉ」
俺⋯⋯?
「目撃者がいなかったもんだからよぉ、一目散に逃げてなぁ。念の為にナンバープレートひっぺがして製造番号も消してトラックを乗り捨てたよ」
犯人お前かよ!Σ\(゜Д゜ )