起章 2
あれからどれくらい経ったのだろう・・・
などと考えられるようになった事に気が付いた。
「あれ・・・僕、死んだはずじゃかなったかな?」
そう思えるくらい意識がはっきりとしてきた。
ただ、何も見えない。
それはそうだ。目を開けていないのだから。
◇◇◇
目を開けると、一郎と一郎のカノジョが僕の傍で泣きわめいていた。
周りには人だかりが出来て、遠くに救急車のサイレンの音も聞こえる。
でも誰も僕を認識していないようだ。
おかしい
僕が僕を見ている。
頭がおかしくなりそうだ。
あの時、間違いなく斬られたはずなのに血が出ていない。
当然身体も2つに分かれていない。
今の自分を見てみても、斬られた跡も何もない。
なのに、あそこに倒れている僕は死んでいるように見える。
間違えるはずはない。
だって、僕は人間の死をその目で見たことがあるから。
お母さんの死を。
◇◇◇
・・・改めて、僕は本当に死んだんだなと理解した。
そうだ、僕を斬ったヤツはどこへ行ったんだ?
あたりを見回しても見当たらない。
それもそうか、あんな怪しいやつ何時までもこの場にいないか。
そう思うと少し冷静になってきた。
我ながら面白おかしく思う。
死んでいるのにこうも落ち着けるものなのか、と。
救急車が到着し、一郎が必死に状況を説明している。
そうしている中、僕は担架に乗せられて救急車の中に運ばれた。
程無くパトカーが到着し一郎の説明は救急隊員から警察官へと移った。
やがて、一郎とカノジョはパトカーに乗せられて走り出していった。
僕が乗せられた救急車も発進すると人だかりも自然と少なくなり、やがて消えていった。
これからどうしよう・・・
成仏もできず、かと言ってずっとこの場にいたにもかかわらず誰からも認識されなかった僕は何ができるのだろう。
そう項垂れていると、再び何かに斬られたような気がした!
間違いない!!
痛みもはっきりと感じているし、何より身体が消え始めている!
苦しくて痛みで声も出せず、うずくまると再びあの声が聞こえた。
「やっと見つけた」
僕は今日2度目の死を迎えた。
今回は3ページ同時にアップしましたが
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