裁判
かなり長くなりましたが、一気に読んでいただきたく、まとめて投稿します!
2022/2/14 敬称や呼び方などを修正しました。
外が白み始めた頃、さすがに眠くなってきた。
だが、いつから裁判が始まるのか分からないため、寝るのも怖い。
結局、洗面台で髪を洗ったり、体を拭いたりして過ごすことにした。
濡れた髪を火の魔石と風の魔石を使ってなんとか乾かし、水色のワンピースを着る。
そして、鞄の中の荷物を取り出し、代わりに魔道具を詰めた。
これで、いつ呼ばれても大丈夫だ。
……そう思うと、緊張のせいで手足が震え始めた。
結局、ムチ大臣が呼びにきたのはお昼近くになった頃だった。
*
「エリサ・ストラード。開廷の時間だ」
いよいよ、決戦のときだ。用意しておいた鞄を抱え、長い長い階段を降りていった。
ヴィデル様が居ますように!
ヴィデル様が居ますように!
ヴィデル様が居ますように!
おまじないのように心で唱えながら、長い通路を進み、一階への階段を降り、たどり着いたのは王城内のホールだった。
心臓がバクバクとものすごい音を立てている。
誰がいるのか見るのは怖い。でも、早く見たい。
相反する気持ちを抱えながらホールへと入り、とにかく金色を探した。
……いた! ヴィデル様がいる! しかもルヴァ様までいる!
まだ裁判は始まってもいないが、とにかく安心した。あとは、判決を下す方の心象を損なわないよう、お辞儀や挨拶をしっかりやろう。
ホールの中には、右と左に長テーブルが一つずつ縦に置かれ、その奥に同じ長テーブルが横に置かれていた。要はコの字である。
ヴィデル様とルヴァ様が座っているのは左側。
右側には、研究所の所長、おそらく研究所の研究員であろう男性、義妹のテレシア、義母、父親、元婚約者のシアン、シアンの父親が座っている。
そして、奥のテーブルには、ヘルゲン大臣の他に、見るからに偉そうな人が二人座っている。さらに、紙とペンを持った書記官らしき人も二人いる。
そのため、奥のテーブルの一人一人に向かって丁寧にお辞儀をしてから、ヴィデル様の隣に座った。
すると、奥のテーブルの真ん中の人が立ち上がった。
「これより、セレスチア城内裁判を始める。私、司法省大臣フィルマン・オスカが裁判長を務めさせていただく。また、本日は監察者としてリュミル宰相をお呼びした。書記は司法省から二名選出している。
原告側、被告側の両名が揃っており、監察者のもと実行され、書記官により記録されることで、本裁判は正式な裁判と見なされる。
そのため、この場での虚偽の発言は、即ち虚偽罪として問われることを、肝に銘じた上で臨んでほしい。
なお、本日は便宜上、三部構成とする。
では第一部、原告エリサ嬢、被告テレシア嬢、クレア・ストラード伯爵夫人、イェスタ・ストラード伯爵、オブデシアン・マックレル卿」
……あれ? 原告って訴える側だよね? 今、原告がエリサ嬢って言ったよね?
混乱しながら向かいのテーブルを見ると、被告として名を呼ばれた四名のうち、ストラード家の三人は怒りを堪えきれないような表情だ。元婚約者のシアンとその父親は、不安そうな顔をしている。
そんな中、最初に立ち上がり、声を上げたのはテレシアだった。
「テ、テレシア・ストラードです。は、発言をお許しください」
「許可する」
テレシアの声は震えていた。
「本日の裁判、原告がエリサ、被告が私他三名とのことですが、私たちがエリサに訴えられる筋合いはありません。私は先日、通っている学園の寮でエリサに呼び出され、腕を刺されました。この通りです。まだ傷が痛みます」
そう言って、テレシアは包帯が巻かれた腕を高く掲げた。
それから、被告側が次々と話し始めた。
「クレア・ストラードです。テレシアがエリサに刺されたと聞いた後、エリサの部屋から血がべっとりついたナイフを見つけました。そのナイフは証拠として提出済みですわ」
「オブデシアン・マックレルです。エリサに刺された直後のテレシアに会いました。腕に包帯をぐるぐる巻きにして、ひどく慌てた様子でした。エリサが妹であるテレシアを刺すなど信じられない、と言ったら、証拠であるナイフも見つかったと聞きました」
「ストラード家当主イェスタだ。何の罪もない自分の妹をナイフで刺したエリサは、謝る素振りも見せず、到底許すことはできない。加えて、エリサは研究所での研究内容や本当の給与の金額を家族に隠していた。父親として、エリサへの厳しい罰を望む」
「続いて原告側の発言を許可する」
するとヴィデル様が立ち上がり、話し始めた。
「代理人のヴィデル・アトラントだ。私からは四点。まず一点目。テレシアは嘘をついている。テレシアの右腕の包帯は傷があると見せかけるためのフェイクで、実際には傷はない。証拠は提出済みだ」
ヴィデル様が話し始めた途端、テレシアの顔が青ざめていった。
父とシアンは、それぞれ文句を言おうと立ちあがろうとしたが、テレシアの顔色を見て、立ち上がるのをやめたようだった。
「証拠は確かに受け取っている。これだ」
オスカ大臣はそう言って、私が作った音声記録用魔道具を取り出し、ボタンを押した。
『あ、この包帯ですの? それならほら、この通り、フェイクですわ! 傷など一つもありません。だから私を』
音声はそこで途切れていた。
ヴィデル様は、一体どうやってテレシアからこの台詞を引き出したのだろう。「だから私を」の続きも気になる。今度聞いてみよう。
「この音声の真偽はさておき、一度テレシア嬢の右腕の包帯を取り、傷の有無を確認する必要がある。テレシア嬢、こちらへ」
テレシアは完全に血の気を失っていた。顔面蒼白で、フラフラとオスカ大臣のもとへ歩み寄る。
オスカ大臣がそっと包帯を巻き取ると、そこには傷一つなかった。
それを見て、シアンとシアンの父親、それに私の父親の三人は、目を丸くして驚いている。
「……テレシア嬢、残念だ」
オスカ大臣がそう言うと、ヴィデル様が話を続けた。
「テレシアは、エリサに刺されたという荒唐無稽な嘘を、エリサの家族、職場、婚約者へ言って回った。それにより、エリサの人生から全てを奪い、エリサは奴隷として売られる状況にまで陥った。さらに今日、裁判の場で嘘を重ねたことから、反省が見られない。よって死刑を求める。
続いてストラード伯爵夫人だが、テレシアの腕に傷がない以上、血のべっとりついたナイフは発生しようがない。偽の証拠と証言により、テレシアと共謀した。またテレシア同様にこの場でも虚偽の証言をしたことから、反省が見られない。よって死刑を求める。
……おまえたち親子の粗末な寸劇のおかげで、エリサという優秀な魔道具師に出会うことができた。礼を言おう。
続いてマックレル家の長男だが、こいつが言っていることは全てテレシアの刷り込みであり、無実だと考える。よって、おまえは生かしてやる。だが、どうしようもない間抜けだ。
……跡取りがこんな間抜けに育ってしまったこと、マックレル家当主には深く同情する」
ヴィデル様はどう見ても同情していない顔で、シアンの父親を一瞥した。
「最後にストラード伯爵だが、テレシアの一件の真相は知らなかったものと考える。だが、エリサの父親として真相を確かめようとする行動は見られなかった。また、先日我がアトラント領まで押しかけ、エリサに陶器の壺を投げつけて傷つけようとした。エリサが生み出す魔道具によって得られる金目当てという自分勝手な動機であり、到底許せるものではない。よって死刑を求める。証拠は提出済みだ。……以上だ」
「アトラント領での件、確かに証拠は受け取っている」
オスカ大臣が持ち上げたのは、あの日割れた壺の破片だった。
「補足させてもらうが、アトラント領アジュリアの民、数十人が現場を目撃している。必要であれば司法省にて証人尋問を進めてもらいたい。以上だ」
そう言って座ったヴィデル様を横目で見ると、なぜか神々しいほどの微笑みを浮かべていた。
「原告側の主張に対し、被告側から異議が無ければ、第一部はこれで終了となる。判決は追って下す。なお、法廷にて虚偽の発言をしたテレシア嬢、ストラード伯爵夫人の両名には、少なくとも虚偽罪が適用されることが確定した」
テレシア、義母、父親の三人は、俯いたまま微動だにしない。シアンとシアンの父親は、二人で何か話していた。
「では続いて、第二部へと移る。原告エリサ嬢。被告セレスティン魔道研究所所長エルスト男爵」
所長がすぐさま立ち上がった。
「発言をお許しください。魔道研究所のクリム・エルストです」
へぇ、所長ってそんな名前だったのか。
「許可する」
「元研究員のエリサ嬢は、王家からの出資金を含む金を、様々な形で浪費しました。遠距離通信用魔道具の開発の見返りとして、我々に高額な給与を要求し、さらに高価な素材や魔石を買い漁り私的利用していた疑いがあります。給与明細は証拠として提出済みです」
「証拠は確かに受け取っている。続いて、原告に発言を許可する」
ヴィデル様が立ち上がった。
「私からは二点。まず一点目。証拠として提出されたという給与明細は、エリサが研究所を去った後に作成されたものだ」
「何を勝手なことを……!」
「エルスト所長、許可のない発言は慎むように」
「……研究所で作成される給与明細には、作成順を示す連番が付与されていた。証拠として提出されている明細と、他の研究員の直近の明細を比較して分かったのは、前者に付与された連番はエリサが研究所を去った後に付与されるはずの連番だということだ。つまり捏造された証拠か、あるいは大胆にもエルスト所長本人の給与明細をエリサのものと偽って提出したか、どちらかだ。この悪質な証拠捏造により、エリサは国家への反逆罪に問われかけた。よって、エルスト所長への死刑を求める。提出した証拠は他の研究員の明細の複製だが、原本が必要なら司法省で集めてほしい。以上だ」
「証拠は確かに受け取った。……これが複製とはな」
オスカ大臣は手元の数枚の紙を眺めてそう言った。複製というのは、記録用魔道具で撮った写真を指しているのだろう。
ヴィデル様は、すごい。こんな短期間で、他の研究員の給与明細を集めて、分析して、証拠が捏造されたことを証明してしまった。
「二点目。エリサの証言によれば、研究所内での遠距離通信用魔道具の開発はスケジュール管理がされておらず、試作機を作っては難癖をつけられ、次の試作機を作らされるということを繰り返されていたという」
「なっ……!」
先ほど注意されたばかりなのに、許可なく声をあげる所長。だが、オスカ大臣に睨まれて黙った。
ヴィデル様が言葉を続ける。
「目的は、遠距離通信用魔道具を完成させず、それらしい理由をこじつけて開発を引き延ばし、各所からの出資金を横領するためだったと考える。もしその通りであるならば、反逆罪に問われるべきはエルスト所長であり、やはり死刑を求める。
……これは私見だが、セレスティン王国のためには、エルスト所長みたいな愚鈍なやつがエリサの上司でよかったと思っている。賢いやつなら、横領などやらずに魔導兵器の一つでも作らせて国内外に売り捌き、今頃そこらじゅうで戦争が起きていたかもしれない。不幸中の幸いだ」
「オスカ大臣! 発言を許可いただきたい!」
「許可する」
「黙って聞いていれば勝手なことを! エリサ嬢が作る魔道具が使い物にならないから、指摘して直させたまでだ。それを、こじつけだ引き延ばしだと、何の証拠もなく言える立場なのか!」
「あ! エリサ・ストラードです。オスカ大臣、発言を許可いただけますか?」
「許可する」
「一昨日、王城についてから、ヘルゲン大臣に用意いただいた材料で、遠距離通信用魔道具を作りました。つまり、二日で出来た、ということなのですが、これって証拠になるでしょうか……?」
持ち込んだ鞄から遠通魔道具を取り出すと、皆、様々な顔をした。
ヘルゲン大臣と宰相は引き攣った顔。
所長と付き添いの人は苦虫を噛み潰したような顔。
そして、ヴィデル様とルヴァ様、それにオスカ大臣は、薄らと笑みを浮かべていた。
「その魔道具が動けば、一年半も続いた魔道具開発が、実際にはごく短期間で開発出来たことの証明になる。動かしてみてくれるか?」
「はい」
まず、基地局パーツの折り畳まれた脚部分を伸ばしてテーブルくらいの高さに固定し、ホールの真ん中に設置した。
次に、オスカ大臣に一つの通信機を。もう一つを自分で持ち、ホールの外に出た。
そして、通信機を基地局に向けて、普通の音量で話した。
「オスカ大臣、聞こえますか?」
すると、しばらくして返事があった。
「ああ、よく聞こえるよ。私の声が聞こえたら、戻っておいで」
席に戻ると、オスカ大臣はこう言った。
「エリサ嬢は、その魔道具を証拠として提出するように。判決を下す前に、エルスト所長に詳しい事情を聞く必要があると判断した。エルスト所長にはこの後聴取を行うため残るように。第二部は以上とする」
そこで言葉を切ったオスカ大臣は、隣に座るヘルゲン大臣に向かってこう言った。
「ヘルゲン大臣、第三部では、君には被告席に座ってもらう。移動したまえ」
「は、はあ? 何を言っているんだ、オスカ大臣。私が何をしたと?」
「移動したまえ」
しぶしぶ被告席に移動し、空いた椅子にどかっと音を立てて座るヘルゲン大臣。
「第三部、原告エリサ嬢、被告ヘルゲン大臣」
「オスカ大臣、発言をお許しください。アトラント辺境伯ルヴァです」
「発言を許可する」
「第一部、第二部で明らかになった通り、これまでエリサにかけられていた容疑に関する証拠は全て捏造されたものであった。本来、証拠とは司法省による監督のもと検証されるべきであるが、ヘルゲン大臣はその手順を怠り、全て独断で有効だと判断していた。また、エリサを王城へ呼び出した際も碌に話を聞かずに不当な扱いをした。証拠は提出済みだ」
「確かに受け取っている。アトラント辺境伯宛の手紙と通達文書だな」
「オスカ大臣! 発言を許可したまえ!」
「ヘルゲン大臣の発言を許可する」
「第一部、第二部ともに、実の家族や元部下に対する証拠の捏造が行われていた。片や伯爵家、片や国を代表する魔道研究所が、だ。彼らがそんなことを行うなど、到底予想出来るものではない。それに、証拠の検証はわざと怠ったわけではなく、手順として認識していなかっただけだ。ただし、エリサの話を碌に聞かずに不当な扱いをした覚えなどないぞ? アトラント辺境伯よ」
「オスカ大臣! このエリサの、発言を、お許しください!」
「許可する」
「まずは、こちらをお聞きください」
『ザ、ザー……おまえのおもちゃを持って来てやったぞ、メス犬。一つでも無駄にしてみろ、ただじゃおかないからな。
音の魔石が足りないようです。メモには書いたはずですが。
黙れ! その生意気な口調をやめろ! おまえは犯罪者だ。しかも国家への反逆罪だぞ? そんなおまえを私が取り立ててやったんだ。私を敬え』
ヘルゲン大臣のメス犬発言が、ホール内に爆音で響き渡った。
ここで再生を止め、次のカードを切る。
「続いてこちらをお聞きください」
『ザザ、ぴちゃん。ザー、ぽちゃん……エリサ・ストラード! ぴちゃん。明日、おまえの裁判が開かれることが決まった。ぽちゃん。司法省のオスカ大臣が判決を下す、正式な裁判だ。ぴちゃん。これでおまえは正式に反逆者となる! ぽちゃん。クソ生意気なおまえを牢屋にぶち込んで、一生こき使えると思うと嬉しいよ! ぴちゃん。いや実にめでたい! ぽちゃん」
昨日録音した方には、洗面台の水漏れの音が入ってしまっていた。それでも、ちゃんとヘルゲン大臣の声は聞き取れたから、問題ないだろう。ちゃんと上書き出来ていてよかった。
ヘルゲン大臣を見ると、怒りでわなわなと震えている。否定したくとも、これを否定することは即ち本当だと肯定することになるため、発言できずにいるのだろう。
「ヘルゲン大臣に発言を許可する」
「……」
「ヘルゲン大臣!」
黙ったままのヘルゲン大臣に、オスカ大臣の語気が強まった。
「こんな……こんな音声の捏造など、エリサにとっては造作無いことだろう? 私の声を録音して、分解して、一文字ずつ音を並べれば、こんなもの、いくらでも捏造できるんじゃないのか!? なあ! エリサ!」
「確かに、エリサ嬢の魔道具開発の能力を持ってすれば、音声の捏造も可能だろう」
オスカ大臣が裁判長としての見解を述べる。
「だが、二つ目の音声には、定期的に、一定のリズムで、水漏れのような音も入っていた。もしヘルゲン大臣の言うように、録音済みの音声を並べ替えたとして、この水音まで綺麗に並べたというのは無理がある。しかも、エリサが裁判について知らされたのは、つい昨日のことだ。……エリサ、その魔道具は後で証拠として提出するように」
「くっ……だ、だが、犯罪者と勘違いしていた者を、犯罪者扱いして何が悪い! エルスト所長らが証拠を捏造したりしなければ、私だってこんなことは……」
ヘルゲン大臣はそのまま黙り、どすんと座った。
「原告に発言を許可する」
私が立ち上ろうとするより早く、ヴィデル様が立ち上がった。
「ヘルゲン大臣、残念だが決定的な証拠がある。すでに提出済みだ。オスカ大臣、二つ目のボタンを押してほしい」
オスカ大臣がボタンを押す。
『……なあエルスト所長、いい加減、遠距離通信用魔道具の研究を再開しろ。これまでの金は全部エリサに流れたことになっている上、そのエリサはもう捕まえた。バレようがないさ。適当な人間に適当に機械を弄らせるだけで、あちこちから金が入ってくるんだぞ? ……だから、国庫省はこちらで言いくるめるから問題ないと言っているだろう! それに』
音声はここで途切れた。
ヴィデル様が口を開く。
「この音声から、ヘルゲン大臣はエリサが犯人ではないと知っていた。その上で、エリサへ罪をなすりつけ、罵詈雑言を浴びせた。また、大臣という立場を悪用した手紙や通達により、無罪のエリサを拘束し強制労働もさせている。これらがなんの罪に当たるかは司法省の判断に任せるが、一刻も早い死刑を求める。
……証拠として提出した音声に含まれる、エルスト所長へ出資金の横領を教唆する部分については、司法省による厳密な調査を依頼したい。なお、この音声は第二部の証拠としても有効だと思われる。以上だ」
一度の裁判で、ヴィデル様はとうとう五人に対して死刑を求刑した。
また微笑んでいるのだろうかと隣を見ると、ヴィデル様もこちらを見て、そしてこう言った。
「もう顔も見たくないだろうから、死んでもらおう。死刑を求刑しておいたぞ。喜べ」
「いや、まだ死ぬと決まったわけでは」
「法的に殺せないなら、他の方法で殺すまでだ」
「ひっ」
「冗談だ」
ヴィデル様は、そう言ってまた微笑んだ。
……ヴィデル様、なんだか楽しそう。
「第三部は以上とする。エルスト所長およびヘルゲン大臣へはこの後詳しい聴取を行うため、この場に残るように。判決は追って下す」
オスカ大臣は一呼吸おいて、こう締めくくった。
「本日はこれにて閉廷とする」
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